2000万円以下も続々 値下げ進む私大医学部学費ランキング

4月17日(火)8時30分 Forbes JAPAN

近年の医学部への過熱ぶりとその背景については前回のコラムで述べた通りだ。だが、医学部志望者の増加の理由は、これだけではない。医学部は、以前に比べ金銭的なハードルが下がってきている。

私立医学部の学費が相次いで値下げ

医学部の定員の増加をはるかに上回るペースで志望者が増えたのは、かつて医師の子弟や大金持ちの子しか進学できなかった私立医学部で、相次いで大幅に学費が値下げされたことも一因である。

もちろん、すべての私立大学で値下げがされたわけではない。しかし、いくつかの私立医学部の学費が大幅に値下げされたという事実と、そのアナウンス効果による受験動向への影響は大きい。

医学部が門戸を開いているという情報は、受験生や保護者、学校教員の間に瞬く間に浸透し、折からの経済不況の世相を背景に、受験者はますます増えることとなった。

20年ほど前までは、私立医学部は学費が高額すぎるというイメージがあったため、一般受験生にとっては、受験校として検討の土俵にすらあがらなかった。

その頃は、国公立医学部よりも難関の慶應大学や自治医大など数校を除き、6年間で学費だけで3000万円超は当たり前で、寄付金や高額な教材費、下宿代なども考えると年間に6、700万円ほどかかり、とてもサラリーマンが支払える額ではなかった。初年度納付金が寄付金を含め1000万円を超えるところもあった。

しかしここ10年で、私立医大の大幅な学費値下げが相次いだ。2008年に900万円もの値下げを行なった順天堂大学をはじめ、6年間の学費が2000万円ほどの大学も増えてきたのだ。

6年間での学納金が2000万円前後なら、年間平均350万円以下となる。これなら、一般のサラリーマン家庭でも、貯金を崩したり、奨学金や学資ローンを使ったりなどして、なんとか学費を捻出できる可能性がでてきた。成績優秀者に対して、学費減免や修学資金の制度のある医学部も増えてきた。

また、少子化により、祖父祖母からの援助が、一人もしくは数人の孫たちに集中するようになった。2013年4月からの贈与税減税の効果もあって、若年者一人あたりへの教育資金は増えているようだ。

もちろん、学費の安い国公立医大を目指せばいいのだが、国公立の医学部はどこも超難関。並大抵の学力ではとても合格できない。私立大学の値下げは、どうしても我が子を医者にしたい親にとって、一筋の光明なのだ。

値下げされた日本の私立医大の学費は、アメリカの有名大学の一般学部の学費と比べても、高額ではないということがわかる。参考までに、アメリカの大学の学費を見てみることにしよう。

文部科学省の「諸外国の教育統計・平成29(2017)年版」には4つの個別の大学の学費が挙げられている。シカゴ大学は、年間425.3万円(47514ドル)、マサチューセッツ工科大学は年間389.3万円 (43498ドル)、スタンフォード大学は年間387万円(43245ドル)、ハーバード大学は年間378.5万円 (42292ドル)である。これらを6年間で換算すると、2300万円〜2500万円弱となる。

アメリカの医学教育は大学院(メディカル・スクール)からなので、単純比較はできないが、日本の私立医学部は、アメリカの一般エリートの高等教育にかかる費用とほぼ同等の金額に近づいてきたと言える。

さて、では現在の医学部の学費はどれくらい安くなっているのだろうか。6年間の学費総額は、文科省のホームページなどで公表されているが、各予備校のウェブサイトなどでも調べることができる。

以下のランキング表は、2017年度入学者のデータをもとに、筆者が作成した日本の私立大学医学部全31校32コースの学費、偏差値などを示した一覧表だ(学費や志願者数、入学者数などの客観的な数字については、文部科学省の学校基本調査のデータから、偏差値や入試難易度については、指導者の実感に一番近い河合塾のデータから、それぞれ引用した)。

この表は学費の安い順に並んでいる。数値については、なるべく正確を期するようにしたが、ご自身で利用される場合は、必ず各大学のWebサイトなどに直接あたるようにしてほしい。



特殊な法律によって設立された自治医科大学(1位)は、卒業後9年間、各地域の知事の指定に基づき、へき地や過疎地域での勤務を果たすと、すべての修学金が免除となる。つまり、学費は実質無償である。

防衛省管轄でもある防衛医科大学校は、私立ではないのでランキングには載せていない。もちろん、防衛医大生は公務員として就学するため、学費はかからず、給料までもらえる。

2011年の東日本大震災を受けた特別措置で、2016年に約40年ぶりの医学部新規設置となった東北医科薬科大学は、100名の定員の半数以上(55名)に修学資金枠(2位)が用意されている。その枠で合格すると、国公立大学医学部と同等の学費で修学できる。

成績優秀者に対し、大幅な修学資金や学費減免が実施されている大学は、他にも、杏林大学(東京都枠10名程度)などいくつかあるが、東北医科薬科大学は、修学金枠が半数以上のため、ランキングに加えた。

将来、東北地方での勤務が可能な学生には、大変お勧めの医学部だ。

産業医科大学(3位)は、非常に学費が安いが、自治医大と同様に卒業後の縛りがある。産業医としての9年間の勤務が義務付けられているのだ。産業医としての勤務を果たさなかった場合は、一般の私立大学と同等の学費が請求されることになる。

国家戦略特区に指定された千葉県成田市の国際医療福祉大学医学部(4位)は、2017年に開学したばかりの日本で一番新しい医学部である。自治医大等の特殊な医学部を除き、現在、一番学費の安い私立大学であり、6年間の総額は2000万円足らずである。

アジアからの留学生を大量に受け入れ、授業の多くが英語で実施されている。偏差値65となっており、入試難易度は★二つレベルだが、筆者の指導上の印象からすると、実際の難度はもっと高いかもしれない。

次に安い順天堂大学(5位)は、2008年に他大学に先駆けて900万円近くの値下げを断行して有名になった。その結果、多くの受験生を集め、偏差値も大きく上昇させた。

天皇陛下の心臓手術を担当した心臓外科医・天野篤教授など、優秀な教授陣の評判も高く、今では、私立医大「御三家」(慶應大、東京慈恵医科大、日本医科大)と並ぶ、「新御三家」(順天堂大、昭和大、東邦大:ただし、東邦大の代わりに東京医科や日本大学が入るなど諸説あり)の筆頭に数えられ、慶應に次ぐ人気を誇っている。キャンパス・大学病院が都心(御茶ノ水駅近く)にあることも魅力の一つである。

その次には、慶應大学(6位)、東京慈恵会医科大学(7位)、昭和大学(8位)、東邦大学(9位)、日本医科大学(10位)と、総額2000万円台の大学が並んでいる。これらの大学は、いずれも東京都内にある大学だ。

近年の大幅な学費値下げ競争により、偏差値序列に変化が出てきている。学費値下げと引き換えに人気が出て、偏差値が上昇するという現象が生じているのだ。

順天堂大学、東邦大学のほか、杏林大学、日本大学、近畿大学などは、とくに大きく偏差値を上げた大学である。

前回のコラムでもお伝えした通り、昔なら東大・京大の理工系を目指していたような秀才が、軒並み地方の国公立医大を目指すようになった。そして彼らの多くは、当然のように私立医大を併願する。金銭的にそれが可能になったからだ。

こうして、昔ながらの受験エリート(国公立の医学部を目指す)と医師家系の子弟(私立大学の医学部を主に目指す)に加え、一般家庭の医学部志望者が増加したことが、医学部バブルとも形容される現象の主因である。

ただし、医学部の難易度が高くなっているのは、増加している入学定員以上に競争倍率が上がっているということによるもので、必ずしも医学部の入試問題が難しくなっている、あるいは受験生の学力レベルが上がっている、ということではない。この連載で後々、お伝えしていくが、攻略法は存在する。

いずれにせよ、一般の家庭の受験生が私立大学の医学部を受験するようになってきたことは注目に値する。

医学部は昔から入学するのが難しかった。それは、学力面と金銭面のどちらかでずば抜けていなければならなかったからだ。しかし、現在は、私立医学部の学費値下げによって、金銭面のハードルが下がり、学力さえ伴えば、多くの有意の若者が医師を目指せるようになったのである。

その結果、医学部の競争率が上がり、全体的な入試偏差値も上がっているわけだが、こういったマイナス面だけを見る必要はない。医師になるべき人物を選別するべき入試が、適正・公正に行われている限りにおいて、総合的にみて歓迎すべきことと考えてよいのではないか。

連載 : 最短で我が子を医者にする方法
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