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分社化される東芝メモリ、筆頭株主になるのはどこか

JBpress3月2日(木)6時12分
画像:決算発表を取りやめ1カ月の延期を申請した2月14日の東芝の記者会見(写真:長田洋平/アフロ)
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決算発表を取りやめ1カ月の延期を申請した2月14日の東芝の記者会見(写真:長田洋平/アフロ)
画像:表1 東芝メモリの株式買収に名乗りを上げている企業
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表1 東芝メモリの株式買収に名乗りを上げている企業
画像:図1 NANDの企業別売上高シェア(出所:DRAM eXchang、2016年3月)
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図1 NANDの企業別売上高シェア(出所:DRAM eXchang、2016年3月)
画像:図2 1月6日にホワイトハウスが公開した報告書
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図2 1月6日にホワイトハウスが公開した報告書

 東芝がNANDフラッシュメモリ事業(以下NAND)を分社化する。その社名は、「東芝メモリ株式会社」(以下、東芝メモリ)となった。

 東芝では、2016年末に原子力事業で巨額損失が出ることが発覚し、その損失額は7125億円に膨れ上がった。その結果、2016年4〜12月期は4999億円の赤字となり、12月末時点で1912億円の債務超過になっていることが明らかになった。

 この危機的状況を打開するために、東芝メモリを分社化し、新株を売却して、その売却益で債務超過を回避しようとしている。当初、新株の売却は2〜3割の予定だったが、2月14日の記者会見で東芝の綱島智社長は、「マジョリティ譲渡を含む外部資本導入を検討している」と発言した。つまり、東芝メモリを手放すこともあり得るということである。

 その場合、東芝メモリの筆頭株主となって経営権を握るのは、果たしてどこになるのだろうか? 巷では10社ほどの候補が挙がっている。本稿では、買収に名乗りを上げている7つの企業について、国籍、事業内容、東芝との関係、資金の有無などを明らかにし、なぜ、東芝メモリを買いたいのか、その実現性はどのくらいあるか、について分析を試みる(表1)。


[1] 米ウェスタン・デジタル(WD)

 ウェスタン・デジタル(WD)は、ハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)などストレージ装置をビジネスにしている。その傘下のサンディスクは、2000年以降、四日市工場で、東芝とNANDの共同開発・製造を行っている。このような経緯から、WDおよびサンディスクは、東芝と付き合いが深く、親和性も高い。したがって、東芝メモリの買収にはその筆頭候補に名前があがるのも自然な流れだ。

 しかし、2つ問題がある。まず、独占禁止法について。2016年の企業別NAND売上高シェアでは、サンディスク(つまりWD)が16%、東芝が19%だった(図1)。これらを合計すると、34%となり、トップシェアのサムスン電子(33%)を上回る。これが独占禁止法に抵触するかどうかについて公正取引委員会による審査を受けなければならない。これは時間がかかる上、買収が却下されるかもしれない。

 第2は、買収資金の問題。東芝は東芝メモリの資産価値を約2兆円と評価しているが、WDがその買収資金をポンと出せるかという点だ。不可能ではないかもしれないが、そう簡単ではないように思う。

 以上から、WDは東芝メモリ買収の筆頭候補であり、これまでの経緯から言えばWDが買収するのは自然流れであるが、実際に買収できるかどうかについては疑問がある。


[2] 米マイクロン・テクノロジ

 2002年、東芝がDRAMから撤退する際、その事業を買収したのが、マイクロンである。しかし、その後、東芝との交流はない。そのマイクロンは現在、DRAMとともに、NANDをインテルと共同開発し、製造している。

 マイクロンによる東芝メモリ買収の問題点は、基本的にWDの場合と同じである。まず、マイクロンは単独で14%、インテルと合計で24%のNANDシェアを有している。もし、マイクロンが東芝メモリを買収した場合、マイクロン+インテル+東芝メモリの合計で43%のトップシェアを占めることになる。これは、独占禁止法に引っ掛かる可能性が高い。

 また、2兆円の東芝メモリ買収資金については、マイクロンは、はなはだ心もとない。インテルがバックアップしてくれるなら可能かもしれないが、マイクロン単独では、2兆円は準備できないだろう。

 マイクロンは、2012年に経営破綻したDRAM専業のエルピーダを買収した。当初、米国人が日本人をコントロールできるかと疑問視されたが、結果から言うと、旧エルピーダ広島工場は、うまく経営されている。マイクロンの米国人経営者たちは、日本人とうまく協業する実績を積んだと言える。

 私は、東芝メモリが生き延びるためには、外国人経営者が必要だと思っている。その候補として、旧エルピーダとうまくやっているマイクロンは、理想的のようにも思う。しかし、独占禁止法に抵触する上に、買収資金が手薄であり、筆頭株主にはなれないのではないか。


[3] 韓国SKハイニックス

 DRAMとNANDを製造している韓国SKハイニックスの問題点は、基本的にWDやマイクロンと同じである。まず、SKハイニックスは8%のNANDシェアを持っており、東芝メモリを買収すると、合計のシェアは27%となり、サムスン電子のトップシェア33%に接近する。したがって、独占禁止法に引っ掛かる可能性がある。

 また、2兆円の資金については、マイクロンと同様に、SKハイニックス単独では、準部するのが難しい。ただし、SKハイニックスの親会社の韓国通信大手SKテレコムが乗り出して来たら、この資金の問題は解消できる可能性がある(しかし、どうなるかは分からない)。

 一方、NAND以外では、SKハイニックスは、東芝と、磁気メモリ(MRAM)等、次世代の新メモリを共同開発している。そういう意味では、東芝との親和性は高い。

 しかし、SKハイニックスが東芝メモリを買収して、筆頭株主になるということは考えにくい。独占禁止法や買収資金の問題もあるが、それ以上に、「韓国に支配される」ということが、東芝メモリには耐え難いことであると思うからだ。したがって、SKハイニックスが東芝メモリの筆頭株主になることはないと思う。


[4] 台湾TSMC

 TSMCは、半導体製造専門のファンドリーであり、その分野で世界シェア60%を占める世界最大最強のファンドリーである。製造しているのは、DRAMやNANDなどのメモリではなく、スマホやサーバー用のプロセッサなどが主力製品である。

 このように事業分野がまったく異なるTSMCが、東芝メモリの買収に名乗りをあげるのは、私にとって意外であったが、それゆえ、独占禁止法の問題はまったくない。また、毎年40%近い営業利益率を叩き出し、1兆円超の設備投資を普通に行っているTSMCにとっては、2兆円の買収資金も簡単に拠出できるだろう。

 では、なぜ、TSMCは、東芝メモリの買収に乗り出してきたのか。私は、TSMCには2つの思惑があると推測する。

 まず第1に、TSMCは、アップルのiPhone用のプロセッサを受託生産しており、これが大きなビジネスになっている。iPhoneには、東芝製の3次元NANDが搭載されているが、もしTSMCが東芝メモリを買収すれば、iPhone用のプロセッサと3次元NANDを押さえることができる。そこに第1の目的があると思われる。

 第2は、サムスン電子対策である。2010年頃から、iPhone用のプロセッサの受託生産を巡って、TSMCはサムスン電子と壮絶な鍔迫り合いを続けてきた。現在、TSMCが主導権を握っているが、TSMCにとってサムスン電子は、最も警戒すべき半導体メーカーとなっている。

 両社の攻防は、2006〜2007年頃に遡る。当時から、ファンドリー分野でのTSMCの存在感は圧倒的だったが、それ以外にも台湾のDRAM、液晶パネル、携帯電話(スマホ)が躍進を始めた。そのため、自身の事業が脅かされると感じたサムスン電子は、「台湾滅亡計画」を立案し、台湾メーカーを潰しにかかった(日経新聞電子版2013年4月9日)。

 まずDRAMでは、リーマン・ショック後もあえて設備投資を断行し、下位メーカーの振るい落しを図った。結果的に、サムスン電子の狙い通り、台湾のDRAMメーカー力晶科技や茂徳科技が経営悪化で2012年に相次ぎ上場廃止となった。

 次に、液晶パネルでは、サムスン電子は自社のテレビ向けの台湾メーカーからのパネル調達量を大幅に削減した。また、2010年に韓台のパネル大手が欧州連合(EU)からカルテルの制裁金として約6億5000万ユーロ(約820億円)を科された際には、サムスン電子のみが当局に情報を提供して制裁金を免れた。この結果、2012年10〜12月期時点で、群創光電(旧奇美電子)は10四半期連続、友達光電(AUO)は9四半期連続の最終赤字に陥った。

 さらに、「台湾ブランドの希望の星」として期待が高かったスマホ大手の宏達国際電子(HTC)もサムスン電子の狙い撃ちに会い、2011年後半からシェアが急速に減少し、2012年10〜12月期にはスマホの世界シェア上位5社から姿を消した。

 そして、サムスン電子の最終ターゲットは、TSMCとなった。一時期、iPhone用プロセッサの受注に成功したサムスン電子は、ファンドリーの世界シェアで、台湾2位のUMCを抜き去って、10位から一気に3位まで上り詰めた。

 現在は、iPhone用プロセッサは、サムスン電子からそれをもぎ取ったTSMCが受注しているが、いつまたサムスン電子が攻撃を仕掛けてくるか分からない。TSMCは、少しでもサムスン電子の勢力を削いでおきたい。そこで、東芝メモリを買収すれば、NANDでもサムスン電子に対抗できる。TSMCには、そういう思惑があるのではないか。

 以上が、TSMCが東芝メモリを買収する目的と考えている。もし、TSMCが東芝メモリの筆頭株主になり、その経営をTSMCの幹部が行うとしたら、その経営手腕には期待ができる。個人的には、TSMCに、筆頭株主になっていただきたいと思っている。


[5] 台湾・鴻海精密工業(ホンハイ)

 シャープを買収した鴻海精密工業(ホンハイ)の主な事業は、電子機器の受託生産(EMS、Electronics Manufacturing Service)である。したがって、東芝メモリの買収が独占禁止法に抵触することはない。また、ホンハイにとって2兆円の買収資金を準備することも大した問題ではないだろう。

 では、なぜ、ホンハイは、東芝メモリの買収に手を挙げたのか。そこには、3つの目的があると推測する。

 第1は、ホンハイは、アップルのiPhoneの組み立てを受託している。その際、iPhoneに搭載されるNANDは、アップルが東芝から購入し、ホンハイに供給している。もし、ホンハイが東芝メモリを買収すれば、このようなルートを取る必要がなく、自前でNANDを供給することができる。そうすれば、大きなコストメリットが生じると思われる。

 第2は、昨年、ホンハイは、ソフトバンクが買収したARMと提携し、半導体設計を専門とするファブレスに進出すると発表した。ホンハイが設計した半導体は、どうやらシャープが製造するようである。つまり、EMSを本業とするホンハイが、半導体ビジネスに参入するというのである。

 東芝が原子力事業で7125億円もの損失を出して経営危機に陥った際、ホンハイの郭台銘CEOは、「東芝の放送と半導体事業に関心がある」(東洋経済2017年1月27日)と発言している。ホンハイは、東芝メモリだけでなく、今回売却の対象になっていないシステムLSIや個別半導体(ディスクリート)にも興味があるかもしれない。半導体に進出するホンハイは、ハゲタカのように、「東芝の半導体事業で、買えるものは何でも買う」のではないだろうか。

 第3は、TSMCと同様に、サムスン電子対策である。ホンハイはシャープを買収した後、シャープ製の液晶パネルをサムスン電子に供給することを停止した。ホンハイやシャープ側は、「価格などの条件が折り合わなかったことが主因」(日経新聞2016年12月15日)としているが、その本音は、テレビ市場に君臨してきたサムスン電子を打倒することにあると思われる。そこで、東芝メモリを買収することができれば、NANDでもサムスン電子に対抗できるというわけだ。

 以上が、ホンハイが東芝メモリを買収したい理由と考えているが、もし、ホンハイの郭台銘CEOが東芝メモリの経営を行うことになったら、経営陣をすべて入れ替え、相当強引なビジネスを行うことが予想される(それも良いかもしれないが)。東芝メモリは、郭台銘CEOに引っ掻き回されるかもしれない。


[6] 米アップル

 アップルは、誰もがよく知っているiPhoneを設計し、販売しているスマホメーカーである。iPhone用プロセッサは自前で設計しているが、NANDの設計や製造には一切関わっていないため、独占禁止法には抵触しない。また、2017年1月現在、株式時価総額で世界一の企業であり、うなるほどのキャッシュを持っているので、東芝メモリの買収資金2兆円も何ら問題なく出すことができる。

 では、アップルがなぜ、東芝メモリの買収に乗りだすのか? iPhoneには、東芝の3次元NANDが搭載されている。そのため、「他社に買収されると困る」というアップルの打算が透けて見える。

 アップルは、部品や材料メーカーに対して、相当高圧的なビジネスを強要していると聞く。競争力のある部品や材料は、アップルへ独占的に供給するように縛りをかけ、特許権の行使も許さず、その上、販売価格は僅かに利益が出る程度に抑え「生かさず殺さず」の状態にしているようだ。

 そのような状況で、WDやマイクロンが東芝メモリを買収した場合、買収した企業が3次元NANDで独占的なシェアをもつことになり、アップルがこれまで行ってきた自身に都合の良い(高圧的な)ビジネスができなくなるかもしれない。

 また、TSMCやホンハイが東芝メモリを買収すると、アップルが東芝メモリから3次元NANDを調達し、彼らに売りつけることができなくなる。つまり、中間マージンを抜くことができなくなるわけだ。これはアップルのiPhoneビジネスに大きな痛手となるかもしれない。

 要するに、アップルはiPhoneをつくる上で、その基幹部品である3次元NANDを確保しておきたい。また、3次元NANDの調達によって生じる中間マージンを手放したくない。そのような打算から、東芝メモリを買収したいのではないか。

 仮にアップルが買収した場合、それは東芝メモリにとって良いのか悪いのか。アップルの子会社になれば、将来は安泰かもしれない。しかし、アップルの言われた通りに、iPhone用の3次元NANDをつくり続けることになる。アップルに逆らうことはできない。サーバー用のSSDのビジネスを強化したいと言っても許されない。NAND以外のメモリを開発したいと言っても、許可されるかどうかは不明だ。将来の保証と引き換えに、自由を売り渡すことになるかもしれない。


[7] 中国の紫光集団

 おそらく、表1の企業の中で、切実に東芝メモリの技術が欲しいと思っているのは、中国の紫光集団であろう。

 紫光集団の傘下には、長江ストレージ(XMC)がある。そのXMCは、2016年3月末に突然、240億ドルを投じて、2020年までに12インチウエハで月産30万枚の規模で、3次元NANDを生産すると発表した。XMCは米スパンションから委託を受けて、NORフラッシュメモリを月産2万枚で生産しているファンドリーである。

 2016年秋から、XMCはスパンションと共同で、3次元NANDの試作を開始した。スパンションとサムスン電子はクロスライセンスを締結しているので、当然XMCはサムスン電子の3次元NANDをコピーしようとしている。しかし、2次元NANDも製造したことがないため、その開発には苦労している。実際、11月中旬に完了した3次元NAND試作のファーストロットの歩留りはゼロだった。それゆえ、サムスン電子の3次元NAND量産の拠点となっている中国の西安工場から、サムスン電子の技術者を高年俸でヘッドハンテイングするなど、技術を入手しようとあの手この手を使っている。

 このようなXMCを傘下に持つ紫光集団にとって、東芝メモリの3次元NAND技術は喉から手が出るほど欲しいに違いない。加えて、紫光集団は自身が5兆円の資金を持っている上に、その背後には、中国が自国の半導体強化のために設立した18兆円ものIC基金がある。東芝メモリの買収資金2兆円などは、はした金である。また、XMCのNANDのシェアは実質的にゼロだから、独占禁止法にも抵触しない。

 資金がどこより豊富で、どこよりも東芝メモリの技術が欲しい紫光集団は、他社よりも高額な買収価格を東芝に提示するかもしれない。そして、債務超過を可及的速やかに回避したい東芝は、それに目が眩んでしまうかもしれない。


米国政府が介入してくる可能性

 ただし、もしも紫光集団が東芝メモリを買収しようとしたとき、私は密かに、米国政府、特にトランプ大統領が介入してくるのではないかと予測している。その根拠を以下に示す。

 2016年、オバマ大統領は、半導体の専門家から成る大統領科学技術諮問委員会(PCAST)に、米半導体産業に影響する重要課題の調査を命じた。PCASTには、著名な大学教授のほか、グーグルの親会社のアルファベット、および米国の主要な半導体企業のインテル、グローバルファンドリーズ、フリースケール、クアルコム、アプライドマテリアルズの幹部らが名前を連ねている。

 PCASTは、2016年にオバマ大統領に宛て調査レポート(以下「オバマ・レポート」)を提出し、その全文をホワイトハウスが今年1月6日に公表した。そのタイトルは、「REPORT TO THE PRESIDENT Ensuring Long-Term U.S. Leadership in Semiconductors」(図2)。このオバマ・レポートは、「18兆円のIC基金でM&Aを行う中国が、米国にとって脅威となる」と指摘している。その上で、「中国のM&Aを阻止すること」「米半導体企業のビジネス環境を改善すること」などを提言している。

 オバマ大統領は実際にこの提言に従って、2016年12月に実力を行使した。中国のFujian Grand Chip Investment Fundが、ドイツ半導体メーカーAixtronの米国子会社を買収しようとしていた。しかし、買収の対象に軍事用技術が含まれている可能性があることから、オバマ大統領が「大統領令」を発令して買収を阻止した。


つぶやき一言で世界を揺さぶるトランプ大統領

 1月20日、オバマ氏に代わってドナルド・トランプ氏が新大統領に就任した。そして、トランプ大統領のつぶやき一言に世界中が揺さぶられている。産業界では、特に自動車業界が右往左往している。例えばトヨタ自動車は、トランプ大統領に「メキシコに工場をつくるなんてとんでもない、関税をかけてやる」とツイッターで名指しで批判され、豊田章男社長は「今後5年間で米国に100億ドルを投資する」と対策にてんてこ舞いとなっている。

 これが半導体やIT業界にいつ飛び火するのか、関係者はヒヤヒヤしている。米半導体業界誌EE Timesの吉田順子記者は、「トランプ大統領は、政治と経済をごちゃまぜにしている。米国第1主義(アメリカ・ファースト)と言っているが、その実は“トランプ・ファースト”だ。歯向かうヤツ、気に入らないヤツは、とにかく攻撃する」と述べた。私も同感である。

 そこで問題は、トランプ大統領が「オバマ・レポート」をどう扱うかである。特に中国の紫光集団が東芝メモリを買収しようとした際、トランプ大統領がどんな反応をするかということに注目している。

 トランプ大統領は「オバマ・レポート」をどう使うか? これについて、米半導体業界では2つの見方がある。

 1つは、トランプ大統領は、中国を攻撃したくてウズウズしている。その際、「オバマ・レポート」は、中国を攻撃するための絶好の武器になる。したがって、より一層、強力に中国による世界半導体企業のM&Aを阻止するだろうという見方である(私もそう思う)。この見方の通りなら、紫光集団による東芝メモリの買収は、トランプ大統領が得意の「大統領令」を発令して、断固として阻止することになる。

 しかし、もう1つ別の見方がある。トランプ大統領は、オバマ前大統領の政策をことごとく否定している。TPPからの永久離脱を決め、医療保険制度改革(オバマケア)を撤廃する「大統領令」にも著名した。

 つまり、トランプ政権の第1の方針は「否オバマ」だという見方ができる。すると、オバマ前大統領が調査を指示し提言されたレポートを、内容いかんにかかわらず、一方的に否定するという可能性がある。吉田記者も「そうなるのではないか」と懸念している。もしそうなると、紫光集団による東芝メモリの買収は、トランプ大統領は見て見ぬふりをすることになる。

 果たして、中国の紫光集団が本当に東芝メモリを買収にくるのか。そして、その際、トランプ大統領はどう反応するか。私は、これらの動向に注目している。


東芝メモリを買収してほしい会社

 東芝メモリを買収するのは、これまでの流れから言えば、WDが最も自然だ。しかし、独占禁止法および買収資金の問題があると思われる。マイクロンやSK ハイニックスも、WDと同じ問題に直面するため、筆頭株主になるのは難しいと思う。

 一方、TSMC、ホンハイ、アップル、紫光集団には、独占禁止法や資金の問題はない。したがって、どこが買収してもおかしくない。この4社の中で、東芝メモリの技術が喉から手が出るほど欲しく、また最も資金が豊富なのは紫光集団である。それゆえ、紫光集団はどこよりも高い買収価格を東芝メモリに提示するだろう。そして、東芝メモリはそれに目が眩むかもしれない。ただし、その場合、トランプ大統領がそれを阻止する可能性がある。

 私個人としては、世界最大最強のファンドリーであるTSMCに買収してもらいたい。TSMCの幹部(特に張忠謀・会長)の経営手腕に期待しているからだ。TSMCを創業した張忠謀・会長ならば、東芝メモリのポテンシャルを最大限引き出すような経営ができるのではないかと思う。果たして、東芝メモリの筆頭株主はどこになるのか? その行方から目が離せない。

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筆者:湯之上 隆

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