"He is living in Nagoya now."の微妙なニュアンスが理解できるか…意外と知らない「現在進行形」の本質
2025年3月17日(月)9時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Marina Luiz
※本稿は、渡辺雄太『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/Marina Luiz
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■現在進行形が「未来」の意味を持つことも
現在進行形be Vingと聞いて、どんなイメージを抱きますか? 「いま〜している」という和訳を思い浮かべる人が大半だと思います。たしかに、多くの英文はそれで理解できます。
He is playing tennis now.
「彼はいまテニスをしている」
しかし、次の例文はどうでしょう。「未来」の意味で使われています。なぜ現在進行形が「未来」の意味を持つのでしょう。willなどの「未来」の表現との違いはどこにあるのでしょう。
I am flying to New York next week.
「来週NYに行く予定だ」
また、現在進行形と相性の悪い動詞がいくつか存在します。know「知っている」、resemble「似ている」、have「持っている」などです。
△She is having a car.
「彼女は車を1台持っている」
さらに、下記の英文は、「バスが停車している」ではなく、「バスが停車しつつある」という意味で解釈するのが一般的です。
The bus is stopping.
「バスが停車しつつある」
現在進行形のさまざまな用法は、どのように理解すればよいのでしょうか。
■現在進行形のもとの形はbe on Ving だった
現在進行形は、be on Vingがもとの形です。「〜している状態に接している」が原義です。例えば、「テニスをしている状態に接している」なら、「テニスをしている途中」ということです。そのため、現在進行形be Vingは「途中」を本質に持つのです。
onが「途中」につながる感覚は、現代英語にも見られます。on sale「売りに出されて」、on fire「燃えている」、on strike「ストライキ中で」などは、次のように解釈することができます。
● on sale「売りに出されて」
→販売の状態に接している/販売の途中
● on fire「燃えている」
→燃える状態に接している/燃えている途中
● on strike「ストライキ中で」
→ストライキの状態に接している/ストライキの途中
「途中」が本質の現在進行形ですが、be on Vingのonは、音が弱くなり消失しました。その結果、現在進行形はbe Vingという現代英語の形になりました。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
次の例文を見てみましょう。「テニスをしている=テニスをしている途中だ」という意味に注目してください。
He is playing tennis now.
「彼はいまテニスをしている」(途中)
「テニスをしている途中だ」は見方を変えれば、「テニスを一時的にしている」と、「一時的な継続/躍動感」にもつながります。ボールを打つ/走るという行為を「一時的に」「生き生きとした躍動感」を持って行っているという感覚です。現在進行形には、一時的な動作の途中を切り取っている感覚があります。
テニスの継続が10分なのか、1時間なのか、それはわかりません。いずれにせよ、動作の途中を一時的な時間幅で切り取っているので、現在進行形は躍動感を帯びることが多いのです。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
現在進行形を解釈する際は、「〜している」という和訳だけをあてて満足してはいけません。「途中」という中心イメージから広がる、「一時的な継続/躍動感」という感覚を捉えることが大切です。
■現在進行形と相性の良くない動詞
「一時的な継続/躍動感」は、長時間続く動詞とは相性が良くありません。例えば、下記のような単語です。どれもふつうは、数週間〜数年の時間幅を持つ動詞です。
現在進行形と相性の良くない動詞まとめ
● believe「〜を信じる」
● belong to「〜に所属する/〜のものだ」
● contain「〜を含む」
● have/own/possess「〜を持っている/所有している」
● know「〜を知っている」
● like/love「〜が好き/〜を愛している」
● live「住んでいる」
● remember「〜を覚えている」
● resemble「〜に似ている」
● understand「〜を理解する」
● want「〜が欲しい」
例えばknowという単語を確認してみましょう。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
「彼を知っている」という状態は、相当なことがない限り、しばらく続きますね。そのうち忘れてしまうことはあるかもしれません。それでも「知っている」という状態はある程度の期間継続されるはずです。
knowという動詞が持つ幅の長さが、現在進行形の「一時的な継続/躍動感」という意味とぶつかってしまうのです。そのため、knowは現在進行形にならないのです。
■「have=食べる」なら進行形にできる
have「持っている」は注意が必要です。車でもペンでも、一度購入したら数カ月〜数年所有するのがふつうです。そのため、have「持っている」は現在進行形にしません。
ただし、「食べる」という意味ならhaveを現在進行形にすることが可能です。食事をとるという行為は一時的なものだからです。
He is having lunch now.
「彼はいま昼食をとっている」(一時的な継続/躍動感)
■「長時間続く動詞」をあえて現在進行形にする場合がある
例外はまだあります。先ほど挙げた長時間続く動詞でも、「一時的な継続/躍動感」を強調したい場合、あえて現在進行形にすることがあります。
その代表がlive「住んでいる」です。通常、liveを現在進行形にすることはありません。どこかに「住む」という動詞は、長時間続くことを前提としているからです。「東京に10分住んで、住むのをやめて、次は大阪に2時間住んで、今度は名古屋に……」という人は、ふつうはいませんね。したがって、「住んでいる」は現在形の使用が一般的です。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
渡辺雄太『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
ただ、「一時的に住んでいる」ということを強調するために、liveを現在進行形にすることがあるのです。例文を見てみましょう。
He is living in Nagoya now.
「(一時的に)彼は名古屋に住んでいる」(一時的な継続/躍動感)
この例文からは、「名古屋に住んでいるのは一時的なコトなのだ」という雰囲気が出ています。少し長めの出張なのかもしれませんし、すぐに引っ越すことがわかっているのかもしれません。
いずれにせよ、「数週間〜数カ月の間、一時的に住んでいるのだ」という気持ちを前面に押し出した表現となっています。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
また、be動詞もあえて進行形にすることで、特別な効果を出すことができます。
He is nice.
「(いつも)彼は親切だ」
He is being nice.
「(いまだけ)彼は親切だ」(一時的な継続/躍動感)
現在形を使ったHe is nice.は、広がりのある時間幅で「彼は親切だ」と述べています。いつも親切に振る舞っているという、彼の状態や性質を述べています。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
一方、He is being nice.は、be動詞をあえて進行形にしています。状態を表すbe動詞が進行形になることで、「いまだけ一時的に」という意味に変化しています。
見方を変えれば、「いつもは親切じゃない」ということです。機嫌がいいのか、何か狙いがあるのか、理由はわかりません。いずれにせよ、「一時的に親切に振る舞っているのだ」という響きのある表現に変化しているのです。
出所=『英文法は語源から学べ!』(SBクリエイティブ)
これまで見てきた通り、現在進行形の意味の中心は「途中」「一時的な継続/躍動感」です。現在進行形の用法は、ここからさまざまな広がりを見せました。
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渡辺 雄太(わたなべ・ゆうた)
マナビメイト代表
県立山形南高校を卒業後、1年の浪人を経て東京大学へ進学。大学4年時の夏には、学内プログラムに選抜されUC Berkeley心理学研究室に留学するが、エネルギー企業への就職を選択。国際石油資本や海外の国営企業を相手に、年間数百億円規模のLNG取引の交渉を担当。その後、浪人時代の経験から、教育業界へ身を投じる。以降、首都圏にて、東大/医学部等を志望する最難関中高一貫校の生徒千人以上に英語を指導。そのかたわらで「N先生」のネーミングで『死ぬほどわかる英文法ブログ』を開設し、最高22万PV/月を達成。一般読者からは「理解が深まる」「面白すぎて周りの友人に宣伝した」との声多数。クオリティの高さから、プロ講師の間でもしばしば言及される存在となる。Udemyでは30以上の講座を展開し、その大半がUdemy Business(上位数%の講座)に選出。わずか1年で上位人気講師に名を連ねる。受講者数はのべ8万人を突破。語源やイメージを大切にした講座は、「深いのにわかりやすい」「学生時代に受講したかった」と好評。「N先生」は学生時代の「なべた」というあだ名から。TOEIC満点/英検1級。
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(マナビメイト代表 渡辺 雄太)