なぜ三菱商事の平均年収は2000万円を超えたのか…平均年収が高い「全国トップ500社」ランキング2024

2025年3月17日(月)9時45分 プレジデント社

プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2024年度版)」を作成した。調査対象会社3744社のうち、平均年収が1000万円を超える企業は154社で、前回から14社増えた。ランキングの1位は、2277.6万円のM&Aキャピタルパートナーズだった。今回は「全国トップ500社」をお届けする——。(第1回)

■トップ500社の平均年収は約993万円


プレジデントオンラインは、全上場企業の「平均年収ランキング(2024年度版)」を作成した。基にしたデータは直近の年次決算期における有価証券報告書(2023年10月期〜2024年9月期)。データ抽出では、経済・金融データサービスの株式会社アイ・エヌ情報センターの協力を得た。


調査対象会社は、上場企業のうち単体の従業員数が10人以下の企業や、平均賃金の発表がない企業などを除いた3744社。その平均年収は652.2万円で前年より20.6万円増え、賃金水準の底上げが進んでいることが鮮明になった。


ランキング500位までの従業員平均年収額は993.5万円で前年から3.5万円の微減となったが、1000万円を超える企業は154社と前年から14社増加した。ランキングの1位は2277.6万円のM&Aキャピタルパートナーズで、6年連続のトップとなった。全体としては商社や金融系企業の躍進が目立つ結果となった。


■M&Aキャピタルパートナーズが6連覇


「平均年収日本一」に輝いたM&Aキャピタルパートナーズは、6年連続でトップの座を守った。同社の過去5期の推移は「2269.9万円→2688.4万円→3161.3万円→2478万円→2277.6万円」となっている。今年は前年比200.4万円の減少となったものの、依然として2200万円台の高水準を維持している。


同社はM&Aの仲介を手掛けている。M&Aの取引は1件あたりの金額が非常に大きく、手数料も成功報酬型のため、業界の給与水準は高い。取引件数や成約に結びついた場合のインセンティブで年収が大きく左右される。


広報担当者は「当社は創業以来、業績変動の成果報酬型を採用しており、2024年9月期は前期から業績がやや下がったこともあり、微減となった」と説明している。


今後の国内企業のM&Aの動向については、「2024年はM&Aの件数が過去最多となった。新日鉄によるUSスチール買収計画、ニデック・牧野フライスのTOB、など買収提案が活発化した。グループ企業のレコフのリサーチ部によると、2025年のM&A件数はさらに増加となる可能性を示唆している」との見通しを示した。


■三菱商事は前年に続き大幅アップ


2位には三菱商事(2090.9万円)が入り、前年比151.6万円の大幅増となった。さらに5位に三井物産(1899.9万円)、8位に住友商事(1758.7万円)、9位に伊藤忠商事(1753.6万円)と、大手商社4社がトップ10入りを果たした。


三菱商事に増加の要因を聞いたところ、「社員約5500人に対し、平均6.5%の基本給アップ(ベア)を実施した。物価上昇に対応するとともに、市場競争力のある報酬水準を実現するために引き上げたもの」と積極的な賃上げ策を挙げた。


また「会社の業績に応じて支払う報酬の金額が増加したため。業績(純利益)が9375億円(21年度)から1兆1807億円(22年度)に伸長したことに伴う報酬増」と好業績に基づく還元も理由としている。今後については「自社業績を従業員への報酬という形で還元し、社員の頑張りに報いていきたい」との意向を示した。


業種別に見ると商社、金融、IT・通信業界の企業が上位を占める傾向が続いている。


金融では、SOMPOホールディングス(1455.0万円)や東京海上ホールディングス(1390.2万円)など、保険業界が堅調だった。野村ホールディングス(1408.9万円)を筆頭に証券系企業も上位にランクインしている。


IT・通信業界では、ジャストシステム(1428.2万円)やソフトバンクグループ(1360.1万円)など、主要企業が1300万円以上の年収水準を維持している。


製造業では、レーザーテック(1638.4万円)や東京エレクトロン(1272.7万円)など、生成AIブームを追い風に半導体関連企業が高水準を維持する構図が続いている。


■フジテレビ親会社は1621万円


ランキング上位で目立つのがホールディングス(HD)企業だ。HD企業は複数の株式会社を傘下に持つ持株会社を中心としたグループ経営を行う企業形態だ。一般的に従業員数が少なく、役職者や幹部クラスが中心となるため、平均年収が高くなりやすい。


年明けから世間を騒がしているフジ・メディア・ホールディングス(16位:1621.0万円、前年比41.0万円増)も持株会社特有の傾向を示している。同社は一昨年まで3期連続で1000万円台を割り込んでいた(775.6万円→801.2万円→866.6万円)。


しかし2023年は1500万円台に大きく上昇した。この急上昇の主な要因は、平均年収算出の対象社員が大幅に入れ替わったことにある。平均勤続年数が前年の7.1年から10年以上も伸びて17.9年になり、年収が高いメンバー構成になったことで1500万円台に乗った。今年もその流れで続伸しており、9名いる役員の報酬の総額は2億7300万円となっている。


だが来年は中核のフジテレビの広告収入などが大幅に減少することから、年収ダウンは避けられなさそうだ。


■414.5万円も年収が上がった企業


宮地エンジニアリンググループ(31位:1374.2万円、前年比414.5万円増)もHD企業で、今年大幅増となった企業のひとつである。同社は1908年創業の宮地鐵工所を母体とし、橋梁、建築、沿岸構造物などの社会インフラの建設、保全、更新工事を手がけている。東京タワー、東京ゲートブリッジ、明石海峡大橋など、国内外で著名なプロジェクトに参画してきた。2003年に持株会社化した。


広報担当者は「当社は主要な事業会社2社の経営を管理するホールディングス会社で、その事業の性質上、社員は事業会社の上級役職者が出向または兼務という形で運営に携わっているため、上級役職者の人事異動等に伴い平均給与が大きく変動する。また、世の中の情勢を踏まえた賃金のベースアップも実施している。それらの要因が複合的に合わさった結果」と説明している。


こうした傾向は他のホールディングス企業にも見られる。たとえば、従業員13人ながら平均年齢60歳のTSIホールディングスも上位に名を連ねている(平均年収は1352.8万円)。同社は「NANO universe」などのブランドを展開するアパレル大手。組織構造が年収水準に大きく影響していることがわかる。ちなみに連結会社の従業員数は4102人だった。


■3・11をきっかけに創業した会社の躍進


今回のランキングでは、大幅な年収の増減を示した企業がいくつか見られた。


霞ヶ関キャピタル(11位:1677.7万円、前年比270.7万円増)も大幅な上昇を見せた企業のひとつである。同社は2011年に東日本大震災で被災したショッピングセンターを再生するために創業された。その後、物流施設やホテルなどの不動産開発を積極的に手掛け、業績を伸ばしている。


大幅増について同社は「プライムへの市場替え以降、優秀な幹部候補人材の採用が増えており、平均年収が上昇している。業績に応じた年2回の昇給と賞与に加え、高いパフォーマンスを上げている者については適正な評価の下、RS(譲渡制限付株式報酬)を付与しており、この制限解除の期日が到来した」と回答している。RSは一定期間の譲渡(売却)が制限された株式を役員や従業員に交付する報酬制度だ。


■501.5万円も年収が減ったコンサル


サンバイオ(18位:1596.6万円、前年比406.9万円増)は再生医療などの創薬スタートアップ。前年と比較して400万円以上という大幅な上昇を記録した。


平均年齢が47.8歳と比較的高く、専門性と経験を備えた人材を高く評価する姿勢がうかがえる。高度な研究開発と専門人材の確保が必要なバイオテクノロジー業界ならではの特徴ともいえるだろう。


一方、ドリームインキュベータ(44位:1274.5万円、前年比501.5万円減)は今回トップ500社の中で最も大きな減少幅となった。


同社はこの大幅減少について、「前年(2023年3月期)の有価証券報告書に記載の平均年間給与は、投資事業の収益に伴う特別賞与を含んでおり大幅に増加したため」と説明している。ドリームインキュベータはボストン・コンサルティング・グループの日本法人の社長を務めた堀紘一氏が2000年6月に設立したコンサルティングファームだ。


(プレジデントオンライン編集部 図版作成=大橋昭一)

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