3位「目覚まし」、2位「マットレス」、1位は…2万人以上を治療して分かった、睡眠改善を最も実感できる方法

2024年2月28日(水)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Studio CJ

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中高年が質の良い睡眠をとるにはどうすればいいか。スリープコーチの角谷リョウさんは「50代から質の良い睡眠をとるには『睡眠環境の改善』をすることだ。2万人以上の50代の睡眠改善をサポートしてきてわかった睡眠改善の方法トップ3は、1位『光環境の改善』、2位『マットレスの改善』、3位『目覚ましの改善』だった。特に世界でも夜がダントツに明るい国・日本では、電球色(暖色系)に比べて蛍光灯(白色系)は、メラトニン分泌が低下することが分かっている。照明を工夫することが、快眠への最も有効な近道である」という——。

※本稿は、角谷リョウ『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)の一部を再編集したものです。


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■50代の睡眠は「マットレス、シーツ、パジャマ」にこだわるべき理由


スタンフォード大学で世界最初の睡眠研究所「スタンフォード大学睡眠整体リズム研究所」の設立に関わり、初代所長になったウィリアム・C・デメンド博士は非常に正直でユニークな方でした。


寝具メーカーから、「一般的なマットレスと高級マットレスで、どれくらい睡眠の質が上がるのか」という実験の依頼をされたのに、勝手に「コンクリートの床」のケースを加えて、3つの条件で実験を行いました。


結果はなんと「一般のマットレス」「高級マットレス」「コンクリートの床」のどれもほとんど睡眠の質が変わらないことが分かり、デメンド博士はそのことを発表してしまい、寝具メーカーから大目玉を食らいます。


ところが後年、被験者が10代〜20代の若者だったのが原因であると著書で書いていて、実際に年齢が上がるほど、マットレスやシーツ、パジャマなどが睡眠の質に影響することが分かってきています。


その理由は体のクッション機能や肌の油分の低下などにより、特に体に触れている部分の悪影響を受けやすくなるからです。


私も若い人には、あまり寝具をはじめとする睡眠グッズの購入はおすすめしないのですが、50代の方には積極的におすすめしています。


■「行動」ではなく、まずは「環境」を変えてみる


50代になると、特に男性は変化を嫌い、今までと同じ環境で同じ行動をするようになります。


10年前ならその環境と行動で、まあまあの睡眠が取れていた可能性が高いのですが、50代になるとおそらく40代のときと同じ環境と行動では、質の高い睡眠が取れていない可能性の方が高くなります。


人は環境に適応する生き物なので、仕事や住む場所が変われば、行動を変えることはたやすいのですが、同じ環境だとなかなか行動を変えることができません。


「質の良い睡眠環境」と「質の良い睡眠にするための行動」の両方が必要なのですが、環境を変える方がはるかに簡単です。なぜなら1回のアクションで済みますし、モノを買うのは「楽しい」行為だからです。


そして「睡眠環境」を変えることができれば、睡眠の質が上がるうえに「質の高い睡眠になる行動」へのハードルが一気に下がり始めます。


したがって、まずやるべきことは「睡眠環境の改善」からなのです。


写真=iStock.com/fizkes
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■「睡眠ビジネス」のカモにならない


ネットを検索すれば、「睡眠改善効果」をうたった寝具やツールがたくさん出てきます。寝具を扱うショップの店員さんに質問すれば、必要以上に高価な商品をすすめてくるでしょう。


基本的に人間はお金を使いたがる傾向があります。他の娯楽や健康に悪いものにお金を使うくらいなら、睡眠にお金をかけた方が良いです。


とはいえ、大切なお金ですので、本当に効果の高いグッズから試した方が、時間とお金の節約になります。


私は毎日多くの人の睡眠改善をサポートしていることもあり、寝具やサプリなどを「売ってほしい」「紹介してほしい」という案件依頼が月に数件は来ます。


でも、ご安心ください。


私は本当に良いものや、クライアントに効果があるものは無料で紹介しますし、逆に効果があまりないものは、いくらお金をいただいても紹介しない主義です。


本書では2万人以上の50代の睡眠改善をサポートしてきて、本当に効果があった方法しか紹介していません。さらにランキング形式にして「効果があった」「評判が良かった」順に掲載していますので、安心して参考にしてください。


■世界の中でも夜が明るい日本の照明事情


50代が睡眠環境を変えて一番効果を感じやすいのは「光環境の改善」です。


日本は世界でもダントツに夜が明るい国です。


出所=『働く50代の快眠法則

分かりやすい例で言いますと、駅や街路などの明るさは、欧米と比べて40%以上明るいという研究報告もあります。コンビニやスーパーの店内の明るさの基準も欧米に比べて高いです(欧米人は瞳(ひとみ)のメラニン色素が少なく、光に弱いという理由もありますが)。


さらに日本の家の中の照明の基準(最低500ルクス)も、光が強すぎて睡眠に悪影響を与えます。寝る1時間前に500ルクスの照明を浴びていると、睡眠ホルモンのメラトニンが40%近く低減してしまうという報告もあります。


家の外も中も光の明るさが強いので、効果が出やすいのは当然かもしれません。人間は光によって目覚め、光が減ることで眠くなりますので。


さらに日本は海外の電球文化(1960年代から主流)と違い、蛍光灯文化(1970年代から主流)がベースとなっているため、照明の色は白色系がいまだに主流です。


電球色(暖色系)に比べて蛍光灯(白色系)は、メラトニン分泌が低下することが分かっているので、日本では照明を工夫することが、快眠への最も有効な近道となるのです。


■寝る1時間前は「少し暗い」部屋でちょうどよい


まずお手軽に照明でできることは、天井照明を寝る1時間前に少し明るさを落とすことです。最近の照明のほとんどが、多段階で明るさ調整できるタイプが多いので、目安としては「少し暗いかな」と感じるぐらいをおすすめします。


最初は暗く感じますが、多くの人は寝る前に複雑な作業はしないので、問題はありません。もし本を読んだり、勉強をする場合はデスクライトを活用してください。


出所=『働く50代の快眠法則

ECサイトなどで検索すれば、1000円ちょっとで買える商品がいくつも出ていますので、お手軽に導入できます。


目にも睡眠にも優しいうえ、集中できますので、一石三鳥です。


また少し手間はかかりますが、蛍光灯を白色系から暖色系に変える方法もあります。


ただし、このやり方だと夕方以降のリラックスや睡眠の質を上げるのには有効ですが、日中の作業の集中力が落ちたり、違和感を持ったりする場合があります。


寝室だけならおすすめですが、仕事や勉強もする部屋であれば、次の「本気コース」で出てくる「照明自体を変える方法」をおすすめします。


■調光調色機能のある照明器具がおすすめ


本気コースでまずおすすめしたいのが、高性能な天井照明です。高性能といっても今ではスタンダードになっている調光調色機能がついている照明です。


以前は数万円出さないと買えませんでしたが、今では一流ブランドでも1万円程度、コスパの良いアイリスオーヤマなどのブランドだと3000円代から購入が可能です。


出所=『働く50代の快眠法則

さらに余裕がある方には、時間によって照明の色や強さを自動で設定できるタイプをおすすめします。このタイプは朝は光目覚ましとして使えるだけでなく、まったく操作をせずに、日中は集中モードの光、夕方から少しずつ暖色にして光量を自然な感じで落としていけます。


次におすすめが高性能デスクライトです。目に優しく見やすいタイプのデスクライトです。まずは天井照明からですが、デスクライトも勉強や本を読まれる方だと、睡眠が改善される実感を覚える方も多いのでおすすめです。


最後は間接照明でも「自然な揺らぎがあるタイプ」の導入です。焚(た)き火やキャンドルの炎の揺らぎにはリラックス効果があることが分かっていますが、寝室で火を使うのは火災の危険が伴います。


そこで登場するのが、自然な揺らぎを表現できる間接照明です。バルミューダや無印良品のLEDランタンが有名です。


■有名人愛用マットレス=自分にも合うマットレスとは限らない


50代が睡眠環境を変えて2番目に改善効果を感じるのは「マットレス」の改善です。


実は私は睡眠改善にお金をたくさんかけることを推奨するタイプではありません。30代より若い方はマットレスを変えても、改善効果があまり得られないというデータもあるので、ほとんど推奨することはありません。


出所=『働く50代の快眠法則

しかしやはり50代以降になると、寝ている間に体や脳を回復する能力が衰えているため、多少高価なグッズを買っても十分元が取れます。


その代表格がマットレスです。


ただし、マットレスを購入・買い替えするには注意が必要です。


多くの寝具メーカーは「睡眠ブーム」に乗じて、一般の方でも数十万円するマットレスを購入してしまう接客マニュアルでみっちり研修を受けているからです。有名人や有名アスリートが使っているからといって、必ずしもあなたに合っている保証はどこにもありません。


実はあまり大きな声では言えないのですが、マットレスの原価はそれほど高くありません。某有名なマットレスメーカーは、余った釣り糸の再利用という話は有名です。


もちろん企業努力で性能や価値を上げ続けている姿勢には感銘を受けますが、読者のみなさまには、性能以上のお金を出さなくて済む情報をお伝えします。


■50代からのマットレスは「柔らかく」「暖かく」「厚く」すること


まずお手軽にマットレス・敷布団系(以下マットレスで統一)でできることは、今のマットレスに少し手を加えることです。一人暮らしなどで周りの目が気にならない方であれば、マットレスの下に段ボールを敷くことをおすすめします。


意外かもしれませんが、年をとると床からの冷たさが眠りの質を下げていることがあります。


また若いときには感じなかった、床に当たる痛み・感覚(これを床付き感と言います)が、50代になると眠りの質を下げてしまいます。


出所=『働く50代の快眠法則

50代になったら、今までのマットレスより「柔らかく」「暖かく」「厚く」することがポイントです。このポイントを押さえておけば、それほどお金をかけなくても対策することができます。


その中で最もお金がかからない方法としてダンボールが最適なのです。段ボールを敷くだけで、かなりのクッション性と床からの冷たさを防ぐことが可能になります。


ダンボールの見栄えが気になる方は「すのこ」をおすすめします。マットレスはカビが生えやすいのでカビの防止にもなります。


最後は安価で薄手のマットレスを下に重ねる方法です。今のマットレスにほんの少しでも厚みを加えると、まったく違うレベルの寝心地になります。


■確実に改善効果を得たいなら「厚さ10センチ以上」


本気コースでまずおすすめしたいのがマットレスの買い替えです。


このジャンルは冒頭でも書いた通り、「寝ている時間で割ったら安い」「人生の3分の1は寝ている時間ですよ」といった営業トークに乗せられて、つい10万円以上、時には数十万円のマットレスを買ってしまいがちです。


出所=『働く50代の快眠法則

本書ではそこまでお金をかけずとも、確実に改善効果が感じられるマットレスの選び方のポイントを解説します。


まず押さえておきたいのが「厚さ」。10センチ以下だと、どれだけ高性能でも50代の睡眠問題を解決するには不十分です。


逆に言えば厚さが10センチ以上あれば、よほど粗悪品でない限り、改善効果が感じられる可能性が高いと言えます。


残りはやはり「寝心地」。これには各人の好みがあるとはいえ、やはり高級になればなるほど、寝心地は良くなっていくと感じる方が多いのも事実です。ただ、マットレスの世界は車と似ていて、あるレベルからは値段ほどの違いは感じないものです。


それなりにお金を出しても失敗のないマットレスの選び方として、まずはニトリなどのコスパの良いブランドのマットレスを購入することです。


また反対に高級ブランドの廉価品も一考の価値ありです。


■ほとんどの人が「寝る前のスマホ」をやめられない


手軽かつ劇的に睡眠の改善効果が感じられるツールの代表が「目覚まし時計」です。


就寝と起床という、睡眠にとって最も重要なタイミングに関わるツールなので、眠りの深さや目覚めの快適さに思いっきり直結してきます。


出所=『働く50代の快眠法則

ほとんどの人が「寝る前のスマホ」が睡眠に良くないことを知っていながら、やめられません。


最近ではスマホのブルーライト対策として、ナイトモードにしたり、ブルーライトをカットするといった工夫をされる方が増えています。


もちろん多少の睡眠改善効果がないとは言いませんが、スマホが睡眠に良くない理由は、ブルーライトよりも、SNSやニュース、ゲームなど、コンテンツからの脳への刺激の影響です。


当たり前ですがコンテンツ制作側は「もっと観てもらおう」と思って制作しているわけですから、本来寝るべき時間に寝られなくなるということが、スマホを夜にいじってしまう最大のデメリットになるわけなのです。


■スマホの目覚ましは枕元から50センチ以上離す


まずお手軽に始める方法として、スマホは目覚ましとして使うけど、枕元での充電は行わない、または充電しても枕元から50センチ以上離してみることをおすすめします。


スマホを寝る前まで使ってしまうことの抑制効果はほとんどありませんが、電磁波の影響を下げることができます。


出所=『働く50代の快眠法則

スマホの電磁波については、基本的に人体への影響はないと定義されていますが、WHOの下部組織であるIARC(国際がん研究機関)の発がん性評価では、上から3番目のグループ2B「発がん性があるかもしれない」(車の排気ガスと同じカテゴリー)に分類されています。


少しお金はかかりますが、1000円程度の秒針の音が小さい目覚まし時計もおすすめです。


ここでポイントとなるのが秒針の音です。


若いうちは目覚まし時計の秒針の音なんて、睡眠にはほとんど影響しないのですが、50代になるとかなり気にされる人が増えますし、実際に入眠時間が長くなったりするケースもあります。


■朝日とともに目覚める人間に最適な「光目覚まし時計」


本気コースでまずおすすめしたいのが「光目覚まし時計」です。


睡眠の質が上がるというよりは、目覚めが劇的に変わります。人はもともと朝日とともに目覚めるようにできています。


出所=『働く50代の快眠法則

光がだんだん強くなりながら、自然に目覚めていくのが理想の目覚めなのですが、光目覚まし時計はそれを1年中同じ時間で、どんな天候でも再現してくれるというまさに神アイテムです。



角谷リョウ『働く50代の快眠法則』(フォレスト出版)

次は少しお値段が上がりますが「カーテン自動開閉機」もおすすめです。


カーテンそのものに自動開閉機能がついているものは非常に高価ですが、カーテンに取りつけるタイプであれば、1万円以下で購入が可能です。


基本的には遮光カーテンにして開閉するのがベストです。


最後はお金に余裕がある人向けですが、アマゾン史上最も音質が良いとされるスピーカー「アレクサ対応のエコースタジオ」を使って好きな音楽で起きる方法です。


私は実際の音は聞いたことがないのですが、スマートホーム化して目覚ましに使っている人たちの評価は非常に高いです。スマートスピーカとは思えない音質で、目覚めが良くなったと言います。音楽で起きたい人にはおすすめの選択になります。


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角谷 リョウ(すみや・りょう)
スリープコーチ
LIFREE共同創業者。NTTドコモ、サイバーエージェント、損保ジャパンなどの大手企業をはじめ、計120社、累計6万5000人の睡眠改善をサポートしてきた上級睡眠健康指導士。日本サウナ学会学会員。神戸市役所勤務時に体づくりに目覚め、パーソナルトレーナーをつけ、自分に合った理論的なトレーニングの有効性を実感。あらゆる有名トレーナーのメソッドを研究する。役所を退職後、トレーナーとして独立。神戸と大阪のトレーニングスタジオを経営しながら、自らもトレーナーとしてスタジオや企業で指導を行うエグゼクティブ専門のパーソナルトレーナーとして活動する。
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(スリープコーチ 角谷 リョウ)

プレジデント社

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