マツダが今、世界的に逆風が吹くディーゼルエンジンにこだわる理由

4月9日(土)6時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 なぜ、マツダはディーゼルエンジンにこだわり続けるのか?

 マツダは新型クロスオーバーSUV「CX-60」を欧州に続いて日本でも発表したが、メディアやユーザーの間では、そうした疑問を持つ人が少なくない。

 なぜならば、2020年代に入り、それまでディーゼル乗用車が市場の中核を占めていた欧州で一気にBEV(電気自動車)シフトが加速しており、欧州自動車メーカーの多くがディーゼル乗用車やディーゼル商用車の量産を段階的に縮小し、最終的には休止するとの意向を示しているからだ。


大排気量ディーゼルエンジンを投入

 こうした状況下で、マツダは3.3リッター直列6気筒の新たなディーゼルエンジンを開発した。これまでは2.2リッター直列4気筒が最大サイズだった。

 このディーゼルエンジンを、エンジン縦置きのFR(フロントエンジン・リア駆動)車に搭載し、CX-60を皮切りに「マツダ・ラージ商品群」としてグローバルで展開する。

 CX-60は、電動化についても対応している。具体的には、2.5リッターガソリンエンジンと電動モーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)、また3.3リッターディーゼルエンジンと、低回転域を小型モーターでアシストする「M HYBRID BOOST」技術を組み合わせた48Vマイルドハイブリッド(MHEV)もラインナップしている。

 だが、やはり気になるのは、この時期に大排気量のディーゼルエンジンを投入する狙いである。


エンジンの熱効率を引き上げる

 その点について、マツダが報道陣向けに開催した「ラージ商品群技術フォーラム」の中で、エンジン開発総責任者であるマツダ執行役員の中井英二氏が詳しく説明した。

 それによると、マツダのエンジン開発は、同社が以前から掲げている「理想の燃焼に向けたロードマップ」に基づいて行われている。

 基点となっているのは、「CX-5」(2012年発売)から始まる第6世代商品群で採用された「SKYACTIV(スカイアクティブ)」というエンジン開発の思想だ。CX-5登場によって、日本市場でディーゼル需要が拡大したのは記憶に新しい。

 マツダが目指すのは、エンジン気筒内での「理想の燃焼」だ。その実現に向けて、圧縮比、比熱比、燃焼期間、燃焼時期、壁面熱伝達、吸排気行程圧力差、機械抵抗という7項目を、「熱効率のパラメーター(制御因子)」として設定。ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの熱効率を引き上げるべく、パラメーターの調整を重ねてきた。

 結果的に、ガソリンエンジンでは圧縮比をより低い方向へ、またディーゼルエンジンではより高い方向にすることで、熱効率を高めることに成功した。“エンジンの常識”に反するマツダのその試みは世界を驚かせた。

 また、燃焼効率を高めることでディーゼルエンジンの排出ガスのクリーン化を進め、排ガス後処理装置のコスト削減にもつながった。


内燃機関の燃焼を極めることも重要

 そうしたSKYACTIVの開発思想は、今回新たに導入した3.3リッター直列6気筒ディーゼルエンジン開発にも、もちろん継承されている。

 新エンジンでは、ピストン上部の形状を2つの卵型にすることで、空間制御予混合燃焼を導き、2.2リッターディーゼルエンジンに比べてさらにクリーンな燃焼を実現した。排気量をアップしても、無駄に燃料を食うことにはつながらず、エンジン内に吸い込む空気量を増やすことで綺麗な燃焼に結びついているという。

 中井氏が提示した図によると、3.3リッターディーゼルエンジンは2.2リッターディーゼルエンジンに比べてトルクが24%アップしていると同時に、全トルク域で燃費が向上しトータルで8%改善している。さらに、排気ガス内のNOx(窒素酸化物)も低減した。

 こうした成果を基に、「中長期的な環境対応では、電動化はもとより、(ガソリンエンジンやディーゼルエンジンという)内燃機関の燃焼を極めることも重要だ」(中井氏)とするのがマツダの基本姿勢である。


次世代バイオディーゼル燃料でレース参戦

 マツダはディーゼルエンジンのカーボンニュートラル(CO2の排出量と除去量を均衡させて全体的に排出ゼロにすること)についても実用化を念頭に置いた活動を加速させている。

 国内モータースポーツのスーパー耐久シリーズに、使用済み食用油や微細藻類油脂から製造した次世代バイオディーゼル燃料を使う1.5リッターディーゼルエンジン搭載の「デミオ」で2021年最終戦(2021年11月13〜14日、岡山国際サーキット)から参戦を始めた。

 2022年のシーズンは開幕戦の鈴鹿5時間耐久レース(3月19〜20日、鈴鹿サーキット)から、ST-Qクラスに「マツダ2」でフル参戦となる。

 3月19日に鈴鹿サーキットで記者会見を行ったマツダの丸本明社長は、「様々な走行環境で、バイオディーゼル燃料の実証を行い、こうした活動を通じてバイオディーゼル普及促進を行う。マツダとしてあくなき挑戦を続けて、性能を改善していく」とレース参戦の意義を唱えた。

 また「実は、(ST-Qクラスで好成績を上げるには)さらにパワフルなレースマシンが必要だと社内から声があがり、2.2リッター300馬力エンジンをマツダ3に搭載し、今シーズン後半から投入する準備を始めた」というサプライズ発言が飛び出した。この新型レースマシン「マツダスピリットレーシング マツダ3バイオコンセプト」は、「オートモーティブカウンシル2022」(4月15日〜17日、千葉県幕張メッセ」で初公開される。

 またマツダは次世代バイオディーゼル燃料の研究開発として、ひろしま自動車産学官連携推進会議のエネルギー専門部会活動の「ひろしま“Your Green Fuel”プロジェクト」に参画。カーボンニュートラル燃料の広島地域での地産地消モデルの構築を目指す。

 果たして、マツダが注力する次世代型ディーゼルエンジンは、日本を含めグローバルでどのように評価されるのだろうか? マツダの今後に注目したい。

筆者:桃田 健史

JBpress

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