SDGsに挑む時代、CDOに求められるものは何か

3月27日(金)6時0分 JBpress

一般社団法人CDO Club Japan
代表理事&創立者 加茂純氏
理事・事務総長 水上晃氏

本コンテンツは、2020年3月4日に開催されたJBpress主催「Digital Innovation Forum 2020 <春>〜デジタル変革によるイノベーションの実現〜」での講演内容を採録したものです。


社会課題の解決でも鍵を握るのはCDO相互の「連携」

一般社団法人CDO Club Japan
代表理事&創立者
加茂純氏
 

 CDO Clubは、各国企業においてチーフ・デジタル・オフィサーあるいはチーフ・データ・オフィサーとしてイノベーションに取り組んでいるCDOたちが、グローバル規模で連帯するコミュニティネットワークです。

 すでに全世界で1万人以上のCDOがこのCDO Clubに参画し、活発に情報交換・意見交換を繰り広げており、私たちCDO Club Japanも2017年の設立以後、急速に参画者を増やして約100名のCDOが名を連ねるところまで拡大してきました。

 そして今、CDO Clubの中でも特に重大なテーマとして、その対応について議論されるようになっているのがSDGsです。ご存じのようにSDGsは国連が2015年に採択した17項目による「持続可能な開発目標」の総称。

 貧困や飢餓、平和問題や気候変動など、その項目は多岐に渡っているわけですが、そこには産業の在り方や技術革新も含まれており、企業にとってもCDO各員にとっても、看過できない重大テーマです。

 すでに国内外の企業がこのSDGsを自社の経営計画にしっかりと盛り込み始めてもいますし、本日配信でご試聴されている皆さんのところでも、このSDGsについての議論が始まっているところは少なくないはずです。

 ではグローバルなCDO Clubで何が始まっているかと言えば、まずClub総体からのメッセージとして、SDGsという単語を「サスティナブル(Sustainable)デジタル(Digital)ゴールズ(Goals)」と分解しながら、「グローバル連携にて挑戦する」ことを宣言。

 官民の多様な組織において変革リーダーとしての役回りを期待されているのがCDOである以上、この国際的課題においても中心的役割を担って、国境を越えて連携していくことを改めて発信しています。とりわけ挑戦すべき課題として重視しているのが、気候変動と災害、そして今まさに世界を揺るがせているコロナウイルスも含めた感染症対策についてです。

 イケアのDXを成功させたCDOとして名高いスウェーデンのバーバラ・コッポラさんも「家庭や、社会、私たちが住む地球環境に良い影響を与えることを目指す。それは正しいことだから“だけでなく”、持続可能なビジネスを行う唯一の方法」なのだと声明を発表しています。 

 われわれCDO Club Japanとしても、この「グローバル連携によるSDGsへの挑戦」に寄与できるよう、日本と海外を結ぶ懸け橋としての役割を積極的に実行していこうと考えています。

 ただしその一方で、日本国内におけるCDOの結集と連携をもっと強化し、もっと活性化していかなければいけない、と改めて考えているところでもあります。

 欧米をはじめとするデジタル先進各国に遅れること約5年、2017年にCDO Club Japanが誕生した頃には、全国の企業の中でCDO、あるいはそれに近い役目を担っているチーフオフィサーはほんの数名しかいませんでした。

 それが2年ちょっとの間に100名まで増えたことは、この国のデジタル変革のためにも大きな収穫だと考えてはいます。しかし本音を申せば、「まだまだ全然不足している」というのが偽らざる現実。

 SDGsへの挑戦にしても、グローバルレベルで「連携」が重視されていますが、現状の日本で例えば官の領域を見てみると、行政組織や公共団体でCDOとしての役目を担っている方がまだ数名しかいません。

 これでは気候変動・異常気象・大規模災害・感染症などの課題に「官民が連携し、一体となって」という挑戦はなかなか進みません。また、民間企業のCDOも100名程度では「連携」によるイノベーション発動の可能性は難しい、とわれわれは自戒も込めて捉えています。

 そこで、CDO Club Japanとしても「持続的イノベーションを生み出すコミュニティ体制の構築」を課題として明確に掲げ、現在の100名規模から1000名規模にCDOを増やしていくため、われわれ自体が活発に働きかけを行っていくことを決めました。

 CDO Clubの使命は、変革のための環境作りにあるわけですから、「どう変革を成し遂げるか」を論じる以前の課題として「100名を1000名に」というシンプルな目標を設定したわけです。理屈もまたシンプル。「100人より1000人のネットワークの方が組合せ爆発が圧倒的に大きい」。「CDOの数が多ければ多いほどイノベーション(新結合)が生まれる確率(可能性)が高まる」ということです。

 今後、CDO Club Japanは日本のCDOと世界のCDOとの連携をさまざまな形でサポートしていくのはもちろん、各国政府、大学、研究者、国連との連携も強化し、アジェンダを策定。グローバルCDO Clubを通じた人材開発と紹介を強化する一方で、次世代CDOの発掘・育成を進め、CDO Clubファンドの策定についても検討を始めているところです。

 ですから、これまで以上に多くの方から興味と共感を持っていただきたいと考えていますので、どんな形でも結構ですから私たちにお声を掛けていただければと思います。


不確実な情勢だからこそCDOのリーダーシップが「違い」を生む

一般社団法人CDO Club Japan
理事・事務総長
水上晃氏
 

 私からはまず、今回の新型コロナウイルスに関わる話題についてお伝えしたいと思います。このイベントもまた影響を受けて配信スタイルに変更となりましたし、ネットを通じて今ご覧いただいている皆さんの会社でも、大きな影響を受けていることと思います。

 しかし、こうした緊急時にこそリーダーの資質が問われるもの。実は今回のコロナウイルスの件でも台湾で非常に注目すべき動きがありました。

 日本と異なり、台湾では昨年12月31日の時点で早くも国民に注意喚起を行い、その後も検疫強化や専門家チームの発足などの措置を迅速に打ち出していました。また、台湾当局は国民健康保険のIDを使い、薬局でマスクを配給するシステムも立ち上げましたし、中華郵政公司は全国の薬局6500カ所のマスクの在庫をオンラインで把握し、過不足なく無料で配送する態勢を整備したのです。

 さて日本はどうだったか? それは皆さんご承知の通りです。SNSを中心にデマが飛び交う中でマスクの不足が深刻化し、トイレットペーパーなどの買い占めによって消費者も提供側も右往左往する始末。リーダーによる勇気ある判断と迅速な行動の有無が、これほどまでに分かりやすい「違い」を生んでしまうことから、私たちは改めて学ばなければいけない。そう考えています。

 しかし、日本にも素晴らしいリーダーがいらっしゃいました。例えば昨年度、CDO of the YearとしてCDO Club Japanも表彰をさせていただいたサンリオピューロランドの小巻亜矢CEOです。

 多くのエンターテインメント企業がコロナウイルスへの対応にまだ迷いを抱いていたはずの2月22日の時点で、臨時休館という決断を発表されました。発表直後の段階では、世の中的にも賛否両論が起きていたものの、今ふり返ってみれば「大英断」と言うしかありません。

 集団感染の可能性拡大を阻止するためとはいえ、短期的な経営面を考えれば苦渋の決断だったに違いないわけですが、リーダーのこうした決断が企業の社会的責任における本気度を明快に世間に示すことになる。そのことを私たちに教えてくれました。

 本日のテーマであるSDGsへの挑戦に対して、グローバルなCDO Club、そしてわれわれCDO Club Japanがどういった姿勢で臨んでいるのかについては、先ほど加茂からお話をさせていただいた通りです。環境変化が激化する今という時代において、CDOが果たすべきリーダーシップは今後ますます重要視されていくでしょう。

 ではなぜデジタル変革は必要なのか、という根源的な問題を今一度考えてみましょう。最も分かりやすい例として、かつて世界の写真フィルム市場でトップシェアを競ったコダックと富士フイルムという日米のグローバル企業がたどった道のりを見てみます。

 皆さんご存知のように、デジタルカメラという技術革新によって写真フイルム市場は、一気に収縮していったわけですが、そんな未来が見えていなかった1990年代の末から2000年代の初頭、コダックはそれでもフイルム事業に固執し、結果として経営破綻を起こしました。一方、富士フイルムは積極的な挑戦で業態変化を実現し、今なおグローバルトップ企業として成長を続けています。

 ゴール到達までのシナリオ、つまり先が見えない現代は「VUCAの時代」と呼ばれます。Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)に支配されるビジネスシーンで生き残るために、デジタル変革は不可欠だということを象徴する事例が、このコダックと富士フイルムの話なのですが、その一方でデジタル技術そのものが、環境変化と不確実性を生み出す源にもなっています。

 つまりDXという挑戦は一過性のものではなく、持続性をもって挑み続けなければ生き残れない課題だということ。米国では「2011年度に小学校に入学した子どもたちの65%は、大学卒業時に今は存在していない職業に就くだろう」とさえ言われています。

 例えば、雇用(企業)と労働の関係さえもデジタルプラットフォーマーによって変わりつつある現実を、皆さんも痛感されているはずです。つまり、デジタル変革とは大きな環境変化に対する企業の「適合」と「進化」だということです。

 働き方改革がまさに進行する最中に起きた今回のコロナウイルスによる影響で、多くの事業者が望むと望まざるにかかわらず、テレワークを余儀なくされている今、私としては「この時期を、あたらめて『自分たちを省みる』時間と『改革』のきっかけにしてほしい」と思っています。

 今回のことをダメージだけで終わらせないために、例えば新しい働き方を自ら試したり、ビジネスの取り組み方の中に最新技術を採り入れるきっかけにしたり、サプライチェーンの在り方やビジネスモデルの進め方を再検討したり・・・というように。

 CDO Club Japanでも、これまでイベントとして開催してきたCDOサミットを、6月にオンラインによって開催するアプローチにトライします。

 テーマは「社会課題に取り組むデジタルリーダーの取り組みから学ぶ」。本日お話しきれなかった情報や知見について、詳しく発信していく予定ですので、ぜひご参加いただければと思っています。

筆者:JBpress

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