トランプ政権の内部暴露本、発売前から全米ベストセラーに

4月17日(火)17時0分 Forbes JAPAN

全米では、現地時間4月17日の火曜日に刊行される予定の本が、発売前から空前の大ベストセラーとなっていた。アマゾンのランクでもずっとダントツ第1位のままだ。ジェームズ・コミー前FBI長官の回顧録「A Higher Loyalty: Truth, Lies, and Leadership」(「より高き忠誠:真実と嘘とリーダーシップ」、邦題未定)がその本。初版は85万部だ。

トランプ大統領とコミー前FBI長官との確執は、現政権が始まってからのことだから、比較的新しい話題なのだが、政権内部で実際に働いた行政の長が、具体的にトランプ大統領を内部情報の暴露とともに攻撃する書だから、社会に与えるインパクトも極めて大きい。

トランプ大統領が部下を次から次へクビにすることはよく知られた話だが、3月現在、彼に直接仕える65人のホワイトハウス幹部のうち、辞任を含むと49%が職を解かれている(ブルッキングス研究所調べ)。これはオバマ大統領の1年目の3倍以上の数字で、あらためてアメリカ国民を驚かせている。

とくに、RUP(Resignation Under Pressure=威圧による辞任)という新語が、ホワイトハウスで飛び交っているというのは、この事態の深刻さを物語っており、広報部長職など前任者をクビにしたあと大統領が後任を指名しないままのポジションがいくつもあり、政権ないでも混迷が続いている。

その多くの解雇者のなかでも、コミー氏との確執は当初から派手な劇場型であり、この本については、企画発表の段階から前評判が高かった。304ページにも及ぶこの本の原稿を、「ニューヨークタイムズ」がいち早く入手し、報道したが、期待通りの「恨み節」が書きつらねてあった。

トランプ大統領が就任早々、彼がかつてモスクワのホテルのスイートルームで複数の売春婦と同衾に及んだというスキャンダル報道について、コミー氏を呼んで「ノックダウンせよ(撃ち落とせ)」と命令したというエピソードについては、大統領の性格を嘘つきで短絡的で自己中心的だと指摘している。

また、コミー氏はトランプ政権では忠誠心がすべてにおいて優先すると分析し、「その様子はまるで自分がかつてニューヨークのマフィアを検挙したときのことを思い出させ、すべては大小の嘘にまみれ、発言は封じられ、ボスがすべてを制圧していて忠誠心はモラルや真実を超えた、組織の絶対の掟となっている」とまで記している。



トランプ大統領も早速ツイッターで反論

コミー氏は、ブッシュ大統領の時代にホワイトハウスに司法副長官として入り、オバマ大統領の時にFBI長官になっているので、3人の大統領を比べたうえで、「トランプがいちばん最低」と、とにかく書きたい放題だ。

大統領のほうは、さっそくお得意のツイッターでコミー氏のことを「嘘つきのスライムボール」とか「お墨付きの暴露屋&ほら吹き」と反撃し、「彼をクビにしたのは小生の名誉とするところだ」といつものように胸を張っている。

とはいえ、共和党のトランプ大統領を攻撃しているからといって、コミー氏は民主党から愛されているわけではない。大統領選の直前に、コミー氏がヒラリー・クリントン候補のメール流出問題の捜査再開を発表して、当選確実と言われたヒラリーを落選させた張本人であるという見方は党派に関係なく根強く、ヒラリー自身も、「あのせいで落選した」と語っている。

現在、コミー氏を支援する層はなく、本人は人生で一貫して共和党を信奉していたのだが、いまでは無党派になっている。

前述のように、部数は初版85万部で、推定印税は1億5000万円から3億円になるとみられる。トランプ大統領がツイッターで攻撃したことにより、このベストセラーはますます売れ、印税もさらに多くの額が見込まれるだろう。刊行する出版大手のマクミラン社側も、売るために、(ロシア疑惑に対する独立検査官による調査が進んでいるので)ネタが古くならないよう発売を2週間も早めている。

筆者の小説の編集を担当してくれた編集者は、「批評は、絶賛か酷評のどちらかが並ぶのがいちばん本は売れます。中間はダメです」と語っていた。「絶賛と酷評で、あいだがない」というのは、まさにトランプ政権に対する国民感情そのものを指していて、すべてはトランプの演出であり、コミー氏もそこに乗っかることで億単位の宝の山を見つけたのでは、そう思ってしまうのはコミー氏に対して酷だろうか。

その業界でまだこれから活躍しようと思う人は、古今東西、暴露本など出さない。絶対の守秘を旨とするからこそ、あらゆる情報収集の権限が法によって与えられるFBIの前長官が、このような暴露本を出してしまう事象に、全米3万5000人のFBI職員は何を思うだろうか?

連載 : ラスベガス発 U.S.A.スプリット通信
過去記事はこちら>>

Forbes JAPAN

「トランプ」をもっと詳しく

「トランプ」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ