上げ潮の西武HD ライオンズ快進撃そのまま私鉄2強も追撃へ

4月17日(火)7時0分 NEWSポストセブン

10年ぶりの優勝を目指す西武ライオンズ

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 プロ野球の埼玉西武ライオンズが4月16日現在、11勝3敗でパリーグの首位を走っている。1980年代から1990年代前半に圧倒的な強さを見せ、黄金時代を築いた西武ライオンズだが、2000年代に入ると優勝回数が少なくなって前回の優勝は2008年。今年は10年ぶりのVを狙う。


 過去、1988年、1998年、2008年と「8」の付く年には優勝していることから、2018年の今年も大いに期待できるとファンの間では盛り上がっているらしい。さらに、もう1つ8の付く40年前の1978年は、球団が埼玉県所沢市に移転した年でもあった。


 その40周年の節目を捉え、昨年11月15日、西武ホールディングス(以下西武HD)社長で株式会社西武ライオンズのオーナーでもある後藤高志氏は、メットライフドームの改修計画や周年イベントについて記者会見を行った。


 ちなみに、現在のメットライフドームという球場名は2017年からで、これまで2005年にインボイスSEIBUドーム、2007年にグッドウィルドーム、2015年に西武プリンスドームと何度かネーミングが変わっている。さてその会見だが、後藤氏はこう語っていた。


「2005年か2006年ごろ、『球団は売却か』とメディアに書かれましたが、一貫して言ってきましたように、西武ライオンズはグループのイメージリーダーでありシンボルで、球団も2011年度から黒字化しています。今回は40周年ということで、初めて全面的な改修を行い、180億円という巨額投資になります」


 改修は一言で言えば“ボールパーク化”で、バックネット裏やBOXシートなど観客席に手が入るほか、ドーム前広場の刷新や外周エリアの拡張、こども広場の設置、オフィス棟の新設、さらに室内練習場や寮の新設、西武第二球場のサブグラウンドやブルペン新設など多彩だ。改修工事は今年から2021年春にかけて行われ、主に1月から3月のオフシーズンに集中工事がなされる。


 振り返ると、西武グループが経営危機に陥ったのは2004年、西武鉄道の有価証券虚偽記載事件だった。同事件で西武鉄道は上場廃止となり、再上場を果たしたのは10年後の2014年4月。長くなるのでその間の苦闘は割愛するが、再上場を果たす半年前の2013年9月、西武HDに追い風が吹いた。2020年の東京五輪招致決定がそれだ。


 同社はほかの鉄道会社と違い、プリンスホテルという大きなホテルチェーンを傘下に持っている。五輪期待もあって目下、訪日外国人の数が大きく伸びており、ホテル業界は活況を呈している。当然、プリンスホテルの業績も好調だ。


 もう1つ、西武グループがほかの鉄道会社と違うのは、グループの原点が鉄道でなく、不動産開発の箱根土地という企業にあったこと。この箱根土地が後年、国土計画、さらにコクドと社名を変え、非上場のコクドがグループを支配し、子会社の西武鉄道が上場という形を取っていた。


 ともあれ、ホテルと並んで不動産事業も西武グループを語るうえで不可欠なものだ。たとえば、旧赤坂プリンスホテル跡地に建てた東京ガーデンテラス紀尾井町(2016年7月開業)という高層ビル。


 ビル上層階には、ザ・プリンスギャラリー東京紀尾井町というグループのホテルも入っているが、ホテル専業だった旧赤坂プリンスホテル時代とは異なり、もう1つの軸はオフィスの賃貸である。そして同ビルのキーテナントにはヤフーが入居。一等地であることから賃料も高い水準で取れている。


 こうした流れもあり、西武HDの業績も向上、今期(2019年3月期)は、関東、関西それぞれの私鉄の雄である、東京急行電鉄や阪急阪神ホールディングスの純利益(700億円から720億円程度の見込み)とはまだ差があるものの、この2社に次ぐ450億円程度と予想されている。


 東急電鉄は目下、本拠地である渋谷の大再開発に取り組んでいるが、どの私鉄も人口減少で沿線人口の囲い込み競争が激しさを増しており、鉄道事業以外の、ホテルや不動産のビジネスがクローズアップされている。もちろん、東京五輪以降はホテルやオフィスビルの供給過剰懸念もあるのだが、本業である鉄道事業は基本、人口減少で先細るのは不可避だけに、不動産事業も重要な位置づけとなるのだ。


 そんな中、去る4月9日に西武鉄道池袋ビル(仮称)の上棟式が行われた(竣工は2019年3月の予定)。現在、西武HDの本社は西武池袋線、新宿線の結節点になっている所沢駅近くにあるが、この池袋ビル竣工後は、西武HD、プリンスホテル、それに不動産開発を手がける西武プロパティーズの3社が同ビルに本社を移転する(西武鉄道は所沢本社のまま)。


 西武鉄道池袋ビルは地上20階建てでオフィスは15フロア(フロア当たりは640坪)あり、うち5フロアを西武グループで使用、残る10フロアを外部企業に貸し出して家賃収入を得る。


 上棟式後の囲み取材で後藤氏は、「いろいろな企業から引き合いはありますが、まだテナントは決まっていません。いずれにせよ、不動産事業はグループの成長を考えるうえで、今後の大きな鍵という位置づけをしています」と語っていた。


 実際、今後もプリンス系ホテルがある芝公園エリアや高輪・品川エリアでの再開発が視野に入っており、以前、東京都から土地買収の打診を受けていた、遊園地のとしまえんをどうしていくかも気になるところだ。さらに西武HDの場合、横浜八景島シーパラダイスを擁するほか、2017年3月には横浜アリーナの株式も取得し、株の持ち合いをしている京浜急行電鉄との、鉄道やそれ以外の事業での連携の行方なども注目点といえる。


 一方で、もちろん沿線開発も大事。かつて、西武グループ総帥だった堤義明氏が牽引していた頃は、観光地でのスキー場やゴルフ場開発、プリンスホテルの建設などに軸足が置かれ、沿線開発はないに等しかった。


 1999年に屋根付きの西武ドームに球場が生まれ変わったが、西武沿線の風景は旧態依然のまま。2005年に後藤氏が西武鉄道社長(西武HD社長は2006年から)に着任してから、ようやく沿線開発に着手し、高架化や高架下施設、駅ナカ施設の充実、駅舎の改築などを進めてきた。


 冒頭で触れたメットライフドームと周辺の大改修は、西武沿線外の広域からの集客という点では、所沢というロケーション上なかなか厳しいが、沿線住民の集客という観点では成果を上げるだろう。


 遡れば、プロ野球の球団は沿線人口を増やすという狙いから、親会社は鉄道が多かった。旧国鉄、さらに阪急や近鉄、南海、西武ライオンズの前身、西鉄ライオンズなど。それがいまや時代の流れもあり、鉄道系は西武ライオンズ、それに阪神タイガースの2球団しか残っていない。


 前述した昨年11月の会見で、後藤氏はこう述べている。


「阪急阪神HDさんにとって、阪神タイガースや甲子園球場が、沿線エリアのバリューアップに相当な貢献をしていることは間違いない。


 翻って我々西武グループも、西武ライオンズが40年という歴史を刻んでいるわけでありますし、西武鉄道沿線の方のみならず、2008年に埼玉西武ライオンズとしてから、埼玉県全域にファンが広がりました。


 少子高齢化で生産年齢人口が減っていくという厳しい事業局面にはなっていきますが、今回の球場の改修計画を大きなテコにしてぜひ、沿線人口も増やしていきたいと思います」


 移転40年を記念して、総額180億円を投資するメットライフドームと周辺の大改修、そしてまだペナントレースが始まったばかりとはいえ、埼玉西武ライオンズの快進撃、西武HDの本社移転や今後の再開発計画など、“上げ潮”の中で攻める西武グループは、本格的に東急電鉄や阪急阪神HDという2強の追撃態勢に入れるか——。


●文/河野圭祐(ジャーナリスト)

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