いずれ誰もが"脳に電極を刺す"時代になる

4月2日(火)9時15分 プレジデント社

実業家の堀江貴文氏(撮影=小学館写真室)

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「脳に電極を刺したいか」と聞かれたら、どう答えるか。実業家の堀江貴文氏は「そう遠くない未来に、人とAIは同期するだろう。それが実現すれば、人間の知能は現代の数千億倍まで“拡張”すると言われている。AIと同期する人としない人では、知能の格差が大きく広がることになる」と予測する——。

※本稿は、堀江貴文『僕たちはもう働かなくていい』(小学館新書)の一部を再編集したものです。




実業家の堀江貴文氏(撮影=小学館写真室)

■「記憶のバックアップ」が当たり前の時代が来る


「あなたは将来、脳に電極を刺しますか?」


こう問われたレイ・カーツワイルは、「もちろん」と答えた。2016年9月、六本木ヒルズで行われたイベントでの一幕だ。


カーツワイルは、AI研究の世界最高権威とされる人物。2012年からグーグルでAI研究の責任者を務め、カーツワイル理論を基にした、知性アプリケーションの開発などを手がけた。


2005年に自身の著作のなかで初めて、「シンギュラリティ=技術的特異点」について踏み込んだ論考を展開。「人類に代わって汎用AI、もしくは機械と融合する人間=ポスト・ヒューマンが、地球の支配者となり、大宇宙に進出していく」などと論じた。


さらに彼はAIが人類の知能を超える瞬間(=シンギュラリティ)は、2045年に訪れると予言。その後、2100年には、人間の知能はAIとのハイブリッドで現代の数千億倍まで“拡張”されており、「そのとき過去の人類が、記憶のバックアップを取らず生きていたことは、非常に驚かれる」とも論じている。


■人間とAIとの融合を待ちわびているかのよう


AIが人間の知能を凌駕する──。


世界最高権威が唱える未来予想は、世の中に大きな衝撃を与えた。以降、シンギュラリティの是非をめぐる論争は、AIを語るうえで常について回るようになった。


提唱者のカーツワイルは、シンギュラリティに対して、もちろん好意的だ。先のイベントでも「これからテクノロジーは体内に入ってくる」と語り、脳に電極を差し込むことを少しも厭わず、むしろ人間とAIの融合を待ちわびているようですらある。


カーツワイルは30代で糖尿病と診断された過去がある。だが科学者としての知見と担当医師と共同で最新治療を行い、テクノロジーによって完治したと主張している。本当に完治したのかどうかはともかく、70歳の現在まで健常なのは間違いないようだ。


また彼は、若くして死んだ父親に関する資料を、大量に保管している。将来、父親の遺伝子情報、自身や周囲の人たちとの記憶と照らし合わせ、父親とまったく同じ人格を持つAIの開発を目指しているそうだ。


自身が死亡したときは人体冷凍保存を行い、未来での再生復活を願っている。


エピソードのいくつかは、倫理的にやや危なっかしい面もあるが、得てして突き抜けた研究者とは、自ら率先して体を張り、世間をあっと驚かせるものだ。



■「高度に発達したAIは神と区別がつかない」


カーツワイルは、生粋のテクノロジー万能論者だ。AI研究の進化によって、人類は解放と幸福の未来へ向かっていると、信じて疑わない。


万能論者の声はほかにもある。


AI研究の第一人者で知られるワシントン大学のペドロ・ドミンゴスは、AIによる機械学習アルゴリズムの流派をわかりやすく分類。その組み合わせで、あらゆる問いや目的に最適解を出す「支配的アルゴリズム」をAI自身が生みだせる……つまり事実上のシンギュラリティに到達するはずだと唱えている。しかも、それは2045年よりも早いという。


また彼は、「高度に発達したAIは神と区別がつかない」と説いている。これはSF作家のアーサー・C・クラークの有名な「進歩した技術は魔法と区別がつかない」という言葉へのオマージュだろう。


ドミンゴスはこうも述べている。


「AIが反抗するのではないかと恐れる人々もいるが、その可能性はほとんどない。それよりも私たちがAIの自発的な制御を放棄してしまう可能性の方がよほど高い。AIの開発に際して、常にAIを制御する意識を捨てないことが必要だ」


名だたるAIの最高レベルの識者たちから、好意的な論が挙げられているのは、世界中の最先端の企業や研究者たちが、莫大な予算と時間をかけてAI研究を続けることの後押しとなっている。


■「ロボット税」の必要性を説くビル・ゲイツ


しかし反面、否定的立場に立つ人がいるのも事実である。


代表的なのはマイクロソフト創業者ビル・ゲイツだ。もともと彼は「AIは危険である」という立場を取っている。その技術的能力は認めつつも、現段階以上の進化を遂げることを不安視していた。


ゲイツは2017年、米『クオーツ』誌のインタビューで、ロボット税の導入の必要性を説いた。働いて税金を支払っている人間がロボットに置き換えられたところに、同等の税金を課すべきだという。


人間の労働者に置き換わるAIロボットを運用している企業や自治体に、一定の課税負担をかけることで、AIの進化速度を抑制する狙いがあるという。その税収で人間のための職を新しく生みだすべきだと、ゲイツは述べた。


AIの進化よりも、人間へのケアの方が先だという意見なのだろう。



■税収を増やすならアマゾンやグーグルに稼がせてほしい


この意見には同意できない。国にお金を集めても、ロクなことがないからだ。もうこれ以上、変な税収で国家を焼け太りさせるべきではないだろう。


そんなお金があったら、アマゾンやグーグルにもっと稼がせてほしい。先進的なIT企業にお金が集まる方が、よほど世の中のイノベーションの助けとなるだろう。




堀江貴文『僕たちはもう働かなくていい』(小学館新書)

スウェーデンの哲学者ニック・ボストロムは、AIの進化する果てには「ディストピア」が待ち受けると想定している。宇宙物理学者の故スティーヴン・ホーキング(彼もAIの進化には否定的だった)ほか、ボストロムの提唱する説を支持する知識人も少なくないようだ。


昨今、噴出している「AIに仕事を奪われる」という言い方も、AIを否定的にとらえたい人たちがこぞって広めようとしている言い回しだろう。どんな意見を述べようと自由だが、残念な気持ちだ。


来るべきテクノロジーの進化によってデザインされる新たな社会を、知識人が否定的にとらえてどうするんだ? と思う。問題提起を繰り返し、時々の知恵や技術を用いて、軋轢を乗り越えながら、社会をよりよい方向へと導いていくのが、人間ではないか。


時代の潮流が変わっていく際の、言いしれない恐怖や不安の原因を、AIのせいにしてはいけないと思う。


■「脳に電極を刺しますか?」と問われる未来


カーツワイルは、脳に電極を刺すことを厭わないと語った。それは、いずれ世の多くの人々が、「脳に電極を刺しますか?」と問われるだろう、そう遠くはない未来を示唆している。


AI研究の権威は、すでに「人とAIが同期する姿」を、見据えているのだ。しかも、それが実現すれば、人間の知能は現代の数千億倍まで“拡張”されるという。


同期の仕方についてはさまざまな議論を呼ぶだろうが、脳に電極を刺さないまでも、BMI(ブレイン・マシン・インターフェース=脳と機械をつなぐ技術)では、ヘッドギアを装着するだけの方法の研究も進んでいる。


いずれにせよ、AIと同期する者としない者の知能の格差が、驚愕のレベルになることは間違いないだろう。


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堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)

実業家

1972年、福岡県生まれ。SNS media&consulting株式会社ファウンダー。ライブドア元代表取締役CEO。東京大学在学中の96年に起業。現在は、ロケットエンジン開発やさまざまな事業のプロデュースなど多岐にわたって活動。会員制コミュニケーションサロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」や有料メールマガジン「堀江貴文のブログでは言えない話」も多数の会員を集めている。

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(実業家 堀江 貴文 撮影=小学館写真室)

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