バイトテロで"まさか炎上"と本人が驚く訳

4月1日(月)9時15分 プレジデント社

※写真はイメージです(写真=iStock.com/SetsukoN)

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アルバイトの悪ふざけ動画がSNSで爆発的に拡がる「バイトテロ」。ネットに流れた個人情報を消し去ることは難しい。人生を棒に振る可能性があるのに、なぜ投稿するのか。ITジャーナリストの高橋暁子氏は「動画を投稿する人は『自分も炎上するかも』とは思っていない」と分析する——。

■くら寿司、大戸屋、すき家……続く「バイトテロ」


「バイトテロ」が続いている。バイトテロとは、外食店やコンビニエンスストアなどでアルバイトが不適切動画をSNSに投稿し、炎上することを指す。




※写真はイメージです(写真=iStock.com/SetsukoN)

たとえば「くら寿司」の学生バイトが、一度ゴミ箱に捨てた魚を拾って調理するような動画を投稿して炎上。くら寿司は、学生を退職処分の上、民事・刑事的措置をとることを発表している。


マスクをかぶりズボンを脱いだ状態でふざけている動画を投稿された「大戸屋」は、該当のアルバイトを退職処分にした。さらに、国内の全店を一斉休業して再発防止のための従業員研修を行うとともに、スマートフォンの持ち込み禁止とSNS投稿を禁じる対策をとっている。


その他、すき家、ビッグエコー、バーミヤン、ファミリーマート、セブン‐イレブンなどの大手チェーン店で、バイトによる不適切動画投稿、通称「バイトテロ」が続いている。連日メディアで報道されているにも関わらず、なぜバイトテロはやまないのだろうか。理由と対策について考えていきたい。


■「バカッター」から「バカスタグラム」へ


バイトテロの歴史は古い。バイトテロと言えば、Twitterによる一連の炎上事件が思い浮かぶ人は多いだろう。2013年頃に、アルバイトがコンビニエンスストアのアイスケースに入った写真をFacebookに投稿・Twitterに流出して炎上した事件をはじめ、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンで大学生が迷惑行為をしてTwitterで自慢し刑事処分になった事件、アルバイトが食器洗浄機に入った写真を投稿し、炎上してそば屋が閉店した事件など、多数の炎上事件が起きた。


Twitterによるものは「バカッター」と呼ばれたが、最近のバイトテロはInstagramの「ストーリーズ」によるものが多く、「バカスタグラム」などと呼ばれることもある。もともと、写真や動画つきの方がわかりやすく炎上しやすい傾向にあったが、最近は動画投稿の増加でさらに炎上しやすくなっている。


一般的にはInstagramは、趣味や関心で知らない人ともつながる場だ。ところが学生は、仲間内のコミュニケーションの場として使っていることが多い。履歴に残る写真は精選したものしか載せられないが、24時間で消える「ストーリーズ」という機能では、リアルタイムにいろいろなことを投稿しているようだ。



■「仲間内」だけのつもりがTwitterに転載


ストーリーズには、「今このメンツで遊んでる」と友だちと一緒の写真を投稿したり、「これからこの授業に出るよ」などと教室内などを映した動画を投稿したりすることもある。写真や動画に文字を書きこむことや、そこで簡単なアンケートを採ることもある。


このような動画を見て、「私も◯◯ちゃんと友だち。今度一緒に遊ぼう」「同じ授業に出てるよ。合流しよう」などとInstagramのメッセージ機能で連絡を取り、コミュニケーションを取ることも多いそうだ。メッセージが来ることを期待して、コミュニケーション目的で写真や動画を投稿することもあるという。


炎上した動画の多くは、動画内に仲間の笑い声が入っている。つまり仲間にウケようとして、わざとやっていることになる。仲間内だけに見せてウケさせるつもりで投稿していた動画が、転載されて他人に見つかり、炎上につながったというわけだ。


「24時間で消える」という点が、ストーリーズへの投稿の心理的な敷居を下げている。だが、実際はiOS11以降に搭載されているiPhoneの「画面収録」機能などを使うと録画できてしまう。そのように保存された動画がTwitterなどに転載され、炎上につながっているのだ。


Instagramは通常、公開アカウントにしていることが多い。その場合は友人以外からもフォローされる。動画を見た友人が軽い気持ちでTwitterに転載したことが掘り返され、炎上につながる例は少なくない。その他、知り合いではないフォロワーに転載される例もあるようだ。保存・転載が自由にできる以上、アカウントに鍵をかけていても、Twitterに転載されて炎上する可能性もあるというわけだ。


■大手チェーン、著名大学の学生が攻撃されやすい


理由は、それだけではない。問題となった投稿の多くは、数週間や数カ月前の投稿が多い。バイトテロがブーム化したため、過去のTwitterなどに転載された動画が掘り返されて、さらされて炎上しているのだ。そのような炎上はYouTubeにまとめられ、さらに拡散されていく。


人は匿名性の影で攻撃性が強くなることが知られている。同時に、相手に非があり攻撃に大義名分がある場合、容赦なく攻撃しがちになる。不適切動画を炎上させることで、溜飲を下げているユーザーが少なからず存在するのだ。


また、大手チェーン名がついていると、注目を集めるため炎上しやすくなる。多くのユーザーが大手チェーンを使っており、不衛生な行為を自分ごととしてとらえやすくなるからだ。なお、有名大学の学生が引き起こした場合も、注目を集めると同時に恵まれている対象として攻撃されやすくなるので、注意が必要だ。



■「自分も炎上するかも」とは思わない


大学1、2年生に話を聞くと、社会ニュースに一切興味がない学生が多いことを感じる。彼らが社会ニュースに興味をもつのは、3年生になり就職活動を始める時期になってからだ。


SNSやニュースアプリ経由で興味があるニュースのみ読むという学生は、非常に多い。興味があるタイトルだけを読むため、バイトテロ問題がどれだけ話題となっていても当人たちには届いていない。だからこそ、「自分も炎上するかも」と思わず、不適切投稿をしてしまう学生が後を絶たないのだ。


■停学、退学、内定取り消しにつながることもある


バイトテロで企業側が受ける被害は甚大だ。CMを打つなどして築いてきたイメージが崩れる。マイナスイメージは業績悪化などにつながりかねない。株価の下落だけでなく、店舗閉鎖などにつながることもあるのだ。


一方のアルバイトも、学生であれば停学や退学、内定取り消しなどにつながることは多い。投稿内容によっては賠償請求や書類送検をされる可能性もある。少なくとも、炎上すると個人情報が永遠にさらされることになる。一度の投稿で人生を棒に振るかもしれないのだ。


アルバイトを訴えたり罰則を用意したりしても、投稿されてしまった以上、企業がマイナスの影響を被ることに変わりないので、あまり意味はない。企業や店舗側は、バイトを含むすべての従業員に対してSNSの適切な使い方と、炎上の恐ろしさを研修する機会を設けよう。すでに社員向け研修会を行っている企業は少なくないようだ。ソーシャルメディアポリシーを用意し、投稿してはいけない内容は明確にし、定期的に研修をしておくと安心だ。


いくら報じられていても、若者たちはバイトテロの危険性を知らない可能性が高い。保護者は周囲の若者たちに、このような投稿のリスクについて正しく伝えていただければ幸いだ。


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高橋暁子(たかはし・あきこ)

ITジャーナリスト

情報リテラシーアドバイザー、元小学校教員。書籍、雑誌、webメディアなどの記事の執筆、コンサルタント、講演などを手がける。著書に『ソーシャルメディア中毒』『できるゼロからはじめるLINE超入門』ほか多数。『あさイチ』『クローズアップ現代+』などテレビ出演多数。

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(ITジャーナリスト 高橋 暁子 写真=iStock.com)

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