正社員の採用予定、3年ぶりに低下 賃上げや原材料高などが採用抑制の要因にも インバウンド好調で「旅館・ホテル」の8割超が正規・非正規採用予定

2024年3月22日(金)17時40分 PR TIMES

2024年度の雇用動向に関する企業の意識調査

2023年の平均有効求人倍率は、社会・経済活動が新型コロナ禍から回復したことにともない、前年(1.28倍)から0.03ポイント増の1.31倍と2年連続で上昇した。原材料価格の高騰などの影響もありコロナ前(2019年、1.60倍)に比べると十分に回復している状態とはいえないが、大きな落ち込みもなく推移している。

帝国データバンクが実施した調査では、2024年2月における人手不足企業の割合は「正社員」が18カ月連続で5割、非正社員は3割と、いずれも高水準で推移している。物価の上昇と人手不足の状況がさらに長期化すれば、企業は厳しい判断を迫られることになろう。

そこで、帝国データバンクは、2024年度の雇用動向(採用)に関する企業の意識について調査を実施した。本調査は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行った。

<調査結果(要旨)>
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2024年度、正社員の採用予定がある企業は61.5%、3年連続で6割を超えるも3年ぶりに低下。業種別では「旅館・ホテル」が8割でトップ

非正社員の採用予定がある企業は45.9%、3年ぶりに低下。 業種別では飲食店やホテルなど「個人消費関連」で高く

4割近くの企業で「女性」や「外国人」など多様な人材の採用を強化予定


※ 調査期間は2024年2月15日〜2月29日、調査対象は全国2万7,443社で、有効回答企業数は1万1,267社(回答率41.1%)。なお、雇用動向に関する調査は2005年2月以降、毎年実施し、今回で20回目
※ 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している
※調査機関:株式会社帝国データバンク


正社員の採用予定がある企業は61.5%。3年連続で6割を超えるも3年ぶりに前年を下回る



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2024年度(2024年4月〜2025年3月入社)の正社員の採用状況について尋ねたところ、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)と考えている企業は前回調査(2023年2月実施)から1.5ポイント減の61.5%となった。3年連続で6割を超えたものの、3年ぶりに前年を下回った。また、採用予定がある企業の内訳は、採用人数が「増加する」企業が同2.0ポイント減の23.7%だった一方、「減少する」企業は同1.5ポイント増の8.6%となり、雇用動向は前年度までの勢いがやや鈍化した。
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『採用予定がある』企業からは、「運転職の平均年齢が上昇しているため、定員確保に苦慮している新卒・中途ともに、女性ドライバーの雇用や定年退職者の継続雇用に力を注いでいる」(運輸・倉庫)や「働き方改革などで労働時間の減少や休日を増やす傾向があり、人員を多く採用せねばならない」(医療・福祉・保健衛生)といった声が聞かれた。

他方、『採用予定はない』企業からは、「社員募集をしても応募がなく、中小企業の雇用は難しくなっている」(飲食料品卸売)といった声が複数あがった。
また、「人件費がかさんでいくのに、販売価格は大して上がっておらず、雇用はしたいがしにくい状況に陥りつつある」(飲食料品・飼料製造)や「新規で人を採用するだけの企業体力がない」(紙類・文具・書籍卸売)のように、厳しい経営状態から採用を控えざるを得ない様子もみられた。


正社員『採用予定がある』、「旅館・ホテル」が8割でトップ
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規模別に正社員の『採用予定がある』割合をみると、「大企業」は84.9%と全体(61.5%)を大幅に上回った。一方で、「中小企業」は57.5%、うち「小規模企業」は39.9%となり、企業規模が小さいほど割合が低くなる傾向がみられる。

業界別に正社員の『採用予定がある』割合をみると、「2024年問題」が懸念されている『運輸・倉庫』が69.7%で最も高く、同様に人手不足が深刻化している『建設』のほか、『サービス』(ともに66.6%)も7割近くで続いた。

さらに細かい業種でみると、コロナの落ち着きによる人流の増加やインバウンドの好調で人手不足感が高まる「旅館・ホテル」が8割にのぼった。「2024年問題」が懸念される「医療・福祉・保健衛生」(79.2%)や「人材派遣・紹介」(78.0%)も8割に迫り、ITエンジニア不足が顕著な「情報サービス」(73.3%)も7割台となった。また、「人材派遣・紹介」では採用が「増加する」企業は4割を超えていた。


非正社員の採用予定がある企業は45.9%、3年ぶりに低下
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2024年度(2024年4月〜2025年3月入社)の非正社員の採用状況について尋ねたところ、『採用予定がある』(「増加する」「変わらない」「減少する」の合計)企業は45.9%(前年度比1.4ポイント減)と3年ぶりに低下した。
コロナ前の2018年度に52.4%の高い水準にあったが、2021年度には36.8%にまで低下した。その後は需要の回復とともに上向いてきたが、ここにきてペースダウンした。

一方、『採用予定はない』企業は同1.2ポイント増の40.4%となり、2年ぶりに4割を超えた。
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『採用予定がある』企業からは、「インバウンドが戻りつつあるなかで、受け入れ施設としてはそれに対応していく必要性を感じている」(旅館・ホテル)や「非正規パートタイマーの人手不足感が強い。行政には年収106万円の壁の撤廃を前向きに検討してもらいたい」(飲食料品小売)などの声が聞かれた。

一方、『採用予定はない』企業からは「客先のアパレル関係、百貨店およびスーパーの衣料品が回復しない限り、新規雇用を考えることは難しい」(繊維・繊維製品・服飾品製造)といった厳しい声があがっていた。


非正社員『採用予定がある』割合、飲食店やホテルなど「個人消費関連」で高く
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規模別に非正社員の『採用予定がある』割合をみると正社員と同様に企業規模が小さいほど割合が低くなっている。業界別では、『運輸・倉庫』が54.7%で最も高く、『サービス』(54.0%)、『金融』(52.6%)なども5割台で続いた。

細かい業種別では「飲食店」(88.1%)や「旅館・ホテル」(84.2%)といった個人消費関連の業種で『採用予定がある』割合が高い傾向となっている。

なかでも、「飲食店」では採用人数が「増加する」企業が38.5%と、全体(11.9%)を26.6ポイント上回った。割合は前年より低下したが、インバウンドを含め人流の増加への対応で、採用が活発となっているとみられる。


4割近くの企業で「女性」や「外国人」など多様な人材の採用を強化予定
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将来的な労働力不足に対して多様な人材の活躍が期待されるなか、今後の「外国人」「高齢者」「女性」「障害者」の雇用および採用状況について尋ねたところ、いずれかの人材について『採用予定がある』企業は78.4%だった。なかでも、「採用を拡大」する予定の企業は37.7%と、4割近くの企業で多様な人材の採用を強化する動きがみられる[1]。

『採用予定がある』について人材別にみると、「女性」は72.6%で最も高く、「高齢者」が50.2%で続いた。「外国人」(31.6%)および「障害者」(30.4%)は3割台となった。また、「採用を拡大」企業についても「女性」(19.4%)が最も高かった。他方、「外国人」(16.7%)および「障害者」(13.8%)の割合は「高齢者」(10.9%)を上回る結果となり、特に「外国人」は「採用を拡大」する企業の割合が「変わらない」を上回っている。


[1] 多様な人材について「採用を拡大」する企業は、「【現在雇用している】今後も採用する(前年より採用を増やす)」と「【現在雇用していない】今後は採用する」の合計。『採用予定がある 』企業は、「採用を拡大」、「【現在雇用している】今後も採用する(前年と同じ程度)」、「【現在雇用している】今後も採用する(前年より採用を減らす)」の合計




本調査で、2024年度の雇用動向について『採用予定がある』企業は正社員が61.5%、非正社員が45.9%で、高水準ながらともに3年ぶりに低下したことが分かった。

特に中小企業においては、人手不足が深刻化し、採用意向はあるものの、各種コストアップによる収益の悪化で賃上げができず、条件面で大企業に負けてしまう企業も多い。また、物価高騰の影響で経営状態が厳しくそもそも採用を控えるケースも多くみられるほか、「賃上げによるコスト圧迫が大きく、多少採用を絞って賃上げに回すことを検討している」(ソフト受託開発)の声にあるように、賃上げを行うために採用を控える企業も増えていることなどが背景にありそうだ。

業界別にみると、正社員・非正社員ともに2024年問題が懸念されている『運輸・倉庫』で採用を予定している企業の割合が最も高い。また、業種別にみると、「旅館・ホテル」は両雇用形態で採用予定がある企業が8割台にのぼっており、採用意欲が非常に高い水準となっている。

「外国人」「高齢者」「女性」「障害者」のいずれかの人材を採用する予定のある企業は8割近くにのぼり、うち「採用を拡大」する予定の企業は4割近くとなった。企業からは、「超高齢社会がもっと進み、特に地方の企業は高齢者や外国人を雇用しなければ存続が難しくなると思う」(旅館・ホテル)など、多様な人材を活用する必要性を実感する声が聞かれた。

今後、企業業績や収益性の良し悪しによって、人手不足の状況に対して採用の可否が分かれる状態が予想されている。こうしたなか、多様な人材の採用のほか、各種コストの上昇分の販売価格やサービス料金への十分な転嫁も必要不可欠と言える。外国人などの雇用に関する規制緩和や補助金制度などの拡充に加え、中小企業の価格転嫁を支援する制度のさらなる強化など多岐にわたる公的支援が求められよう。

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