鉄道でも始まった「QRコード決済」はどこまで浸透するか

4月7日(日)7時0分 NEWSポストセブン

 量販店やコンビニなど利用シーンが増え、ポイントやキャッシュバックキャンペーンによって、QRコード決済が急速に普及している。鉄道事業者の一部でもQRコード決済の導入が始まった。ライターの小川裕夫氏が、QRコード決済がどのように導入をすすめられ、検討されているのかについてレポートする。


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 JR東日本のSuicaをはじめとするIC乗車券は、すでに広く定着した。総発行枚数は7000万枚に及び、2018年度だけでも約790万枚も発行されている。最近では、コンビニやファミレス、スーパーなど街のいたるところでも使用できるようになった。


 紙のきっぷとは異なり、IC乗車券は改札機で紙詰まりエラーを起こすことがない。また、中に溜まった紙のきっぷを回収する作業も生じない。


 乗客にとっても便利だが、IC乗車券は鉄道事業者にとっても大幅に駅業務を省力化することが可能なツールとして積極的に導入が進められた。


 IC乗車券の導入が進んでいた鉄道事業者だったが、ここにきてQRコードを乗車券の券面や支払いに活用する、QRコードの活用を模索する兆しが出ている。


 バーコードを四角形にしたようなQRコードには、見慣れた横長のバーコードより多くの情報を付与でき、漢字やかなが混じる日本語の情報にも対応しやすい。スマホを使えば、QRコードに書き込まれた情報が読み取ることができるので、最近はクレジットカードのように現金がなくても、QRコードを読み取ることで商品を購入することが可能になった。ほかにも、QRコードはさまざまな場面で活用できる。


 QRコード決済がクレジットカードやICカードと大きく異なるのは、専用の読み取り端末を必要としない点にある。導入コストが安く済むため、飲食店を中心に個人経営店で急速に普及している。


 一方、JR東日本や東海、大手私鉄ではIC乗車券が広く使用されている。まだQRコードの本格導入は始まっていない。


 IC乗車券にしろQRコード乗車券にしろ、いずれにしても鉄道事業者は改札機を設置しなければならない。大手の鉄道事業者では、すでにICを読み取れる改札機を設置している。それなのに、わざわざQR乗車券やQRコード決済に対応した改札機に切り替える必要はない。


 しかし、地方に目を転じれば事情は異なる。地方の中小鉄道にとって、IC乗車券を導入するコストは大きな出費になる。そのため、地方の鉄道では、いまだIC乗車券は普及しておらず、IC乗車券に対応した改札機も普及していない。地方の鉄道路線だったら、QR改札機を設置する余地がある。


 ゆいレールを運行する沖縄都市モノレールは、2014年にQRコードが券面に刷り込まれたQR乗車券の販売を開始した。沖縄都市モノレールの営業企画課担当者は、導入の経緯をこう話す。


「QR乗車券を導入した背景は、それまで使っていた自動改札機の更新がきっかけです。それまでの乗車券は、裏面に磁気データが刷り込まれていました。そのため、使用済みのきっぷは産業廃棄物として処分しなければなりません。一方、QR乗車券は単なる紙です。簡単に処分できます。磁気券の処分は業者に頼まなければならず、費用がかさみます。処分費用を縮減できたことが、QR乗車券を導入した最大のメリットです」(同)


 QR乗車券を導入したことで、沖縄都市モノレールの改札機にはきっぷの挿入口がない。そのため、島外からの観光客が戸惑うこともあるという。しかし、デメリットはそれぐらい。通常のきっぷと比べ、特に支障は出ていないようだ。


 磁気券からQR乗車券への切り替えは、鉄道事業者におけるQRコード導入の一環ではある。しかし、これはQRコード決済とは言えない。あくまでQRコードを活用した一事例に過ぎない。


 沖縄都市モノレールでは、QR券だけではなく、スマホ画面にQRコードを表示させて、IC乗車券と同様に読み取り部分にタッチして運賃を支払う方式も実験した。だが、中国のアリババによるAlipay(アリペイ)だけの対応だったこともあって、ゆいレールでQRコード決済はあまり利用されなかった。


 昨年から今年にかけてQRコード決済をめぐる日本の状況は大きく変化した。それまでは、前出のAlipayや中国版LINE微信のWeChatPay(ウィーチャットペイ)を利用する中国からの訪日観光客による利用がほとんどだった。しかし、昨年末の100億円キャンペーンで話題を振りまいたヤフーのPayPay (ペイペイ)を皮切りに、LINE Pay(ラインペイ)など、現在は日本企業によるサービスがいくつも登場。わずかな期間で、スマホを使ったQRコード決済は若者の間では当たり前のように使われるようになった。


 そうした社会の変化を捉え、湘南モノレールでは今年4月から一部の乗車券やグッズなどをPayPayで購入できるようにした。湘南モノレールの担当者は、言う。


「湘南モノレールは、長らくSuica やPASMOといったIC乗車券に未対応でした。2018年からIC乗車券が利用できるようになりました。それにより、利用者が増えています。そうした事情を踏まえ、2019年3月からPayPayを導入することを決めたのです」


 湘南モノレールでは、PayPayで磁気券と呼ばれる通常のきっぷを購入することはできない。通常のきっぷを購入するには、従来の方法で買うしかない。そのため、PayPay導入で鉄道の利用者が増えたわけではない。それでも、PayPayの導入は大きな効果があったと担当者は説明する。


「PayPayを導入したことにより、弊社が経営する湘南ボウルというボーリング場の利用者が増加しました。導入した時期が春休みシーズンだったこともありますが、主に中高校生がPayPayを利用しているようです」(同)


 沖縄都市モノレールや湘南モノレールといった鉄道事業者は、規模が小さいゆえに設備更新の費用も少なくて済む。改札機更新のタイミングに合わせれば、QR導入のハードルは低い。


 一方、大手鉄道事業者にはすでにIC乗車券が広く普及している。これまで構築してきたシステムから、QRコードへと切り替えるのは大掛かりな作業を伴う。費用も桁違いになるだろう。また、IC乗車券に比べるとQRコードは、読み取りにワンテンポの間がある。IC乗車券に慣れていると、QR乗車券やQRコード決済のタイムラグに戸惑ってしまう。それだけに、簡単にIC乗車券からQRへと切り替えられないといった事情もある。


 おしなべて大手鉄道事業者がQR乗車券やQRコード決済の導入に二の足を踏む中、東京メトロが2020年をメドにQRコードの活用を模索している。


「現段階ではQRコード活用の方針を決めただけなので、QR乗車券の導入になるのか、それともQRコード決済を導入するのかは不明です。細かい部分は、これから詰めることになります」(東京メトロ広報部広報課)


 現在、国内におけるキャッシュレス決済比率は約18パーセント。2025年までに、政府はこの比率を40パーセントへ引き上げることを目標にしている。


 JR東日本でもQRコードのリーダー機能を備えた券売機が登場しているが、今のところは活用されていないようだ。果たして、鉄道業界でQRは浸透するのか?

NEWSポストセブン

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