働き方改革を加速させる「サテライトオフィス」

3月11日(月)6時0分 JBpress

東京電力のテレワークオフィス「SoloTime」

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 メディアなどで「サテライトオフィス」という言葉を目にすることが多くなった。

 その背景には「働き方改革」がある。時間外労働の上限規制など、働き方改革法案は、4月1日から施行となる(中小企業は来年から)。

 特に、時間や場所を有効活用して柔軟に働く「テレワーク」を導入する企業が増えるなか、「働く場所」が多様化してきている。

 今回は、「サテイラトオフィス」ビジネスの最新の動きをお届けする。


働き方改革における「サテライトオフィス」とは?

 「サテライト(satellite)」は、惑星のまわりを回る「衛星」のこと。サテライトオフィスは、「本社や本部から離れたところにある小規模な事務所」として使われることが多い。

 一方、「働き方改革」の視点からは、「毎日通勤し、朝から晩まで働いていたオフィス (所属事業所)から離れた、会社が認める働く場所」と言うこともできる。

 「働き方改革」において、生産性を向上させつつ、人材を確保しなくてはいけない企業にとって、コストを抑えつつ「社員が働く場所」を広げる「サテライトオフィス」は、非常に重要な位置づけとなる。

 筆者は、「サテライトオフィス」を大きく3つに分類している。

●都市型サテライトオフィス

 首都圏であれば、東京駅、品川駅、新宿駅など、企業が集まる都市部に設置されたサテライトオフィス。

 社内会議や資料印刷のために会社に戻ることなく、営業のための移動を効率化できる。企業の生産性の向上に寄与する。

●郊外型サテライトオフィス

 社員が住む郊外に位置するサテライトオフィス。子育てや親の介護などで、通勤時間が負担になる社員が、効率よく働くことができる。

 短時間勤務の子育て社員がフルタイムで働くことも可能だ。災害や交通トラブル時も、有効に機能する。企業にとっては、社員の離職防止、ワークライフバランス向上、そして災害時の事業継続に寄与する。

●地方型サテライトオフィス

 全国各地で、地域の自治体などが設置するサテライトオフィス。

 テレワークの普及により「地方のサテライトオフィスで仕事が可能」になれば、地方創生はもちろん、社員の福利厚生から地方での人材確保、災害時の事業継続など、企業にもメリットが生まれる。


サテライトオフィス御三家も次のステップへ

 早くから法人向けのサテライトオフィス事業に取り組んできた先兵は、それぞれ次のステップに動き始めている。

 東急電鉄のNEWWORKは、直営店は首都圏を中心に全国に設置。店舗ネットワークは全国100拠点となる。今年に入って大阪にも直営店を設置した。

 リクルート系不動産会社ザイマックスは、サービス名を『ZXY(ジザイ)』に変更、来年度は100店舗を目指す。

 三井不動産の駅直結のハイグレードオフィス『ワークスタイリング』も、2020年度には50店舗を目指す方針だ。

 4月1日の「働き方改革法案」施行を前に、確実にビジネスとして成長することが予測されるサテライトオフィス事業。新しい企業の新しい動きも見え始めている。


東京電力の郊外型サテライトオフィス

 東京電力が郊外型サテライトオフィス事業をスタートした。

 先に書いたように、都市型は営業活動の効率化に、郊外型は社員のワークライフバランスに大きく貢献する。

 しかし、東京の「郊外」は広いうえに、一地域の利用者数が限られる。ビジネス性を考えると、東京23区内から徐々に広がるのを待つしかないと、筆者は考えていた。

 しかし、東京電力は3月1日、八王子市にテレワークオフィス「SoloTime」の第1号店舗をオープンした。

 さっそく八王子の「SoloTime」を訪問してみた。八王子駅から徒歩3分。

 普通の雑居ビルの8階なので、正直期待していなかったのだが、エレベーターを降りると、白を基調にしたオシャレなオフィスが目の前にあった。

 「ひとりの時間」という名称から、ネットカフェのような個別ブースが並んでいるのかと思いきや、オープンスペースも広く、明るく、過ごしやすい。

 無人店舗ではあるものの、女性でも安心して利用できる安全性が特徴だ。

 非常用の「緊急ボタン」の設置はもちろんだが、なかなか押しにくいという配慮から不安な時は「ちょっと見守って」ボタンも用意されている。

 八王子は、複数の路線が入るターミナル駅。都市部へ通勤する人も多い。企業が認める「サテライトオフィス」があれば、多くの社員のワークライフバランスが向上するだろう。

 新規ビジネスを担当している東京電力ホールディングスの佐藤和之氏は、こう語る。

 「働き方が多様化するこれからの時代、都心ではフェイス・トゥー・フェイスの打ち合わせなどの『会議・コミュニティ』の場所となり、家の近くではテレビ会議も含めた『ソロワーク』の場所となるのではないか」

 「在宅勤務はスイッチのオン・オフが難しいことから郊外のサテライトオフィスのニーズは今後増えるだろう」

 今後、東戸塚にも出店が決まっているようで、顧客ニーズを検証しながら、次々と郊外を中心に展開していきたいとのこと。他の事業者とは異なるスタンスに注目したい。

全世界で425拠点
NY発WeWorkは「コラボレーシュン」

 WeWorkは、2010年ニューヨークで2人の青年が立ち上げたコミュニティ型ワークスペースだ。

 世界100都市以上に425か所、総面積は45万坪以上。日本に進出したのは2017年だが、今月には都内12か所を中心に、横浜、大阪、福岡へも展開し、年内に約30か所を目指している。

 国内のオフィスは、丸の内北口、六本木アークヒルズサウス、GINZA SIX、日比谷パークフロントなど、誰もが憧れる人気オフィスビルが連なる。

 しかし、WeWorkで働く一番のメリットは「ステータス」ではない。

 「コラボレーション」だ。会員専用SNSから、コミュニティのためのサポート、イベントまで、メンバー同士が交流するためのサービスが用意されている。

 今年1月に京橋の東京スクエアガーデンのWeWorkに本社を移転したニューチャーネットワークスの高橋透社長を訪ねた。

 WeWorkの共有スペースに入るなり、実に様々な人が、自分のスタイルで仕事をしている。高橋氏に移転した理由を聞くと、「ここの方が快適だから」と即答。

 「社員が生き生き仕事をして、ネットワークを広げている。これからの時代は、毎日同じオフィスで、同じ人と仕事をする時代ではない」

 マネシージャーの畑中恵美さんは、自社の専用スペースではなく、あえて共有スペースで仕事をしている。

 1日1人、新しい人に声をかけることを心がけているからだ。これからのサテライトオフィスは、仕事場でありつつ、ネットワークやビジネスのコラボレーションを広げる場に進化しつつある。


JR東日本「駅ナカ」オフィスは今年の夏に正式スタート

 これから注目される「働く場所」は、ビルに用意されたオフィスだけではない。JR東日本が昨年11月から今年2月にかけて実証実験を実施したのは、「駅ナカ」オフィスだ。

 実証実験では、東京駅・新宿駅・品川駅に設置された。企業にとっては、究極の「都市型」サテライトオフィスである。

 『“働く人”の1秒を大切に』というコンセプトどおり、移動の合間、15分単位で利用できることが特徴だ。

 筆者も実証実験期間中に利用してみた。夕方の時間帯は出張帰りの直前に利用する人が多いのか、予約が取りにくかった。

 スマホから予約して、少し前にブースに到着。しかし、予約した時間にならないとブースをオープンできない。

 一瞬面倒だなと思ったが、逆に空いていれば1分前でも予約できるという考え方だ。

 ブースのオープンは、スマホアプリからドアに掲示されたQRコードを読み込むだけ。自分用のQRコードを表示する手間も不要だった。

 ブースは決して広くはないが、30分程度なら問題ない。中にはモニターも設置されカメラも用意されている(筆者が利用したときは利用不可だった)。

 何より助かったのは、時間が近づくと「声」で知らせてくれること。

 仕事に没頭していると時間を忘れがちになるので、ありがたかった。時間を意識して仕事をするという意味でも、場所の便利さだけでなく業務の効率化に貢献しそうだ。

 このサービスは、2019年夏、「STATION BOOTH」として、正式スタートする予定だ。

 また、JR東日本は、「法人向けの駅ナカコワーキングスペース」や「法人向けの駅チカレンタルオフィス」も予定している。

テレワーク・デイズに向け
市場は急速拡大となるか?

 東京オリンピックパラリンピックの交通緩和をきっかに、日本の働き方を変えるべく国が2017年から実施している「テレワーク・デイズ」。

 昨年は、1682団体、延べ30万人以上が参加した。テレワーク・デイズの期間、都内のサテライトオフィスが満席になる現象が出たほどだ。

 先日、「テレワーク・デイズ2019」の方針が発表された。2020年前年ということもあり、目標は3000団体・延べ60万人を掲げている。

 期間も、1か月以上(2019年7月22日〜9月6日)が設定されている。

 テレワークを導入する企業が増え、それに応えるようにサテライトオフィスが広がっている。日本の働き方がいよいよ変わっていく大きな動きを感じずにはいられない。

筆者:田澤 由利

JBpress

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