週1回ボーッとすると人生の転機が訪れる

4月2日(火)15時15分 プレジデント社

※写真はイメージです(写真=iStock.com/stockstudioX)

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あなたは孤独を感じる瞬間がありますか? 寂しいのは嫌だけど、1人でいることは好き。そんな日本人の本音が独自調査で明らかになった。

■誤解される孤独とは何か


孤独という言葉には、「孤独死」に象徴されるようにネガティブなイメージがつきまとう。だが一方で、オジサンが1人で外食を楽しむ漫画『孤独のグルメ』が人気を博すなど、孤独をポジティブにとらえる傾向もみられる。




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そもそも「孤独」という言葉が誤解されていると、心理学が専門の明治大学教授・諸富祥彦さんは指摘する。


「『孤独=1人でいること』ですが、孤独には大きく分けて3種類あります。①非選択的な孤独、②選択的孤独、③実存的な深い孤独、です」


諸富さんの説明によると、我々が一般的に考える「孤独=寂しい」というのは①だ。独身(未婚、離婚、死別など)でパートナーがいない、親しい友人がいないなど、本人が望まないのに否応なく社会的に孤立した状態を指す。


②の「選択的孤独」は文字通り、自分で主体的に選んだ孤独。他人の束縛や周囲の同調圧力から解放され、1人を謳歌する生き方だ。ただし、必要な人とのかかわり合いは保っている。


③の「実存的な深い孤独」は、世の中の喧騒から離れて徹底的に孤独に徹し、自己の内面に深く沈潜する状態である。時折無性に1人になり、自分を見つめ直したいと思うようなケースだ。


「孤独」のとらえ方については、コミュニケーションの専門家で『世界一孤独な日本のオジサン』の著者である岡本純子さんも、「孤独は英語では、『Loneliness』と『Solitude』があり、前者は自分の意思に反して精神的に孤立し苦痛を感じる状態、後者は能動的・自発的に1人を楽しむ『自立』のことで、2つは分けて考える必要があります」と指摘する。「私も1人でいることは大好きですし、楽しい。ただ、それがずっと続いたり、困ったときに支えてくれる人が誰もいないというのは心身ともによくないですよね」。


このように孤独にはネガティブなものとポジティブなものがあるとわかる。



では、実際に孤独な人はどれくらいいるのか。ヒントになりそうなのが孤独の代表ともいえる独身者の推移だ。平成のうちに日本の生涯未婚率は大幅に上昇した。生涯未婚率とは50歳時点で1度も結婚歴がない人の割合。1990(平成2)年と2015(平成27)年を比べると、男性5.57%→23.37%、女性4.33%→14.06%と約3〜4倍に増加している。


また、熟年離婚する人も増えている。たとえば、50歳以上の熟年離婚件数をみると、90年と17年では、男性が約1万2000件→約3万4000件、女性が約8000件→約2万3000件と、ともに3倍近い伸びを示している。


実際、岡本さんによれば、日本は世界一の孤独大国なのだ。OECD(経済協力開発機構)の調査によると、友人や同僚など他人と時間を過ごすことがほとんどない人の割合は、日本は15.3%で加盟国中トップだ。


特に男性の孤独が深刻で、友人や同僚らとほとんど、またはまったく時間を過ごさない割合は16.7%と突出して高く、平均値の3倍近い。男性では日本人男性が世界一孤独ということだ。


もっともその背景として、日本には孤独をよしとする風土があることも関係しているものと思われる。「日本人はもともと孤独が好きなのです」と諸富さんは言う。岡本さんも「日本では孤独を礼賛したり美化する考えが根強く、特に男性はそうですね」と話す。


■孤独だと認めない、日本のオジサン


プレジデント誌が実施した「孤独に関するアンケート」調査でも、日本人の多くが孤独を感じていることが判明した。男性の64.2%、女性の76.3%が「孤独を感じるときがある」と回答。女性が孤独を感じる割合が男性よりも10ポイント以上も高いのは意外な気がするが、諸富さんは「男性はプライドがあって孤独を認められないということは考えられますね。女性のほうが孤独にポジティブですから、素直に認められるということはあると思います」と分析する。岡本さんも「男性は自分が孤独であることを認めたくないのかもしれません。ただ、孤独を感じるかという主観的な質問ではなくて、1人で過ごす時間はどれくらいかなどの客観的な質問であれば、男性のほうが孤独状態にある人が多いと思います」と解説する。


孤独を感じたときに、周囲に助けを求めたり相談できる相手がいることは、事態を深刻化させないために重要だ。回答では、そういう家族や親族がいる割合は75.3%と高かった。しかし、助けを求めたり相談したりできる友人については、「いる」との回答が大幅に減少して、51.2%だ。これは逆に言えば、半数は親友がいないということだ。


さらに職場の場合は、相談できる相手がいるのは33.6%と3割まで減った。一日の大半を過ごす職場で孤独を感じている人が多いということだろう。諸富さんは「3割というのは予想外に少ないですね。仕事で困ることはたくさんあるはずで、これは非常に孤独です。職場でヘルプシーキング(援助希求)できるような仕組みに改善していく必要があります。人に助けてもらうのは正しいことだという認識を持つことが大切。そうしないと孤独が蔓延し、仕事の生産性が低下、離職率も下がりません。企業にとっては大きな問題だと思います」と話す。



岡本さんも「社員同士の心のつながりが生まれるような仕組みづくりを企業には考えてもらいたいですね。特に孤独になりやすい定年退職後の生き方も視野に入れた新しいコミュニティやネットワークの構築に積極的に取り組んでほしい」と要望する。


■楽しみが見つかる孤独時間の活かし方


「1人でいることは好きですか?」との問いに対しては、なんと82%強が「好き・どちらかというと好き」と肯定的な回答だった)。ポジティブな孤独を楽しんでいるということだろう。ただ、その1人の時間の過ごし方を見ると、男女ともに1位が「映画やドラマを見る」で、次いで「寝る」の順だ。諸富さんは「生産的な時間の使い方をしているというより、ヒマつぶしをしている印象を受けます。非常にもったいない」と語る。


「人生をもっと楽しくする方法があります。まずは、3種類の孤独のうち、③の『実存的な深い孤独』のために1人の時間を少しでも使ってほしいです。自分を見つめるための、自分と対話する時間です。これはフォーカシングと呼ばれるもので、静かに心に感じられた実感に触れ、そこから意味を見いだす心理療法です」


具体的にはどうしたらいいのか。


「最も簡単な方法は、ただボーっとすることです。そして頭に浮かんでくることを、とりとめなくメモする。自由連想法と言いますが、考えるのではなく、どんなものでもメモしていくうちに、フッと気づくことがあります。自分はこんなことを考えていたのか、実はこういうことをしたいのかなど。場所はカフェでもバーでもどこでもいい。30分くらい、コーヒーやお酒を飲みながら、ボーっとする。これを週1回でもやると、意外と人生の転機になることがあるのです」


■SNSを捨て、SNACKへ行こう


ここまで見てきたように、孤独は一概に悪いものではない。しかし、非選択的な寂しい孤独は避けたい。深刻な孤独に陥らないために、我々個人としては何をすべきか。熟年離婚の増加に見られるように、特に中高年の男性が孤独の危険にさらされていると岡本さんは注意を促す。


「日本の男性は家庭と会社以外に居場所がない人がとても多い。趣味もなく友達もいない。そしてそのままリタイアするため、妻に依存しがちです。それが離婚につながることも少なくないでしょう。ただ男性の場合、地域コミュニティでおしゃべりするだけではダメで、居場所と役割というのが重要です。達成感を欲しているからです。ですから早い段階、40代くらいから、なるべく長く仕事を続けられるような算段をつけることも1つの手です。副業であるとか、独立するとか。仕事以外にも、趣味やサークルなど何でもいいので、どんどん人とのつながりをつくっていくことが大切だと思います」



難しく考えることはなく、近所に行きつけの店をつくるのでも構わないという。


「特にスナックがおすすめです。居酒屋とは違い、ママというファシリテーターがいるからです。会話が苦手な人でも、ママがうまく媒介になって、ほかのお客さんとの間を取り持ってくれます」(岡本さん)


諸富さんも「フラッと行ける場所はつくっておいたほうがいいですね。飲み屋とかスナックとかどこでもいいので」と同意見だ。諸富さんは、さらに異性の友達をつくることが大切だとつけ加える。「親しい異性の友達と深く交流している人は長生きできるという研究結果もあり、コミュニティの中でどれだけ異性との友人関係があるかが大事だと思います。特に男性は女性の友達がいるかどうかで寿命が決まるといわれています」。


孤独対策としてもう1つ、SNSへの依存をやめることだと諸富さんはアドバイスする。


「いま多くの人が承認欲求を強めています。SNSがそれに拍車をかけている。『いいね!』が少ないと寂しさを感じる。若者が『いいね!』の数で一喜一憂するのは仕方ないかもしれませんが、いい大人がそれでは未熟すぎる、悲しいですよね。成熟した大人であれば、人から承認されなくても、自分自身で十分に承認できる段階、人に左右されない『自己価値観』を確立していなければいけません」


孤独に苦しまないために、まずはSNSを捨て、スナックへ行こう!


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岡本純子

コミュニケーション・ストラテジスト

読売新聞経済部記者、電通パブリックリレーションズコンサルタントを経て、グローコム代表取締役社長。著書に『世界一孤独な日本のオジサン』。




諸富祥彦

明治大学文学部教授

教育学博士、心理療法家。大学で心理学を教えるかたわらカウンセリング活動を続ける。『孤独の達人』『「本当の大人」になるための心理学』など著書多数。

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■▼老後の不安があっても増える熟年離婚





■▼7割が孤独を感じている




■▼せっかくの一人の時間は暇つぶし



調査方法:NTTコム リサーチで実施。20代〜60代の男性265人、女性270人、計535人から回答を得た。調査日は2019年1月18〜21日。



(ジャーナリスト 田之上 信 撮影=大杉和広 写真=宇佐見利明、iStock.com)

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