借金600億円を返済した千葉市長の「NO」と言える行政

4月17日(火)8時0分 Forbes JAPAN

2017年5月に行われた千葉市長選で、過去最高の18万2081票を獲得し、81.3%という圧倒的な得票率で、3期目の当選となった熊谷俊人市長。同じく2017年に行われた衆議院選挙において、全国289の選挙区のなかで熊谷市長を超える得票率を獲得したのはわずかに2人。現防衛大臣の小野寺五典氏(宮城6区 得票率85.7%)と、石破茂氏(鳥取1区 得票率83.6%)しかいない。

熊谷市長は早稲田大学政治経済学部経済学科を2001年に卒業して、NTTコミュニケーションズに就職。その後、2007年の千葉市議選に出馬し、稲毛区でトップ当選を果たす。

2009年4月、前千葉市長が収賄容疑で逮捕、辞任。それに伴い5月に行われた市長選に出馬して当選。31歳4か月での市長就任は当時最年少で、政令指定都市の市長としては、現在でも最も若い。

ツイッターで市民と議論を

就任後に待機児童数を10分の1以下へと導く一方、市の借金を600億円返済。財政再建のため、大型開発を中心とした事業仕分けによって、税金の使途にも鋭いメスを入れた。

抵抗が大きいと言われる人件費にも手を付ける。職員の給与だけでなく、政令指定都市で初めて退職金のカットを断行。自らも痛みを分かち合うべく、市長給与と期末手当をカットした。

通常、これだけの改革を進めると、市民、職員、議会、経済団体などさまざまな利害関係者が抵抗勢力となるが、熊谷市長の場合はそうではない。

熊谷市長はその理由を「千葉市民や職員、議会に理解があるから」と表現するが、それだけが理由ではない。包み隠さず情報公開を行う姿勢、論理的でわかりやすい説明、そして、相手を敵視するのではなく一緒に歩む仲間として尊重している点。これが、仲間や支持者を増やし、政策に一層の推進力を生み出している。

市民と話し合いの場を常日頃から設ける熊谷市長は、なんとツイッター上でも市民と対話を行う。90分間の意見交換を夜の9時から行うことにより、政治行政とは距離のある若い市民や昼の対話会などに参加しづらい人であっても参加が可能だ。炎上リスクなどから、普通の市長には実現できないような施策だが、この「ツイッター版 市長との対話会」は、就任後、既に16回を数える。

少数の既得権益者ではなく 多数の住民を

サイレント・マジョリティとラウド・マイノリティの関係でしばしば語られるが、声の大きい少数派の意見に左右されるあまり、「行政が本来行うべき取り組みがなされていない」と指摘されることがある。

いわゆるラウド・マイノリティに対して、熊谷市長は市職員に明確な指示を出す。「彼らの意見も受け止めなさい。しかし、その意見に引きずられるのではなく、全ての住民にとって最適な選択をしなさい」と。

各領域でさまざまな利害関係者や既得権益者と対峙する市長にとって、勇気のいる発言だ。地方でも国でも、正面から同様に発言できる政治家は少ない。「できないことを”NO”と言うのも政治・行政の役割だと」とも熊谷市長は弁じる。

冒頭に登場した高い得票率を誇る2人の政治家も、熊谷市長との共通点を併せ持つ。小野寺防衛大臣は批判を恐れず防衛省の情報開示を進めるとともに、丁寧かつ論理的に説明を行う。石破氏も、国民やメディアから叩かれるリスクをとってまで、「憲法」や「核」を正面から語る。

耳に聞こえの良い言葉をひたすら連ねるのではなく、課題に正対し、時に耳の痛い発言もする政治家が、確実に支持を得ている事実は、疑いなく注目に値する。

政治家にも家族がいて生活がある。「落選すれば、ただの人」と言われる政治家が、声の大きい少数派や支持者を意識し、ほんとうに進めたい政策や主張を躊躇する気持ちもわからなくもない。

しかし、昨今は、情報をオープンにし、是々非々の主張を丁寧に行う政治家が、選挙でも強さを証明している。もしかすると、いま、利害関係者や既得権益者が持つ力は、政治家が恐れるほどには強大ではないのかもしれない。

熊谷市長は数多くの改革を成し遂げた。しかしながら、いがみ合うような抵抗勢力は存在せず、選挙では圧倒的な支持を得る。今後、求められる政治家のあるべき姿が、おぼろげながらそこから見えてくる。

連載 : 公務員イノベーター列伝
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