価格転嫁率は40.6% 2023年夏から3.0ポイント後退 人件費などの上昇続き、価格転嫁追いつかず

2024年3月22日(金)17時16分 PR TIMES

価格転嫁に関する実態調査(2024年2月)

2024年の春闘において、大企業を中心に多くの企業で昨年を上回る水準の賃上げの流れが生まれている。帝国データバンクの調査 でも、2024年度の従業員の賃上げ率は平均4.16%増と試算し、今後の景気回復には継続的な賃上げが欠かせないとしている。一方で、高めた人件費を適正に商品・サービスへ転嫁することが難しいといった声もあがる。

加えて、長らく続く原材料価格やガソリン、電気代などのエネルギー価格の高止まりは、収益を圧迫し続けており、2023年の物価高倒産は775件発生 。一部の価格転嫁だけでは包括できない状況も生まれていると言えそうだ。

そこで、帝国データバンクは、現在の価格転嫁に関する企業の見解を調査した。本調査は、TDB景気動向調査2024年2月調査とともに行った。

<調査結果(要旨)>
自社の商品・サービスに対しコストの上昇分を『多少なりとも価格転嫁できている』企業は75.0%と7割超となった

他方、「全く価格転嫁できない」企業は12.7%で依然として1割を超える

価格転嫁率は40.6%と前回調査(2023年7月)から3.0ポイント後退し、依然として6割近くが企業負担

業種別の価格転嫁率は、「化学品卸売」(62.4%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(60.6%)などで6割を超えた


※ 調査期間は2024年2月15日〜29日、調査対象は全国2万7,443社で、有効回答企業数は1万1,267社(回答率41.1%)
※ 本調査における詳細データは景気動向オンライン(https://www.tdb-di.com)に掲載している


コスト100円上昇に対する売価への反映は40.6円、昨年7月から価格転嫁率はやや後退
[画像1: https://prtimes.jp/i/43465/836/resize/d43465-836-0ca1a6f04f46fe5828c4-0.png ]

自社の主な商品・サービスにおいて、コストの上昇分を販売価格やサービス料金にどの程度転嫁できているかを尋ねたところ、コストの上昇分に対して『多少なりとも価格転嫁できている』企業は75.0%となった。その内訳をみると、「2割未満」が24.4%で最も高く、「2割以上5割未満」が15.6%、「5割以上8割未満」が17.1%、「8割以上」が13.3%、「10割すべて転嫁できている」企業は4.6%だった。

他方、「全く価格転嫁できない」企業は12.7%となった。前回調査(2023年7月)より0.2ポイント低下したものの、依然として価格転嫁が全くできていない企業が1割を超えている。
[画像2: https://prtimes.jp/i/43465/836/resize/d43465-836-4baf2330e478fb92b9c5-0.png ]

また、コスト上昇分に対する販売価格への転嫁度合いを示す「価格転嫁率[1]」は40.6%となった。これはコストが100円上昇した場合に40.6円しか販売価格に反映できず、残りの約6割を企業が負担することを示している。
企業からは、「材料費の価格転嫁はスムーズにできたが、経費や人件費の価格転嫁ができていない」(機械製造、茨城県)や「ある程度は価格転嫁できたが、エネルギーや原材料の上昇はとどまることを知らず、まったく追いついていない」(飲食料品・飼料製造、愛媛県)といった声があり、価格転嫁ができた企業は増えたものの、前回調査(43.6円)から3.0円分転嫁が後退した。

価格転嫁率は、各選択肢の中央値に各回答者数を乗じ加算したものから全回答者数で除したもの(ただし、「コスト上昇したが、価格転嫁するつもりはない」、「コストは上昇していない」、「分からない」は除く)



サプライチェーン全体に関わる『運輸・倉庫』の価格転嫁率、27.8%と低水準続く
[画像3: https://prtimes.jp/i/43465/836/resize/d43465-836-9bb73935126562a49b55-0.png ]

価格転嫁率を業種別にみると、価格転嫁率が高い主な業種では、「化学品卸売」(62.4%)や「鉄鋼・非鉄・鉱業製品卸売」(60.6%)などで6割を超えた。他方、低い業種では一般病院や老人福祉事業といった「医療・福祉・保健衛生」(13.0%)や、「娯楽サービス」(17.1%)、「金融」(18.2%)などで2割を下回った。

また、サプライチェーン別に価格転嫁の動向をみると、前回調査と比較して、川上・川下業種を問わず価格転嫁率は後退している。そのなかでも、『卸売』と比較し『製造』や『小売』では価格転嫁が進まず厳しい状況がうかがえた。

さらに、サプライチェーン全体に関わる『運輸・倉庫』(27.8%)は価格転嫁の進展がみられるものの、依然として2割台にとどまっており、企業からも「荷主からの二次請け三次請けが普通であり、荷主に対し直接値上げ交渉ができない」(運輸・倉庫、福岡県)といった声が寄せられている。



本調査の結果、自社の商品・サービスのコスト上昇に対して、7割を超える企業で多少なりとも価格転嫁できていることが分かった。

しかし、その価格転嫁率は40.6%と前回から3.0ポイント後退し、依然として企業負担は6割近くにのぼっている。価格転嫁に対する理解は醸成されつつあるものの、原材料価格の高止まりや他社への説明が難しい人件費の高騰などに対し、取引企業との関係上これまで以上に転嫁の実施が難しいことが浮き彫りとなっている。加えて、これ以上の価格転嫁を進めてしまうと、消費者の購買力の低下による景気の低迷につながることも危惧されている。人件費など目に見えにくい単価の上昇分を、いかに見える化して説明するかへと価格転嫁のステージが変わってきたことを示唆している。

そのため、企業には適正な価格転嫁の推進と同時に物価上昇を超える継続した賃上げの実現、政府には減税など消費者の所得増大に資する抜本的な変革が早急に求められている。

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