自動車清掃、空き地調査、物件撮影…稼ぐ主婦のご近所ワーク

3月24日(日)7時0分 NEWSポストセブン

主婦のご近所ワークはスーパーのレジ打ちだけじゃない

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 新年度を前に、自宅近くで空いた時間に働ける“ご近所ワーク”を探している主婦も多いだろう。主婦のパートといえば、スーパーのレジ打ちや飲食店での接客・調理業務などの募集が多いが、近年はそんな“副業的”主婦仕事も多様化が進んでいるという。働く主婦の調査機関「しゅふJOB総合研究所」所長兼「ヒトラボ」編集長の川上敬太郎氏が紹介する。


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 この国の働き方は多様化の方向へと進んでいる。そして、その流れは主婦層の働き方にも少なからず影響を与えている。


 今から10年前、女性ファッション誌が「家族が一番、仕事が二番」というメッセージを世に投げかけて話題になった。決して仕事を蔑ろにするつもりはないのに、目に見えない仕事優先のプレッシャーから、家庭とのバランスをとることに後ろめたさを感じざるを得ない風潮。「家族が一番、仕事が二番」は、家庭との板挟みの中で、100%仕事に向き合うことができていないことに悩む既婚女性たちの共感を得たと言われる。


 働き方が多様化した社会とは、女性が男性に負けないようにバリバリと働く世の中、というイメージに限定されるものではない。多様化とは本来、もっと自由で広い選択肢の中で捉えられるべきものであるはずだ。


 例えば、妻と夫が対等に共働きし、家事もシェアする家庭があっても良い。あるいは、妻のみが働いて家計を支え、夫は専業主夫という家庭があっても良い。人それぞれの価値観・考え方の数だけ違いは存在する。「家族が一番、仕事が二番」もまた、そんな価値観の中の一つに過ぎない。


 だから、そのように仕事と家庭の狭間で思い悩むのではなく、専業主婦として100%主婦業に捧げるというスタンスもまた尊重されてよいはずである。そもそも主婦業自体が尊い役割であり、ハードな仕事だ。


 中には、主婦業を本業とした上で、空いた時間に仕事をするという選択をする人もいる。むしろ、今の共働き家庭の多くはそのスタイルかもしれない。飽くまで“本業”は主婦業で、空いた時間で“副業的”に働く。そんな“副業的”主婦仕事として思い浮かぶものに、スーパーでのレジ打ちがある。


 最近では無人機による自動化が進んでいるが、支払中のちょっとの間に交わされる、顔なじみのレジスタッフとの会話を楽しみにしている人もいる。レジ打ちの技能だけでなく、接客スキルも求められる仕事だ。


 他にも、飲食店の店員やアパレルショップの販売員なども、“副業的”主婦仕事として選ばれることが多い。


 そんな“副業的”主婦仕事に、3つの新しい潮流が生まれつつある。


 1つはクラウドワーク。在宅フリーランスとして、WEBデザインや記事のライティングなどを行う。通勤時間が不要な分、時間の融通が利きやすく、また習得した専門技能を活かせるメリットもある。


 2つ目は家事代行。家屋内の清掃や調理など、主婦仕事で磨いた技能そのものが有償労働に換わる。最近では、高い調理スキルを持つ伝説の家政婦がテレビ番組で人気となり、働く選択肢として認知度が高まってきている。


 そして3つ目が、ご近所ワークと言われる働き方だ。“ご近所”という名が示す通り、自宅近辺で対応できる様々な仕事を業務委託形式で引き受ける。


 ご近所ワークの場合、高度なスキル・経験は要求されない。基本的には、「誰にでもできる仕事」だ。それを家仕事の合間に発生する「すきま時間」で対応する。


 例えば、最近普及が進んでいるカーシェアリングに用いられる自動車の点検・清掃業務。あらかじめ用意されたチェックリストに沿って点検個所の状態を確認し清掃を行う。代表的な料金相場だと、車1台あたり1500円の報酬が支払われる。


 あるいは空き地の調査。依頼しているのは、コインパーキングを運営する企業。近所に空き地を見つけたらスマホで写真撮影し、ひな形に沿ってアンケートに答えて送信。こちらの代表的な報酬は一件700円ほど。


 これらご近所ワークのメリットは、誰でも手軽に報酬が得られるだけでなく、仕事場が近所なので直行直帰が基本となり融通が利きやすいこと。そしてうまく組み合わせれば、効率良く報酬を積み重ねることも可能となる。


 先ほどの空き地調査を例にとってみる。一件の報酬が700円の場合、仮に15分ごとに一件のペースで1時間働いたとすると4件こなすことができる。すると、700×4=2800円の報酬を得る計算だ。これは時給2800円の仕事に相当する。


 ご近所ワークには、他にも以下のようなものがある。多い人の場合、すきま時間にご近所ワークを上手く組み合わせて、月の報酬額が15万円に到達する人もいる。


◆店舗調査/指定店舗へ訪問し、指定の設問内容についてチェック

◆品出し・前出し/指定店舗へ訪問し、自社の商品や販促物を陳列

◆新店・改装業務/指定店舗へ訪問し、自社の商品や什器、販促物を設置

◆開店前準備/清掃、備品補充、仕込みなど

◆棚卸/商品原価を把握するために商品の在庫を数える

◆物件撮影/WEBなどに使用する画像の撮影

◆空き家巡回/不動産会社が管理している空き家の点検・簡易清掃


 世間には、家仕事に専念している期間をブランク(空白)と見なす風潮がある。本来は家仕事を通して様々な学び・成長があるはずで、家仕事期間をブランクとみなす風潮そのものには異議を唱えたい。


 しかし、家仕事のみに追われていると、ついつい生活圏内だけに活動範囲をとどめてしまい、社会と疎遠になってしまいがちだ。日に日に仕事勘も鈍っていってしまう可能性は否定できない。


 ご近所ワークは誰にでもできる手軽さが魅力の一つとはいえ、報酬を伴う仕事としての責任が発生する。すきま時間を利用して時折ご近所ワークをこなせば、その度に社会との接点が生まれる。真剣に取り組めば取り組むほど仕事勘のキープに役立てることができるのではないかと思う。


 しゅふJOB総合研究所の調査で、働く主婦層に「日々のすきま時間を有効に使えるかどうかで、あなたの人生の豊かさは変わってくると思いますか」と質問したところ、「思う」53.1%、「どちらかと言えば思う」34.3%、合わせて87.4%に及んだ。


 また、「もしすきま時間があったとしたら、その時間を使って、「副業等の仕事」をしたいと思いますか」という問いには、67.8%が「思う」と回答した。


 日々忙しく家仕事に追われる中でも、すきま時間を活用する選択肢が多くなれば、それだけ人生をより豊かに過ごすことができる可能性は広がる。ご近所ワークという働き方も、そんな選択肢の一つとなりうる。


 しかし一方で、働き方の多様化が進めば進むほど、選択肢の幅もさらに広がっていかなければ、逆に窮屈感が増してしまうことにもなりかねない。人々の価値観が多様化の一途をたどる中、働き方の多様化もまた、それ以上のスピードで進めていく必要がある。


 誰もが個々の事情や価値観などに応じて最適な働き方が選択でき、それぞれが互いの選択を尊重しあう。それが、働き方が多様化した社会の本来の姿だと思う。


 価値観の多様化と連動しながら、これまでのステレオタイプな常識に囚われることなく、働き方の選択肢がもっともっと広がっていって欲しいと願う。


●かわかみ・けいたろう/1997年愛知大学文学部卒業後、テンプスタッフ(現パーソルホールディングス)に入社し新規事業責任者などを歴任。業界専門誌『月刊人材ビジネス』などを経て、2010年株式会社ビースタイル入社。2011年より現職。延べ2万件以上の“働く主婦層”の声を調査・分析する傍ら、人材サービス業界への意見提言を行う。厚生労働省が委託する女性活躍に関するプロジェクト事業の委員なども務める。

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