70歳のセックスがこんなに楽しいなんて…「膀胱、子宮、直腸が腟から飛び出る」更年期障害の女性がやったこと【2025年3月BEST5】

2025年4月12日(土)16時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/m-gucci


2025年3月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。健康部門の第1位は——。


▼第1位 70歳のセックスがこんなに楽しいなんて…「膀胱、子宮、直腸が腟から飛び出る」更年期障害の女性がやったこと
▼第2位 認知症リスクがどんどん下がる…82歳の脳科学者も実践している「高齢者はやらなきゃ損」な日課
▼第3位 1日3食も、早寝早起きも、朝の洗濯もやらなくていい…医師・和田秀樹「60代から本当に必要な習慣」
▼第4位 「口癖」を聞けば一発でわかる…「ヨボヨボ老人になる人」と「死ぬまでピンピンしている人」の決定的な差
▼第5位 この器官が衰えるとヨボヨボ化が一気に進む…視力でも味覚でもない「認知症の発症を遅らせる」ための必須条件


更年期障害がひどくなると、体にどのような影響があるのか。自身の経験をもとに男女の性機能について取材を続けてきた径書房代表の原田純さんは「昔からPMS(月経前症候群)がひどく、イライラや腹痛、月経痛に散々苦しめられてきた。55歳で閉経した時は本当にうれしかったが、その後さらに思いもよらない病に罹患していることがわかった」という——。
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■70歳の今も恋人とセックスを楽しんでいる


「産婦人科にはできるだけ行きたくない」
「アソコに触るのはお風呂で洗うときだけ」
「もう恋愛もセックスも一生しなくていい」


60歳のころ、私はそう考えていた。ところが70歳になったいま、私は恋人とセックスを楽しみ、本やYouTubeで多くの人に恋愛や腟ケアを勧めている。まるで別人である。


今日は、なぜそんなことになったのかを、お話ししよう。


■「セックスレス」が引き起こした体の異変


夫とセックスレスになったのは、35歳のころだった。そのまま共に暮らし、50歳を過ぎてから離婚したので、私は60歳になるまで、25年近くセックスをしていなかった。最初のころは寂しさもあったが、やがて、セックスがしたいとも恋人が欲しいとも思わなくなった。何年ものあいだ、「私には女性器なんてありません」という顔をして生きてきたのだ。


つまり、腟をほったらかしにしたのである。けれども、そのせいで、私は多くの病を抱えることになった。


月経痛は若いころからあった。だが、それが原因で日常生活に支障をきたすようになったのは40代半ばになったころ。女性ホルモンが急激に減少する更年期であった。その後、歳を重ねるごとに月経痛は苛烈になり、やがて排泄器官にも、無視できない問題が起きてきた。


月経痛や排泄の問題は、ある日、突然、起きたわけではない。徐々に、静かに進行していったのだ。そのため、それらの問題は私にとって異常事態ではなく、「いつものこと」になっていた。痛くても苦しくても病気とは思わず、「これは体質だから、耐えるしかない。受け入れるしかない」と思っていたのだ。そのせいで私は、閉経するまでの10年近くを、ただひたすら痛みや苦しみに耐えて暮らすことになった。


本当に愚かだった。けれどもこれは、私だけに起こったことではないだろう。


■「婦人科タブー」が女性の健康を蝕んでいる


セックスに関わらない女性の下(しも)の問題が、一般読者を対象とする新聞や雑誌で散見されるようになったのは最近のこと。それまでは、ほとんど表立って語られることはなかった。


なぜなら日本では長いこと、女性が排泄や、特にセックスに関係するようなことを、人前で話すべきではない、そんな話をするのは恥ずべきこと、下品なことと考えられてきたからだ。そのため私がそうだったように、多くの女性が、下に問題が起きても、よほどのことがない限り誰にも相談することなく、黙って一人で耐えてきたのである。


最近、ある大学の先生が教えてくれた。彼女がいま教えている女子大生も、みな「産婦人科に行くのはイヤ」と言うそうだ。「性病や妊娠を疑われてしまうから」と。産婦人科に行くだけで、「ふしだら」という烙印を押されてしまうと考えているのだ。女性が、自分の下の問題やセックスの問題としっかり向き合うことは、いまだにタブーになっているのである。


■「初潮」は知られても、「終わり」は知られていない


ご存じと思うが、女性の骨盤内には子宮・膀胱・直腸がある。私たちは直立歩行しているので、それらが下がってこないよう支える必要がある。その役目を担っているのが骨盤底筋と呼ばれる筋肉群だ。この筋肉が弱ると、これらの臓器は下がってくる。これは男性も同じである。


男性と違うのは、女性の骨盤底筋には尿道と肛門以外に、体外に通じる穴がもうひとつあることだ。腟である。性交や出産などに使われるため、腟の筋肉は極めて柔軟に作られている。その柔軟な筋肉でできた腟に隣接して、膀胱・子宮・直腸がある。つまり、これらの臓器と腟は、極めて密接な関係にあるのだ。


中高年になり、セックスから遠ざかると、女性は腟のことを気にかけなくなる。お役御免と言わんばかりに、腟があることすら忘れてしまったりする。


けれども忘れないでほしい。くり返すが、腟は、排泄器官と密接な関係にある。腟の健康が損なわれると、排泄機能に影響が出る。尿もれや便秘がたびたび起きるようなら、腟の不調を疑う必要があるのだ。


女性ホルモンが、女性の体調だけでなく、卵巣や腟に、大きな影響を与えることはご存じだろう。女性ホルモンによって少女が女性的な体つきになり、初潮を迎えることは、おそらくみな知っていると思う。


だが、女性ホルモンが急激に減少する40代以降のことは? 女性ホルモンがほとんど底を打ってしまう50代以降のことは? 女性の体、特に腟にどんな変化が起きるか、女性ですらあまり知らないのではないだろうか。


ということで、ここからは、女性ホルモンが減少したことによって、私の体になにが起きたかをお話ししよう。私は20年近くも、女性ホルモンのせいで本当にひどい目にあってきたのだ。


■生理前のイライラがとにかく止まらない


40代に入ると、女性ホルモンが急激に減少し、それによって更年期障害が起こることは、女性なら多くの人が知っているだろう。私も、なんとなくは知っていた。だが、その知識は、きわめていい加減なものだった。人ごとのように思っていたのだ。だが、更年期障害は私の想像をはるかに超えて、私の人生に襲いかかってきたのである。


私が、耐えがたい月経痛に襲われるようになったのは1999年ごろ。いまから25年以上前である。そのころはまだ、PMS(月経前症候群)や、月経困難症などは、ほとんど知られていなかった。そして、そのふたつの疾患が、更年期になると重症化してくることも、やはりほとんど知られていなかった。だから私は、前に述べたように「これは自分の体質だ」と思い、ひたすら耐えていたのである。


当時の私の、月経前後の様子を書き出してみよう。


月経になる数日前になると、感情の起伏が激しくなり、イライラが募ってくる。そのときは結婚していたので、いつも夫とケンカになった。原因はすべて些細なことだったと思う。それでも私は自分を抑えることができず、夫に食ってかかっていた。


写真=iStock.com/Rawpixel
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■夫婦喧嘩の本当の原因は女性ホルモンだった


女性のヒステリーと言われたりもするが、これはPMSの症状のひとつ。PMSは体に不調をもたらすが、精神にも大きな影響を及ぼすのである。つまり、私が人一倍、口うるさい女だったわけではなく、女性ホルモンの減少によってPMSが重症化し、情緒不安定になっていたのだ。


それがわかったのは閉経後だったが、「そうだったのか」と、ちょっと安心した。夫とケンカになるのは私の性格のせいだと思い、いつも自分を責めていたからだ。


ちなみに、閉経してからは、嘘のようにイライラがなくなった。もちろん怒ったり不安になったりすることはあるが、感情の起伏は、閉経前に比べれば、はるかに穏やかになった。


女性だけでなく男性も、連れ合いの女性の月経周期を知っておいたほうがいい。女性のイライラは、女性のせいではなく、ホルモンが大きく影響していることが少なくないからだ。周期がわかっていれば、無用なケンカは避けることができる。


■便秘と思ったら腹痛と下痢、さらに月経痛…


私にはもうひとつ、月経が始まる前に起こる不調があった。便秘である。これもあとになって知ったことだが、排卵が起こると卵が流れないよう、腸の動きが弱まって便秘がちになるそうだ。不快な便秘も、ホルモンの影響だったのだ。


しばらくして月経がはじまると、イライラは嘘のように消える。そこで初めて、「あぁ、あのイライラは月経前だから起こっていたのだ」と気がつく。夫にしてみれば、迷惑千万だったろう。


便秘も、月経が始まると一気に解消する。腹痛をともなう、激しい下痢になるのだ。さらにそのうえ、月経痛が耐えがたい痛みとなって襲ってくる。鎮痛剤を飲まなければいられなかった。薬が切れると立っていることもできず、下腹部を押さえて、ひたすらうめいていた。


これもあとになってわかったことだが、この痛みは、月経困難症と子宮内膜症が原因であった。更年期になると顕在化してくるこの病が、痛みを引き起こしていたのだ。


閉経する2年ほど前、出血量が増えて、大きな生理用ナプキンを2枚重ねても漏れだすほどになった。さすがにこれはおかしいと思い、大決心で有名な大学病院の婦人科を受診した。子宮内膜症という診断はここで下されたが、それ以外のことはわからなかった。


■月の3分の1は月経で苦しむ不毛さ


現在は、PMS・月経困難症・子宮内膜症には、低用量ピルや女性ホルモン補充療法などが勧められている。だが、受診した大学病院で、その治療を勧められることはなかった。2005、6年当時、それらはまだ、一般的な治療法にはなっていなかったのだろう。結局、痛み止めを処方されただけで終わった。


閉経すれば、PMSも月経困難症も子宮内膜症もすべて改善する。だから、積極的な治療は必要ないと判断されたのだと思う。結局、放置である。それからも数年、月経前のイライラや便秘、月経が始まってからの耐えがたい痛みに苦しんだが、55歳でついに閉経。本当にうれしかった。


イライラから始まり、月経痛が治まるまでにかかる日数はおよそ10日間。つまり私は、月の3分の1は月経で苦しんでいたことになる。45歳から55歳までの10年間は、友人から旅行や食事に誘われても、月経に重なりそうなときはつねにお断り。本当に残念であった。


最近は、更年期障害だけでなく、PMSや月経困難症、子宮内膜症を改善する治療が、目覚ましい進歩を遂げている。現在、更年期障害の治療として行われている女性ホルモン補充療法は、女性ホルモンの急激な減少を抑え、閉経に向けてソフトランニングさせることで、更年期障害を軽減させる療法である。


■閉経後の体調不良は「老化」ではなかった


女性ホルモンに振り回された私の話を、ここで終わりにできればいいのだが、ところがどっこい。私は、その後さらに、思いもよらない病に罹患していることがわかった。


閉経して、情緒不安定や月経痛とはおさらばしたものの、頭痛・腰痛・便秘・冷え性・不眠症などは相変わらず。感情の起伏は穏やかになったが、不定愁訴とまではいかないものの、いつもなんとなく落ち込み気味。体形も、猫背やガニ股という、老人特有の体形に近づきつつあった。


だが、体調不良や気分の低迷は閉経前からあったし、体形の変化も、歳を考えれば不思議ではない。だから私は、またもや「これは体質。もう歳だから仕方がない」と考え、治療と呼べるようなことはなにひとつしていなかった。


ところがそれが、大間違いだったのだ。自分ではまったく気づいていなかったのだが、閉経後、いや、おそらく閉経前から、私の体のなかではふたつの病が少しずつ、だが間違いなく着実に、悪化の一途をたどっていたのである。


ひとつは「骨盤底障害」。そしてもうひとつは「GSМ(ジーエスエム〈閉経関連尿路生殖器症候群〉)」である。


■膀胱・子宮・直腸が腟から出てくる


骨盤底障害は、経腟出産した女性に起こることが多い。骨盤底筋群は、出産によって必ずダメージを受けるからだ。加齢に伴って女性ホルモンが減少してくると、その影響で筋力が弱ってくる。すると、過去に受けたダメージが顕在化してくるのだ。


最初に現れる症状は、ほとんどの場合、尿もれである。私の場合、最初に現れたのは便秘だった。尿もれか便秘か、人によって現れ方は違うかもしれないが、この病になると、排泄に関わる不調が起きてくることが多い。


写真=iStock.com/Satjawat Boontanataweepol
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進行すると、膀胱・子宮・直腸が落ちてきて腟壁を押し、腟のなかに出っ張ってくる。しまいには、腟壁もろとも、腟口からそれらの臓器が出てきてしまう。昔は「女の脱腸」と呼ばれていたが、現在も、ある日突然、腟口からなにかが飛び出してきて、初めて「おかしい」と気づく人がいる。腟は、腟口を除くと鈍感な臓器なので、骨盤内臓器が実際に体外に出てこなければ、気づけないのだ。


日本人女性の70%が予備軍と言われているほどで、けっして珍しい病ではない。閉経しても改善は見込めず、静かに進行する。


GSМも、女性ホルモンの減少が引き金となって発症する。2014年にアメリカで行われた「国際女性性機能学会」で正式に認定された新しい病なので、知らずにいる女性もいるだろう。だが、GSМは、50代以降の女性の50%に発症するという。これまた、少しも珍しくない病なのだ。この病もまた、閉経しても改善することなく進行する。


■まじめに、女性器を鏡に映して見てほしい


GSМの主な症状は、腟や外陰の不快感(ムズムズ・痒み・痛みなど)、それから頻尿・尿もれ・再発性膀胱炎・性交痛。外陰や腟、クリトリスの萎縮などである。


尿もれは、骨盤底障害とGSМに共通して現れる症状である。尿もれパットが当たり前に売られている昨今、心当たりのある方は少なくないだろう。


自分の女性器を、鏡に映して見てほしい。若いころに比べて、大陰唇や小陰唇がしなびた感じになっていないだろうか。赤くただれたようになっているところはないだろうか。正常であれば縦長の穴であるはずの尿道口が、丸い穴になっていないだろうか。このような所見があれば要注意である。


私の場合は、あきらかに大陰唇や小陰唇がしなびて小さくなっていた。さらにさらに、これはあとで気づいたことだが、おりものが出なくなっていた。下着が汚れなくなっていたのだ。これは外陰や腟が乾燥し、潤いがなくなっていることの表れである。


そしてもうひとつ、GSМに罹患しているかどうかの目安がある。子宮がん検診で腟鏡を入れられたとき、激しい痛みに襲われるかどうかである。痛みがあるようなら、外陰や腟が乾燥し、萎縮している可能性がある。セックスをしたら、性交痛を経験することになるだろう。


■「腟ケア」や骨盤底筋体操で体が若返った


腟の乾燥は、骨盤底筋障害やGSМに罹患する予兆である。女性ホルモンが減少すると、腟に潤いがなくなってきてGSМが発症する。潤いがなくなった腟の筋肉は、柔軟性や弾力を保つことができなくなる。すると膀胱・子宮・直腸が腟のなかに落ち込んできて骨盤底筋障害が発症する。


さて、閉経後、女性ホルモンが減少することで起こる、このふたつの病に罹患していることがわかった私は、どうしたか。骨盤底障害の改善のために行ったのは、腟のオイルケアと骨盤底筋体操。GSМの改善のために始めたのは、女性ホルモン補充療法である。


これらを始めたことで、私は頭痛・腰痛・便秘・冷え性、さらには猫背やガニ股も克服した。いろいろなことに積極的になり、生きる意欲も湧いてきた。64歳で恋をして、27年ぶりにセックスをして、いまも楽しくお付き合いを続けている。自分で言うのもなんだが、たぶん70歳には見えないと思う。


写真=iStock.com/AJ_Watt
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AJ_Watt

■セックスこそ最高のアンチエイジング


骨盤底障害の改善については拙著『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)で、そのやり方を詳しく紹介した。


GSМについては、日本を代表する女性泌尿器科医である関口由紀先生に、『セックスにさよならは言わないで』(同)という本で、症状の見極め方や、改善方法を詳しく紹介していただいた。GSМに罹患すると、精神的なダメージや、血管障害なども発生しやすくなるのだが、それについても、同書で詳しく説明していただいている。


骨盤底障害もGSМも、初期であれば、セルフケアで改善が可能である。腟をほったらかしにしてはいけない。日本の封建的な性文化のせいで、知識を得ることができず、自分の体なのになんの対処もできずに苦しんだ、私のような経験はもう誰にもしてほしくない。


そのことを伝えたくて、セックスのことも臆せずに発信する本を作ったり書いたりしている。


少しでも不安があるようなら、迷わず女性泌尿器科か婦人科を受診してほしい。腟は、つねに潤っていなければいけない。尿もれや便秘を軽く考えてはいけない。


当然だが、セックスを無理にすることはない。だが、セックスができる体を維持することは非常に大切だ。それこそが、体にとっても精神にとっても、最高のアンチエイジングだからである。


(初公開日:2025年3月5日)


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原田 純(はらだ・じゅん)
径書房代表
1954年、東京生まれ。編集者。15歳で和光学園高校中退。1980年、長女出産。1989年、径書房に入社。竹田青嗣氏に師事。現在、径書房代表取締役。著書に『ねじれた家 帰りたくない家』(講談社)、岸田秀氏との対談『親の毒 親の呪縛』(大和書房)、『ちつのトリセツ 劣化はとまる』(径書房)『人生最高のセックスは60歳からやってくる』(径書房)がある。
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(径書房代表 原田 純)

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