消費税10%の重税感、今の2%増しどころではない

3月30日(土)6時0分 JBpress

参議院予算委員会での安倍首相(写真:つのだよしお/アフロ)

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舛添要一:国際政治学者)

 3月27日、一般会計総額101兆4571億円と初の100兆円を超える新年度予算が成立した。そこでは10月に予定されている消費税増税の対策費として、2兆280億円が計上されている。

 安倍政権下ではこれまで2度にわたり増税を延期しており、安倍首相も財務省も、今回こそは「三度目の正直」で10%への増税を実現したいところである。

 しかしながら、内外の情勢がそれを許すかどうか不透明な状況になってきている。


景気後退の前兆「逆イールド」が世界各国で

 3月25日、月曜日の東京株式市場で、日経平均株価は一時、715円を超える大幅な下落となった。終値は650円23銭安の2万0997円11銭だった。1万1000円割れは約1カ月半ぶりのことである。世界経済減速への懸念から、22日金曜日のニューヨーク株式市場で大幅安になったことを受けての週明けの動きであった。

 FRB(連邦準備制度理事会)は、3月20日にFOMC(連邦公開市場委員会)を開き、主要政策金利を年2.25〜2.5%に据え置き、年内は利上げをしない方針を決めた。個人消費や設備投資が減速していることから、景気の現状判断を「底堅く拡大」から「成長が鈍化」に引き下げたからである。

トランプ大統領(左)は、これまで政策金利を段階的に引き上げてきたFRBに批判的だったが・・・。写真は、2017年11月、FRB次期議長に、ジェローム・パウエル議長氏の指名を発表した際のもの(2017年11月2日撮影、資料写真)。(c)AFP/SAUL LOEB〔AFPBB News〕

 この政策転換で、ドル売り・円買いが進み、25日の東京外国為替市場で円相場は一時1ドル=109円台後半に値上がりした。これは輸出企業にとって厳しい。東証では、この円高ドル安リスクもあって、特に輸出関連銘柄で売り注文が広がった。

 株式市場の急落の背景には、景気後退の前兆とされる金利の長短逆転現象(逆イールド)がアメリカで起きたことがある。米国債10年物の利回りが、3カ月物のそれを11年半ぶりに下回ったのである。この逆イールドは、過去30年で3度起こっているが、いずれの場合も景気後退局面で発生している。たとえば、2005〜2007年の逆イールドの後、2008年9月のリーマン・ショックが起こっている。

 逆イールドは、アメリカのみならず、カナダ、メキシコ、中国、トルコに広がっている。まだ先行きは不透明であるが、投資家の心理を冷やしている。


景気判断が3年ぶりの下方修正

 日本に目を転じると、政府が20日に発表した3月の月例経済報告では、景気判断が3年ぶりに下方修正された。具体的には、「穏やかに回復している」という前月までの表現は維持したまま、「このところ輸出や生産の一部に弱さもみられる」という文言を付け加えたのだ。米中貿易摩擦による「中国経済の減速」が大きく響いているためである。3月28日から、北京で米中閣僚級貿易交渉が1カ月ぶりに再開されたが、この摩擦の解決の目途はまだ立っていない。

 個人消費や設備投資については、今のところは堅調だが、消費税増税で個人消費が落ち込めば、景気後退に拍車をかける可能性が高くなってくる。

 マスコミの世論調査を見ても、景気への懸念が広まっていることが分かる。朝日新聞の調査(3月16〜17日に実施)では、景気の実感として「景気が悪くなった」が49%、「そうは思わない」が41%であり、10月の消費税増税に「賛成」が38%、「反対」が55%だ。

 産経新聞FNN世論調査(3月16〜17日に実施)では、景気回復の「実感がある」9.8%、「実感はない」83.7%、消費税増税に「賛成」41.0%、「反対」53.5%である。

 また時事通信世論調査(2月8〜11日に実施)では、生活にゆとりを「感じている」が6.9%、「どちらかと言えば感じている」が32.9%の計39.8%に対して、「感じていない」21.4%、「どちらかと言えば感じていない」37.1%の計58.5%(前年比3.0%増)。また、消費税引き上げで家計の支出を見直すかという質問には、「見直す」が57.2%、「見直さない」が37.2%であり、具体的な見直す内容は、「食費」が59.4%、「外食、旅行などの娯楽費」が39.5%、「水道光熱費」が37.6%、「携帯電話やインターネットなどの通信費」が31.2%、「衣料品や宝飾品の購入費」が31.0%であった。

 消費者の心理が冷え込み出しているのがよく分かる。それでもまだ個人消費や設備投資が盛んなので現在はよいのだが、これから先、米中経済摩擦が内需にまで影を落とすようになると、「穏やかに回復している」という文言の削除が現実のものとなる。その場合には、消費税増税の延期は避けられなくなる可能性がある。

 消費税率8%と10%との差は、わずか2%であるが、しかし、心理的なインパクトは非常に大きい。第一に、二桁になる。第二に、価格の1割というのは計算が簡単な分だけ、消費の段階で重税感が増すのだ。たとえば、1万3750円の買い物をすれば、消費税は1375円になるとすぐ暗算できる。これが、8%の場合だと、電卓でも使わなければ1100円という税額はすぐに出てこない。従来の8%と比較すれば、1割という消費税率が消費を抑制する効果は、2%の税率との差以上になると考えたほうがよい。

 先の世論調査を見れば、景気回復を実感していない人が大半なのだから、消費税増税時にお金の使い方を見直す人々は増えるだろう。つまり10月以降、消費の落ち込みは激しくなることが予想される。個人消費はGDPの6割を占めているため、政府はポイント還元、軽減税率など様々な対策を準備しているのだが、効果は未知数である。


消費増税延期なら衆参同日選挙か

 安倍首相は今のところ「増税延期」には否定的だが、そこにはリーマン・ショックのような大きな外因性の問題でも生じていないのに延期すれば、「アベノミクスが失敗した」と内外に宣言することになってしまうという心理も働いているのかも知れない。だが、増税ショックによる日本経済の失速を回避するためには、当然ながら「延期」も必要な検討事項になる。

 日本では亥年の今年は12年に一度の「選挙イヤー」で、この春の統一地方選挙の後は、参議院選挙が控えている。それだけに、消費税増税延期を決めるにしても日程的に窮屈ではあるし、増税対策を組み込んだ新年度予算もすでに確定してしまっている。

 もちろん予定通りに増税を実施できればそれが一番よいのだが、景気減速リスクがさらに高まった場合は、決断が必要になるかもしれない。であれば、「増税延期」を掲げて衆参同日選挙で国民に信を問うという選択肢が現実味を帯びてくるのである。

筆者:舛添 要一

JBpress

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