東大理科III類合格者数日本一の桜蔭…25年度理科問題LED電球の節電額」を正解できる子できない子の家庭の差
2025年3月17日(月)10時16分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_
※本稿は、『プレジデントFamily2025春号』の一部を再編集したものです。
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■成果につながる家庭学習スケジュール
勉強スケジュールのポイントは、「無理なく」「具体的に」です。「来週の授業までにちゃんとやっておきなさい」などと言われても、なかなか子供は取りかかれない。それよりは、「毎朝、計算トレーニングを10問やろう」とか、「1週間で漢字を20個覚えるなら、1日三つ覚えればいいね」などと、やる内容を具体的に示してやってください。
『プレジデントFamily2025春号』(プレジデント社)
親がスケジュールを立てると、すべてをやらせようとしがちですが、最初から完璧は求めないこと。早いうちから過度な負荷をかけて、勉強にネガティブなイメージをつけてしまうのはNG。前向きな気持ちで学ぶほうが学習効果も高いはずです。秋以降になると中学受験のカリキュラムは学習量がグンと増えていきます。子供は半年でとても成長します。集中力も上がるので、スピードも上がってできる量も増えていきます。
中学受験は短距離走ではなく、長距離の勝負。春のうちからがんばりすぎるのではなく、お子さんのペースで学習習慣をつけることを大切にしてほしいと思います。「がんばれば早く終わらせられる!」と子供が思うくらいがいいと思います。
■ゲームやスマホは禁止すべきか
もしゲームやスマホを楽しむことで勉強をがんばれるのなら、完全に禁止するよりは、約束をして使わせるのがおすすめです。
東北大学の研究によると、「1日のスマホ使用時間」と「学力」の関係を調べたところ、「まったく使わない子」よりも「1時間以内で使っている子」のほうが学力が高かったのです。1時間以上では長く使うほど学力が落ちています。1時間以内に終える子は、セルフコントロールができている子ということなのでしょう。
スマホを使うときはリビングでやらせる、勉強中は周りに置かないなど、メリハリをつける工夫も必要です。
写真=iStock.com/Hakase_
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上位クラスの家庭では、スマホはもちろんテレビも見せていないという場合もあります。その一方で、クイズ番組などを親子で楽しんでいたというお子さんも多い。テレビもスマホもそれ自体が悪者ではありません。親も子も納得して無理せず続けられるやり方がいいでしょう。
■教材やノートは捨てていいの?
たまっていく教材やノート、資料などは、「後で見返す」ことは実際はあまりありません。整理するのが大変なら、段ボールなどに順番に入れておくのでもよいと思います。捨ててしまってもよいのですが、受験直前に、取っておいた教材を積んでみると、「これまでこんなにがんばった」ということが子供にもわかりやすく伝わるので自信になると思います。
また、テキストには、どんどん書きこませてしまっていいと思います。「テキストの問題をノートに写して解く」という作業は小学生にとってはけっこうな負担です。写し間違えもあるし、時間ももったいない。
そのとき、できなかった問題には、問題番号にチェックをつけておくこと。見直すときに間違えた問題だけを効率的に学ぶことができます。
■計算では「わり算」がポイント
まずは計算です。ただ、先取りするというよりは、今の学年の勉強がきちんとわかっているかが大切です。新4年生なら、3年生までに習った計算が素早く正確に解けるでしょうか。
塾に入ると単元はどんどん進んでいくので、計算をゆっくり授業でやる時間はあまりありません。計算が苦手な子は、毎日少しずつでもいいので習慣として計算練習をしましょう。計算力は算数のベースの力となります。
要注意なポイントは「わり算」がしっかり身についているかです。わり算は3年生で習いますが、きちんと意味を理解できていないままの子が結構いるのです。
実はわり算には2種類あります。
・100個のアメを5人で分けたらひとりあたりいくつになりますか
・100個のアメを5個ずつ分けたら何人に分けられますか
前の例では、「全体を等分する」という操作、後の例では「全体にある量がいくつ含まれるか」を求める作業です。この二つの場合にわり算を使うのだという感覚が身についていれば、例えば「100kmを2時間で走ると時速は何kmですか」と問われたときに、「100kmを2等分すればいい」から100÷2だ、といったように正しく式が立てられるのです。文章題では、わり算の理解が非常に大切になります。
慣れの問題なので、計算練習をこなして理解できればいいですし、苦手なようだったら実際に「52枚のトランプを3人で分ける(52÷3=17枚あまり1)」「100個のアメを5個ずつ袋に入れたら何袋できるかやってみる(100÷5=20袋)」など、日常のなかで取り入れてみればいいと思います。
■マンガを読むことも国語力につながる
国語については、入塾前にやっておいてほしいのはやはり音読です。学年で使っている教科書レベルの文章をつまずかずに読めるようになっているといいですね。塾で扱う文章はさらに難しいものとなります。もし、スムーズに読めていないようなら、毎日少しの時間でもいいので教科書の音読をすることをおすすめします。
出典=『プレジデントFamily2025春号』
もちろん、慣れてきたら塾の文章を使って音読をするのでも大丈夫です。
国語が得意なお子さんは、好きな本をどんどん読めばいいでしょう。親が読ませたい本と子供が読みたい本は違うかもしれませんが、本人が好きな本でいいと思います。
また私はマンガを読むこともおすすめしています。意外に難しい言葉を覚えることもできます。また絵があることで、心情表現などが理解しやすいのもメリットだと思います。
■「北に行くと寒くなる」も小学生にはわからない
社会で、入塾時の準備としてやっておくと差がつくのは「都道府県」を覚えることです。もしかしたら、中学受験の準備で実際に一番役に立つかもしれません。
小学生は親が思う以上に都道府県の名前や位置を知りません。知っているのは北海道と沖縄くらいかもしれません。宮城県や宮崎県が東京から北にあるのか南にあるのかもわからない子がほとんどだと思います。大人にとっては当たり前の、「日本列島を北に行くと寒くなって南に行くと暖かくなる」「日本海側は冬に雪が多い」などといった、大枠の知識もないのです。
多くの塾では、4年生のカリキュラムは地理から始まります。そんななか、都道府県名、位置を知っているだけで大きなアドバンテージです。それは歴史などの学びにもつながります。
おすすめは都道府県の形のパズルで遊びながら覚えてしまうことです。
入試では、県の形などが出題されることもありますが、パズルで遊んでいると、子供は大人よりも早く覚えてしまうはずです。
基本的なことでいいので、「一番北にあるのは北海道だね。ニュースでさっぽろ雪まつりをやっていたけれど寒いところだよね。うちの牛乳は北海道産だよ」などと、一緒に都道府県庁所在地と主な特産物についても覚えられればなおよいでしょう。
■桜蔭が「LED電球への交換」を出題したわけ
理科では、季節感を大切にしてほしいと思います。
散歩をしているときに、「梅の季節が終わって桜が咲いたね」「タンポポやハルジオンがきれいだね」など、季節の植物について触れてやるだけでもいいのです。ちょっと意識を向けてやると、子供は勝手に植物や虫を見つけるようになります。
生き物だけでなく、例えば気象。梅雨に連日雨が降ったり、夏の終わりに台風が来たりするのはなぜだろう、と興味を持てたら素晴らしいです。
日常のなかで、自然の不思議を親子で楽しんでください。
また、理科では、家庭での生活も大切にしてほしいです。
撮影=プレジデントオンライン編集部
難関女子校の桜蔭中学の2025年度入試の理科では、電気の問題で、蛍光灯をLED電球にかえると電気料金が何円安くなるかを問う問題がでました。
同じく問題IIIでは、ダイズの種子である大豆に由来するさまざまな食品について出題しています。例えば、
「乾燥大豆をフライパンで炒いってフードプロセッサーで粉にすると(あ)ができます」「夏によく食べられる(え)はダイズの種子を成熟する前に収しゅう穫かくしたものです」とありますが、おわかりでしょうか。
LED電球を見たことがなかったり、フードプロセッサーを家庭で使ったりしたことがない子は、ちょっと戸惑うかもしれません。このように、生活のなかの場面を出題して、教科で習う知識を応用できるかを問う問題もこのところ増えているのです。
(プレジデントFamily編集部 本誌編集部=構成)