塾の短期集中講座に行くより効果的…自信をなくした中学受験生が見違える「書店で買える教材」の名前
2025年3月18日(火)16時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/koumaru
※本稿は、高梨裕介『合格したいなら「中学受験の常識」を捨てよ』(日本能率協会マネジメントセンター)の一部を再編集したものです。
写真=iStock.com/koumaru
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■春休みや夏休みの短期集中講座のデメリット
×短期集中講座を受ければ成績が上がる
○短期集中講座は塾都合の営利目的講座
春休みや夏休みになると、多くの塾で短期集中講座が実施されます。
しかし、短期集中講座の受講は、実はまったくおすすめできません。
これらの集中講座のデメリットは二つあります。
一つ目は、長時間拘束されて暗記や復習の時間がまったくなくなり、成績がさらに下がってしまうことです。夏季講習などの短期講習では、たくさんの講座が用意され、塾の先生からあれもこれも受講するように推奨されると思います。そして、みっちりとしたスケジュールで講習を受けた結果、休み明けに成績がむしろ下がってしまうケースが見られます。
成績が下がってしまう理由は単純で、「授業を聞くこと」に時間を取られてしまい、基礎の暗記や復習に手が回らなくなってしまうからです。
基礎の習得が疎かになった結果、どんどん基礎が抜けてしまい、成績がさらに下がってしまうのです。
■大切なのは基礎の徹底に集中すること
もう一つのデメリットは、勉強のリズムを崩しやすい点です。
短期集中講座は、その名の通り、短い期間にたくさんのことを詰め込みます。冷静に考えると、そんな短期間にたくさんのことを習得できるわけがありません。
また、多くの宿題が出されてしまい、夜更かしをしてなんとか宿題を終わらせようとした結果、生活リズムが乱れて体調を崩す恐れもあります。
お子さんの成績が思うように伸びないとき、焦る気持ちはよく分かります。しかし、特効薬を求めて短期講習をたくさん受けさせるのは、絶対にやめておくべきです。
繰り返しますが、成績を伸ばす唯一の方法は、基礎の習得と暗記です。短期間で成績が伸びる魔法のような講座なんてありません。塾の宣伝文句に流されず、基礎の徹底に集中することが大切です。
■「これを受ければ合格できる」特効薬は存在しない
×志望校特訓講座を受ければ逆転合格できる
○地道に基礎を固めていくしか合格には近づけない
6年生の後半になると、各塾では志望校別に受験対策を行う志望校特訓講座が実施されます。しかし、これも短期集中講座と構造は同じ。一見効果がありそうに見えて、実は塾側の都合で設定されているに過ぎません。
志望校特訓というネーミング、しかも、入試本番の約半年前から実施されることもあり、「この講座を受ければ、いまからでも志望校に合格できるかもしれない」と期待したくなる気持ちは分かります。しかし、これまで志望校の合格レベルに全然達していなかった子が、わずか数回の志望校特訓講座を受けただけで合格してしまったら、それまでなんのために塾に通っていたのだ、という話になってしまいます。
つまり、そんな都合のいい特効薬など存在しないのです。
私はこの状況を「二次災害」と言っています。
一般的に中学受験の勉強は、大手進学塾の受験コースがスタートする小学4年生から始まります。
しかし、塾の授業で扱う内容は難しい問題ばかりで、基礎には触れません。もともと優秀な子であればそれでもいいのですが、多くの子は基礎が身についていない状態で、難しい問題ばかりをさせられるという、上滑りな勉強をしてしまうことになります。
写真=iStock.com/Hakase_
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Hakase_
■短期集中型講座、過去問演習、志望校特訓講座…
すると当然、模試でぼろぼろと点を落とします。
そこで、答案の中身をしっかり分析して、基礎の抜けに気づけば一次災害で終わることができますが、テストの点数や偏差値といった数字にだけしか目がいかないと、「塾の授業についていけるように」「塾のクラスを上げるために」と、さらに上滑りな勉強を加速させてしまうのです。そして、ますます成績を落としてしまう……。
そこにうまい具合に用意されているのが、数々の特別講座です。
まず、春休みや夏休みなどの長期休みに「短期集中型講座」が実施されます。普段の授業についていけなくても、この期間にこれまで学習した範囲の復習をやりますから、「いまからでも挽回できますよ」と特効薬(に見えるもの)を用意する。
とくに6年生の夏休みは「中学受験の天王山」と言って、ここでの頑張りが合否を決めると受験生の親子を煽ります。そこでみんな一生懸命勉強をするのですが、やっぱり基礎が抜けているので、成績は上がらない。
そして、9月に入ると過去問演習が始まり、難しい問題の対策に取り組んでいる間に、さらに基礎が抜け落ちていく。このように、どんどん被害が大きくなってしまうのです。これが、二次災害。
そして、極めつけが、「志望校特訓講座」です。
入試本番前の大事な時期、本来であればもっとも基礎の復習に力を入れたいときに、「これを受ければ逆転合格できるかもしれない」と信じて、解けなくてもいい難しい問題に取り組むという、いちばんやってはいけないことをやってしまうのです。
こうして、蓋を開けてみたら、3年間一生懸命塾に通ったのに思うように成績が伸びず、不合格になってしまうのです。
■塾は中学受験に本当に不可欠なのか
×中学受験するなら塾が不可欠
○中学受験は教科書ワークで合格できる
さて、本書(『合格したいなら「中学受験の常識」を捨てよ』)では「中学受験には不可欠」と言われている塾が、本当に必要なのかどうか考えるきっかけになっていただけたらと思い、大手進学塾のリアルをお伝えしています。今後、中学受験をお考えのご家庭には、ご参考になるのではないでしょうか。
だけど、いますでに塾生活がスタートしてしまっているご家庭は、「なるほど、そうなんだな」と頭では理解できても、「そうは言っても、まわりがみんな塾通いをしているなかで、うちの子だけ家庭で受験対策を進めていくことなんて、本当にできるのかしら……」と、なかなか一歩が踏み切れないと思います。
ただ、現状うまくいっていないと感じているのなら、やり方を変えてみるという選択肢は持っていたほうがいいと思います。
■騙されたと思って、教科書ワークを一度使ってほしい
まずは騙されたと思って、教科書ワークを一度使ってみることをおすすめします。教科書ワークを使ってみると、教科書ワークですら習得できていない問題がたくさんあることに気がつくはずです。
そして、教科書ワークを繰り返し演習してみてください。教科書ワークを繰り返しているうちに基礎の習得度が上がり、どんどん成績が伸びていくはずです。
こうなると、お子さんも勉強が楽しくなり、自主的に勉強するようになります。親御さんとしても子どもの勉強の管理をする必要がなくなり、自然と成績も伸びるので気持ちがずっとラクになるはずです。
高梨裕介『合格したいなら「中学受験の常識」を捨てよ』(日本能率協会マネジメントセンター)
ここでの親御さんのポイントは、たくさん褒めてあげることです。大好きなお父さん、お母さんに褒められて嬉しくない子どもなんていません。嬉しくて、誇らしげな気持ちになって「よし、お父さんとお母さんをもっと驚かせてやるぞ」と張り切るのが子どもというもの。
こうなったらもう安心、好循環がどんどん回り始めていきます。
このように、教科書ワークを使用することで、これまで抱えていたさまざまな悩みが一気に解決するご家庭がたくさんあります。
ぜひ試してみてください。
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高梨 裕介(たかなし・ゆうすけ)
医学部予備校エースアカデミー代表、医師
京都府出身。中学受験にて関西最難関の灘、東大寺学園、洛南、洛星中学に合格。高校時代は英数国にて全国模試10位以内。現役で大阪医科薬科大学に合格。「教育から医療をよくする」を理念として、初期研修修了後にエースアカデミーを創業。これまでに450名以上の医学部合格者を輩出。著書に『勉強法の大原則』『医学部受験バイブル 現役医大生からの贈り物』(幻冬舎)など。
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(医学部予備校エースアカデミー代表、医師 高梨 裕介)