自慢話に「そうなんだ」も「相槌を打つ」のも逆効果…マウント人間がそそくさと帰っていく"最強の振る舞い"

2025年3月25日(火)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/mapo

何かと上から目線で話しかけてくる人がいる。どうしたらいいのか。心理コーチとよかわさんは「マウントを取られやすい人には特徴がある。この世から理不尽な言葉をなくすことはできないが、ダメージを最小限に抑えられる“振る舞い”があるので試してほしい」という——。

※本稿は、心理コーチとよかわ『マウント取る人 消す魔法』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。


写真=iStock.com/mapo
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■マウントをとられやすい人の特徴とは?


マウントを取るとき、人は手近な誰かをターゲットにしがちです。同僚、後輩、取引先、友人、家族などのなかから、自分と同じくらいか、少し下の人間をターゲットにするのが定番です。


露骨な言い方をすると、「見下しやすい人」をターゲットにするのです。


だって、メジャーリーガーの大谷(おおたに)翔平(しょうへい)選手にわざわざマウントを取りにいく人はいませんよね? 元プロバスケットボール選手のマイケル・ジョーダンや、キング・オブ・ポップのマイケル・ジャクソンが隣にいたとして、マウントを取ろうと思う人はまずいないでしょう。少なくとも、とよかわには恐れ多くて絶対に無理です。


つまり、人は自分より圧倒的に強い人間や上位にいる人間に対しては、そもそもそんな気持ちにはならないのです。だって、威嚇したって返り討ちにされることは目に見えていますからね。


では、どのような人がターゲットにされやすいのか? 性格や人柄でいうと、次の特徴にあてはまる人です。


・優しい
・ボディーランゲージが多い
・相槌(あいづち)をよく打つ
・リアクションが大きい

「つまり、聞き上手な人ってことやないの?」と思いましたよね? その通りです。


人の話に優しく耳を傾け、ていねいに反応してくれる聞き上手な人は、いい、悪いではなく、マウントを取られやすい傾向があります。優しさゆえに、「敵対してこない」と思われるからです。また、リアクションが大きいので、マウントの取りがいがあるのでしょう。


「自分、結構あてはまってるかもしれへん……」と思った人も、絶望することはありませんよ。マウントを取られにくくなる方法が、実はあります。


■マウントを取られにくくする振る舞い方


簡単なことです。先に紹介した特徴と反対の振る舞いをすればいいのです。


具体的には、ボディーランゲージや相槌は少なめにして、リアクションも小さくすればいいのです。


マウントのターゲットにされやすいような人は、「人間とはみんな優しく、平和を望んでいる」と心から信じている、穏やかな考え方の持ち主がほとんどです。特に、なにか対策や努力をしなくても、人と人の問題は平和的に解決できると信じているため、無防備な状態で人と接しやすいのです。


そのような生き方にはとよかわも心から共感しますし、人とは本来優しいものであると信じています。しかし実際のところ、疲れていたり、人生がうまくいっていなかったりしてツンケンしている人間は思っている以上にいます。


そのような人は相手がどのように感じるかなどは気にせず、自分の一時的な欲求を満たすために平気で相手を傷つけてきます。


マウントを取られやすい人は、そのような現実を頭の片隅に置いたうえで、人との会話中に、あえて頷(うなず)かなかったり、ボディーランゲージを取らなかったり、相手に共感している様子を見せない演出をすることで、マウント被害をある程度減らせます。


■性格を悪くするのではなく“演技”をしよう


このような話をすると、「それって性格が悪い人間になれってこと? 自分はそんな人間にはなりたくない」と抵抗感を抱く人もいるでしょう。もちろん、その気持ちはよく理解できます。


しかし、とよかわは、性格の悪い人間になることを推奨しているわけではありません。あなたの優しい性格を変えるのではなく、「マウントを取られにくいように演技しましょう」と提案しているのです。


「人は優しい生き物」だと、とよかわは思っています。しかし、状況によっては、イライラしたりツンケンしたりしているときは誰にでもあります。そのときに、マウントのターゲットに選ばれないためには、「演技力」も必要なのです。


本書(『マウント取る人 消す魔法』)の中で紹介してきた魔法や切り返しを駆使しても、マウントを取るのをなかなかやめてくれない人もいるかもしれません。そうであるなら、その相手はなかなかの強敵です。


あまりに酷い場合は上司や人事部、公的機関などに相談するのも手ではありますが、環境を変えられない場合は、あきらめずに定型の切り返しを続けてみてください。(第2回参照


しょせん相手はトカゲモード(※)なので、たいしたことはできません。小さい子どもが筋の通らない駄々をこねたときに「はいはい、わかりましたよ〜」「はいはい、○○しましょうね〜」などと大人が軽くいなすように、なにも考えずにノールックで対応するのが正解です。


[※トカゲモード=トカゲ脳(爬虫類脳)。トカゲ脳は相手にイライラしたり腹が立ったりして、人間としての冷静な脳ではなくなっている状態のこと。人間モードに戻るためにはメタ認知や抽象化が必要。本書の第2章参照]


会社の業務でも、月初に必ずやるべき事務処理がありますよね? それと同じ感覚で淡々と対応すればいいのです。そのうち相手はあきらめるか、飽きて他の相手を見つけてくれるでしょう。


■「自分で選んでいる納得感」があるとへこたれない


このような対応は俗にいう「スルー」と限りなく近いですが、スルーするにしても、「なんのためにスルーするのか」はとても大切です。


マウントの切り返し方についてお伝えした際に、「なんのために切り返すのか」が大事だと伝えたように、目的を持ってスルーすることが大事なのです。


ただスルーし続けるだけだと、うっすらとした拷問を永遠に受け続けているような心境になることがあります。これは、目的なくスルーしているからです。


そうではなく、「自分はトカゲやなくて人間でおりたいから、マウント劇場の登場人物にはならんぞ。自分のゴールに集中するねん」と確固たる意志を持ったうえでスルーしてください。


要は、「納得感」が大事なのです。「自分で選んでいる」という納得感があれば、人は多少の困難にへこたれることはありません。


また、やっとその人のマウントが収まったと思ったら、今度は別の人がマウントを取ってくることもあります。


「やれやれ、今度はこいつかよ……」とうんざりしそうになるかもしれませんが、まぁ、人生なんてそんなものです。マウントは、いい、悪いではなく世の中にあたりまえのようにあるものであって、いってみれば雨みたいなものです。


写真=iStock.com/georgeclerk
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/georgeclerk

「雨よ、降るな〜、絶対に降るなよ〜!」と祈ってもどうしようもないですよね? どうしようもないことに意識を向けているよりも、「雨が降りそうだから傘を持って行こう」「雨予報だから、外出の予定は別の日に設定しよう」など、自分のなかで選択肢をいくつも持つことを優先するのが賢明です。


避けられない理不尽のなかに身を置き続けることは大変な苦しみですが、選択肢を持つことで、主体的に生きることができます。


■選択肢を持たないとどうなるの?


選択肢を持つことがいかに生き物にとって重要かを証明した実験があるので、紹介しておきます。


アメリカ心理学会会長だったマーティン・セリグマン博士が1967年に行った実験では、犬を2グループに分けて、電気ショックの与え方を変えました。片方のAグループの箱では犬が自分でボタンを押すと電気ショックが止まるようにし、もう片方のBグループの箱ではなにをしても電気ショックが止まらないようにしました。


その後、そのふたつのグループの犬を別のスペースに移し、今度はそのスペースを低い柵で半分に区切りました。片側のスペースは電気ショックが流れている状態に、もう片側のスペースは電気ショックが流れない状態にしています。


すべての犬は、最初は電気ショックが流れているスペースに置かれます。すると、このスペースに来る前にAグループにいた犬は、電気ショックを避けようとあれこれと動き回り、柵を飛び越えて電気ショックのないスペースに移ることができました。


ところが、Bグループにいた犬は、電気ショックが流れても動こうともせず、ひたすらじっと耐えているだけだったそうです。


■マウントのダメージを最小限に抑える方法は多くある


つまり、Aグループにいた犬が「電気ショックを止める方法があるはず」と学習したことで苦痛を避けるための試行錯誤をしたのに対し、Bグループにいた犬は「電気ショックは止められない」と学習していたために、行動する気力を失っていたのです。



心理コーチとよかわ『マウント取る人 消す魔法』(KADOKAWA)

このような認識の仕方を「学習性無力感」といい、環境や状況に対する行動を左右します。平たくいえば、選択肢のない困難な状況に長く置かれると、無気力になり、状況を変えるための行動ができなくなってしまうのです。


理不尽なマウントをなにも考えずにスルーし続けたり、ただ耐え忍んだりすることは、あなたのためにも、相手のためにもなりません。マウントをこの世からなくすことはできませんが、マウントを軽やかにかわしたり、ダメージを最小限にとどめたりするための方法はたくさんあります。


ここまで紹介してきた魔法や切り返し定型文など、みなさんには「自分の人生に集中する」という明確な意志を持って、これらの選択肢を携えてほしいと願っています。


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心理コーチとよかわ(しんりこーち・とよかわ)
心理コーチ
手取り5万円の高卒フリーターから未経験でIT業界に入り、デジタルマーケティング業界、海外での新規事業開発などを経験する。シリコンバレーで認知科学と出会い、帰国後に起業。上場企業のDX人材育成に従事したことをきっかけにコーチング業界の道へと進む。コーチングの世界的権威に認められその伝統を受け継ぎ、コーチングにおける各種世界ライセンスを保持する。2022年に開設したYouTubeチャンネル「心理コーチとよかわ」では、主に人間関係の悩みを解決するコンテンツを配信し人気を集めている。
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(心理コーチ 心理コーチとよかわ)

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