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「中国で売れている自動車」の驚くべき内訳

JBpress4月10日(月)6時14分
画像:2016年の北京モーターショーでマツダが公開したSUV「CX-4」(筆者撮影)
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2016年の北京モーターショーでマツダが公開したSUV「CX-4」(筆者撮影)
画像:『中国のワナ 自動車産業月例報告10年分』(三栄書房)
『中国のワナ 自動車産業月例報告10年分』(三栄書房)
画像:牧野茂雄(まきの・しげお)氏
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牧野茂雄(まきの・しげお)氏
画像:浙江省吉利汽車の「豪情」。クルマの傍に立っている女性はコンパニオン(筆者撮影、以下同)
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浙江省吉利汽車の「豪情」。クルマの傍に立っている女性はコンパニオン(筆者撮影、以下同)
画像:「中国で売れている自動車」の驚くべき内訳
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 2016年に全世界で販売された新車の数は推計で9320万台。そのうち2803万台は中国本土で販売された。いまや中国は世界最大の自動車消費国である。

 中国の自動車市場の飛躍的な成長を1980年代半ばからウォッチし続けてきたジャーナリストの牧野茂雄氏が、このたび『中国のワナ 自動車産業月例報告10年分』(三栄書房)を上梓した。「Motor Fan illustrated」に2006年から連載されてきた10年分コラムを元に、加筆と「後日談」を加えたものである。

 拡大著しい中国市場を攻め落とすため、日系メーカーも欧米メーカーも前のめりになって大規模な投資を敢行している。だが、中国の自動車市場の成長と変化を長らく見つめてきた牧野氏は、そこには「落とし穴」がひそんでいると警鐘を鳴らす。一体どういうことだろうか。


販売台数の3割はSUV

 牧野茂氏は最近の中国市場の特徴について「驚くべきなのは売れている車の内訳です」と語る。

 中国では2016年に販売された2803万台のうち905万台がSUV(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)だった。販売台数の32%をSUVが占めるのだ。ちなみに日本では軽も含めて全体の10%以下である。

 SUVとは、車室床が地面から高い位置にあり、ある程度の未舗装路や冠水路でも走破でき、スノーボードやキャンプ道具など大きくかさばる荷物を積むための荷室容積を持ったモデルだ。「ルーツは米国のジープなど軍用多目的車両です。それを1970年代末のフォードやGM(ゼネラル・モータース)が、スポーツのためのユーティリティ(有用)というジャンルに仕立てたのがSUVの始まりです」(牧野氏)。

 新興国の自動車市場はまず4ドアセダンから始まる。日本も韓国も、そして中国もそうだった。

「中国では最初に4ドアセダンが共産党幹部専用の移動具として使われました。一般大衆が自由に自動車を所有できるようになったのは90年代後半です。自動車市場が拡大したのは、中国がWTOに加盟した2001年12月以降でした。

 しばらくは、『轎車』(セダン、クーペ、ステーションワゴンなど)というカテゴリーが需要を独占していました。ところ、2010年以降からMPV(多人数乗車できる多目的ワゴン)とSUVが増えていきます。特にSUVは一気に流行車となり、2013年に年間300万台だった中国でのSUV販売台数は3年で3倍になりました」

 実際、2016年の北京国際汽車展覧会(北京モーターショー)では、SUVの新型車の展示が目立った。マツダは日本で販売予定がない「CX-4」を真っ先に北京で披露した(冒頭の写真)。

 一体なぜ中国でSUVが流行しているのだろうか。

「いろいろな理由があると言われています。まず、中国の道路事情です。『自宅から幹線道路に出るまでの短い区間が舗装されていない』『少しの雨で冠水する道路を毎日通らなければならない』といった事情があると言われています。

 ただし、SUVは道路インフラが整っている沿岸部大都市でよく売れています。生活必需品としてSUVを購入した人は全体の半分以下でしょう。大半の消費者は『大きくて立派に見える』『カッコいい』『新しい乗り物に見える』といった理由でSUVを選んでいるようです」

 SUVは生活様式や価値観が多様化したあとに普及するという。つまり「SUVが売れている現状は、中国がもはや新興国ではない証拠と言えるでしょう」。


海外メーカーがSUV熱を煽った

 こうした中国のSUV熱を煽ったのは、中国で自動車生産を行っている海外メーカーだった。始まりは日本車である。トヨタ「RAV4」「ランドクルーザー」やホンダ「CR-V」、三菱「パジェロ」などが中国市場でまず認知された。SUVといえば日本車という時代は長かった。

 そこにまず米国メーカーが参入する。続いてBMWやメルセデスベンツなど欧州のプレミアムブランドも、中国市場にSUVを投入した。大都市の高層住宅に住む富裕層は海外ブランドのSUVを買う。

 そして、ここに来て目覚ましい勢いで台頭しているのが中国資本の民族系自動車メーカーだ。2016年は、905万台のSUVのうち約35%を中国メーカーが販売した。中国全土での販売認可を得ていない地方の中小規模自動車メーカーもSUVを商品に持つようになっきた。

 欧米勢と中国企業が矢継ぎ早に新型車を発売した結果、現在は、SUVに占める日本車のシェアは20%程度でしかない。


「中国のワナ」にはまる危険性

 牧野氏は、今後も中国で高級車メーカーのSUVが続々と登場すると語る。

「ベントレーが超高級SUVを発売しました。高級セダン専業だったキャディラックも、小型SUVを発売します。キャディラックはすでに大型SUVを持っていますが、中国をターゲットに小型を開発しました。ロールスロイスやランボルギーニも近くSUVを投入します。

 こうした状況は10年前では考えられないことです。欧米市場で年間2000〜3000台しか売れる見込みがなければ、開発のリスクは犯しません。しかし、中国がここに加わりポテンシャルは2倍以上になりました」

 だが、牧野氏は、こうした自動車メーカーの動向を「中国のワナ」にはまる危険性があると表現する。

「2017年の中国市場はSUVが1000万台を超えるでしょう。全体市場は3000万台に近くなると思います。この規模こそがワナなのです」 つまり、もはや中国抜きには海外自動車メーカーの商品企画や経営戦略が成り立たなくなってきているのだ。

「BMW、メルセデスベンツ、アウディのドイツ3社は大から小までずらりSUVをそろえました。この3社はプレミアムブランド販売台数のトップ争いをしています。中国での販売台数をいかに確保するかで順位が入れ替わります。すでに中国市場にどっぷりと引きずり込まれているということです」

 海外メーカーはどんどん膨らむ中国の市場規模に魅せられ、大規模な投資を繰り返してきた。自分で種を蒔いたとはいえ、中国市場への過剰なのめり込みは危うさを感じさせる。


もう「コピー車」などとは言えない

 日本メーカーや欧米メーカーにとって、中国市場の不安材料はほかにもある。中国メーカーが目覚ましい勢いで開発力・技術力を高めていることだ。

 牧野氏は、今から16年前の2001年に開かれた上海国際汽車展覧会(上海モーターショー)の写真を見せてくれた。写真に写っているのは、メルセデスベンツのようなフロントマスクの小型ハッチバック車だ。浙江省吉利汽車の「豪情」という小型車である(下の写真)。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図表をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49605)

「車体寸法は、当時中国で天津汽車がライセンス生産していたダイハツ『シャレード』とほぼ同じです。『シャレード』の実車で寸法取りしたボディパネルを使っているという話でした。エンジンはトヨタから完成品で購入していました」

 当時は中国メーカーが海外メーカーと対等に渡り合うことは不可能だった。ところが、その浙江省吉利汽車が今やボルボ・カーズのオーナーである。「フォードが買収したボルボを、今度は吉利が買収したのです」。

 現在、吉利汽車はボルボが設計を支援した大型高級セダンを商品に加えている。「部品は日系サプライヤーも供給しています。吉利をはじめとする中国独立系(非国営)メーカーの製造品質はどんどん良くなっています」と牧野氏は言う。

 中国メーカー製のSUVの品質ももちろん向上している。

「実際に中国で何台かのSUVに試乗しましたが、長城汽車の人気モデル『哈弗(Haval)』シリーズなどは良くできています。

 たとえば、1500ccターボエンジンを積む新型車『長城H6』の車両価格は、同クラスの日本車のほぼ半値です。値段は安いのですが、ドイツのボッシュが開発した第9世代の車両姿勢制御装置などの電子装備は日本車と同レベルです」

 これまで中国メーカーの最大のネックは、開発できても製造できないという点だった。しかし「最近は多方面から支援を得て克服しつつあります。自動車部品サプライヤーも中国に肩入れしています」。

 中国メーカーでは日本人技術者も多く活躍しているという。「とくに機械加工や熱処理といった職人的な技が求められる分野は日本人が技術を伝授した例が多いですね」。

 牧野氏は「何よりも、いま売れているクルマを素早く商品化する決断力があります」と中国メーカーの強さの秘密を説明する。「経営陣が判断する場合もあれば、外部のコンサルタントが教示する場合もあります。また、世界中に張り巡らされた情報ネットワークも駆使します。中国系移民は世界中にいますから」。

「もう中国車を『コピー車』などとあなどってはいられません。性能・機能と製造品質の向上は著しいものがあります」 牧野氏流に解釈すると、これも日本メーカーを待ち受ける「中国のワナ」なのだろう。

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筆者:鶴岡 弘之

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データ提供元:アニメキャラクター事典「キャラペディア