税金数十万円に加え保育料、児童手当でも大損することになる…会社員が確定申告で取り戻せるお金6つのケース

2024年2月26日(月)11時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

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毎年恒例の確定申告の季節。実は、あなたにもお金が戻ってくる可能性がある。以下に紹介する6つのケースに該当するならば、今すぐ確定申告をしたほうがいい。会社員だから自分には関係ない、と思っていると、気づかぬ間に大損しているかもしれない。6人の子どもを持つママFPが詳細に解説する——。
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2月16日から3月15日は確定申告の期間です。会社員の場合は年末調整で税金の計算と納税が終わっているのが一般的です。ですが、会社員であっても確定申告をすることで払いすぎた税金が数万円返ってくるというケースも少なくありません。今回は確定申告をしないと損をする、よくある6つのケースを紹介します。


■ケース1.ふるさと納税のワンストップ特例制度申請に失敗


会社員の方の場合、ふるさと納税をするときは確定申告はしたくないのでワンストップ特例制度を利用しているという人が多いでしょう。


ですが、ワンストップ特例制度を利用するには条件があります。この条件を外れてしまった場合は提出済みのワンストップ特例制度の申請書類も全て無効となってしまい、寄付したお金は返ってきません。5万円寄付していたら、4万8000円は返ってくるはずが、5万円全て自己負担となってしまうのです。


よくあるのが、寄付先を5団体以内に抑えるつもりが、うっかり6団体以上に寄付をしてしまったというケースや、ワンストップ特例制度の申請書類の提出期限を過ぎてしまったというケース。当てはまる方は自動的にワンストップ特例制度の申請が無効となっているので要注意です。


さらにもう一つ漏れやすいのが、ワンストップ特例制度の申請書類を出していたものの、ふるさと納税以外の理由で確定申告をすることになったというケース。この場合、ふるさと納税についてはワンストップ特例制度申請書を出しているから大丈夫、ということにはなりません。確定申告をした時点でワンストップ特例制度は無効となるので、ふるさと納税についても確定申告が必要です。


■ケース2.出産や高額な医療費


医療費が年間10万円を超える場合、超えた部分について医療費控除を受けることができるのは皆さんご存じかと思います。子育て世帯に多いのが出産や子どもの歯科矯正などで年間医療費が10万円を超えるケース。


先日家計相談にお越しのAさんご夫妻は子どもが生まれて家計を見直したいということだったのですが、なんと医療費控除の申告を行っていませんでした。今まで確定申告をしたことがなく、今回だけだから面倒くさいからもういいんです、とのこと。


Aさんの場合、都内のクリニックでの出産で出産費用が70万円くらい、検診費を含めると90万円近くかかったそうです。面倒だからと確定申告を行わなかったAさんですが、年収600万円の場合、かかった費用の90万円から受け取った出産一時金50万円は差し引かれますが、それでも約6万円の税金が安くなります。


面倒だからといって確定申告をしないと6万円の損失です。(※その他控除等によって金額は変わることがあります)


また、Aさんの場合、今まで正社員で働いていた妻が出産に伴って産休・育休を取得しているため、配偶者控除の対象となっていました。しかし、出産手当金や育休手当をもらっているので所得が配偶者控除の範囲を超えていると思い、申請をしていませんでした。


実は出産手当金や育休手当は所得に含める必要はありません。育休取得中で妻の所得が48万円以下になった場合は配偶者控除の対象になりますし、133万円以下になった場合は配偶者特別控除の対象となります。


■ケース3.住宅ローン控除は申請しないと毎年数十万円の大損


住宅ローン控除とは住宅(要件を満たしたもの)を取得し、住宅ローンを組んだ場合に残高の0.7%を最大13年間所得税(所得税から引ききれない場合、一部住民税)から控除してくれるという制度です。


住宅ローン控除は住宅ローンを組んだときに自動的に行ってくれるというものではなく、購入した翌年に自身で確定申告をしなければいけません。先日お会いしたTさんはなんと住宅ローン控除の申告をしていなかったそうです。


住宅ローン控除の申告をしないと、毎年数十万円の損をすることになります。仮に年末の住宅ローン残高が3000万円だとすると21万円の控除です。年末残高に応じて年々控除額が減るものの、住宅は高額なので、住宅ローン控除の節税額は100万円単位になることもあります。


■ケース4.年末調整で出し忘れたものがある


年末調整も年に一度しかないので毎回面倒だな、これであってるのかな? 間違えていたら教えてもらえるだろうからこのまま出しちゃえ! という人も多いかもしれません。


年末調整は確定申告に代わる大事な手続きです。本来であれば自身で確定申告をすべきところを会社が代わりに行ってくれるのが年末調整です。年末調整で自分の状況をしっかり会社に申告しておかないと、諸々の控除を受けることができず、本来であれば払わなくてもよい税金を払うことになってしまいます。


よくあるのが、生命保険料控除が一部漏れていたというケース。先日ご相談に来られたHさんは源泉徴収票と加入中の保険証券を拝見したところ、学資保険と収入保障保険、医療保険に加入されているのに生命保険料控除の欄には一般生命保険料控除の欄しか記載がありませんでした。


実は生命保険料控除は新・旧合わせると5種類あり、それぞれに控除があるのですが(条件や上限もある)、Hさんのように1つ入れたら他の分は入れる必要がないと思ってしまったというケースはよくあります。保険の加入時期や保険種類によって該当する控除が異なります。生命保険料控除証明書に該当する控除の区分が書かれていますので、よく見て、漏れなくしっかり申請するようにしましょう。


もう一つは、先ほどのAさんのように妻が産休・育休に入り、収入が減った場合の配偶者控除・配偶者特別控除の申請です。対象となる場合は申告しないと控除を受けることができません。


■ケース5.税金が戻ってくるだけでは終わらない…給付金や助成金に連鎖


出産費用が高額だったのに面倒くさがって確定申告をしなかったAさんですが、確定申告をしないと今後育児にかかわる費用や助成金にも影響が出てくるかもしれません。


実は、児童手当の所得制限(※撤廃予定)や保育料の金額、高校無償化の基準も年末調整や確定申告によって計算された所得をもとに決まります。


医療費控除や配偶者控除、生命保険料控除などの控除を申告しておかないと、所得が多く見積もられてしまいます。


現状では児童手当は所得制限限度額未満であれば0〜3歳未満は一律1万5000円、3歳〜小学校修了までの第1子・第2子は1万円、第3子以降1万5000円、中学生は一律1万円が支給されますが、所得が所得制限限度額以上になった場合、一律5000円の特例給付になります。


また、所得上限限度額以上になった場合は、特例給付も受けることができなくなってしまいます。


(参照:こども家庭庁 児童手当制度のご案内


保育料も所得によって金額が変わります。3歳児クラス以上は保育無償化で所得制限はないのですが、特に保育料の高い0〜2歳の保育料は世帯住民税の所得割額によって決まります。4月から8月までの保育料は前年度の所得、9月から3月までの保育料は当年度の所得によって決まります。


控除を申告しなかったことで所得が多く計算され、それによって保育料の区分が1つ上がると、月額保育料が月6000円も上がってしまうということもあります。


(参照:杉並区 認可保育施設の保育料について


また、高校無償化(高等学校等就学支援金制度)では、通う学校や世帯所得によって支援金の金額が変わるのをご存じでしたか?


無償と言いながらも全員が無償となるわけではなく、各世帯の扶養人数や控除等が加味された上での課税標準額(課税所得額)×6%−市町村民税の調整控除の額によって判定されます。妻が本来扶養に入れるのならば、しっかり申請しないと、申請を怠ったせいで無償化の対象外になってしまうことがあるかもしれません。


(参照:文部科学省 高等学校等就学支援金制度


■ケース6.5年以内ならまだ間に合う


ここまでコラムを読んできて、そうだったのか! 知らなかった! どうしよう! と思った方も安心してください。5年以内であればさかのぼって確定申告をすることができます。


確定申告をすれば還付を受けることができるので、今すぐ確定申告をしてください。還付を受けるための申告は1年中いつでも受け付けています。


ただ、残念なことに、所得税・住民税に関してはさかのぼっての還付を受けることができますが、保育料などはさかのぼって返金してもらうことは難しいようです。該当する方は念のため自治体に問い合わせてみましょう。


■スマホでらくらく確定申告のススメ


確定申告をしないと大変なことになるということをご理解いただけましたでしょうか?


とはいえ、多くの方は確定申告に慣れていないので、やっぱり面倒だし、難しそうと思ってしまいますよね。でも、いざやってみると、そこまで難しくありません。


一から自分で計算をする必要はなく、インターネットで国税庁確定申告書等作成コーナーを検索し、表示された質問事項に答えていく形で進んでいくと、最後に確定申告書ができあがります。PCはもちろんスマホでも大丈夫です。


写真=iStock.com/mapo
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確定申告書ができあがったら印刷して税務署に提出します。郵送も可能ですし、マイナンバーカードを持っている方や事前に税務署でID・パスワードを受理している方はPCやスマホからオンライン申請も可能です。


まとめ
白状すると、私も出産のときによくわからないという理由で確定申告をしなかった一人です。里帰り出産だったのでそんなに控除はなかった(と、思いたい……)ので、もういいか、と思ってしまいました。その後ふるさと納税の際に確定申告をしたところ、拍子抜けするくらい簡単で驚きました。こんなに簡単ならちゃんと確定申告をしておけばよかった! たとえ1000円でも返ってきたらうれしいのに! と後悔しつつ、今は皆さんに確定申告をしましょう! 簡単だよ! とお伝えしています。1万円稼ぐのも1万円節約するのも大変ですが、確定申告をすれば簡単に返ってきます。(※該当する控除がある場合)面倒くさがらずに確定申告をしてくださいね。

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橋本 絵美(はしもと・えみ)
はしもとFPコンサルティングオフィス 代表
6人の子どもを持つママFP&お片づけプランナー。福岡県出身。小さな頃から「大家族のママになりたい!」という夢を持ち、慶應義塾大学商学部卒業後、学生時代から交際していた夫と結婚。現在、中学2年生から3歳まで2男4女の子育て中。
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(はしもとFPコンサルティングオフィス 代表 橋本 絵美)

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