糖質制限せずに1年で12kgの減量に成功…痛風と尿管結石に見舞われた医師が実践した「白米ダイエット」の中身
2025年4月18日(金)9時15分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/JUNICHI HIRAISHI
※本稿は、梅岡比俊『医者が教える最高のやせ方 科学的に正しいお腹いっぱい食べられるダイエット法』(すばる舎)の一部を再編集したものです。
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■「肥満」は諸悪の根源
実は私は過去、ほぼ同時期に、痛風と尿管結石という2つの大きな病気を経験しています。
人間がかかる病気のなかで、もっとも痛い病気のベスト3と言われているのが「痛風、尿管結石、歯痛」で、そのうちの2つに連続してかかってしまったわけです。私は耐えがたい激痛から逃れるために、どうしたら症状が改善するのか真剣に、しかも早急に考える必要に迫られました。
なぜ私が病気になったのか、振り返ってみると、答えは明らかでした。原因は、自分自身の「不摂生による肥満」にありました。
その当時、私の体重は80キログラムを超えていました。身長173センチメートルの私の適正体重は、67〜68キログラム程度なのに!
クリニックを開業してわずか数年、多忙な日々を送っていたのですが、おいしいものを食べることもお酒を飲むことも好きな私は、仕事が終わってから毎日のように、好きなだけ食べて飲んでを繰り返していたのです。スナック菓子もよく食べていたし、お酒を飲んだあと、夜遅くにカップラーメンを食べることもしばしば……。さらに、運動は好きでしたが、医学部を卒業して十数年間、運動らしい運動はまったくしていませんでした。
■糖質制限ダイエットに取り組む
そんな日々を過ごしていたら、当然ですが、体重は徐々に増えていきます。少しずつ体調が悪くなっていることから目を背けていた私に、ある日、痛みが襲いかかってきたのです。
このとき痛感したのは、「太る」ということはあらゆる面で非常によくない、ということです。
痛風と尿管結石の痛みから逃れるために、私はまず毎日飲んでいたビールをやめました。さらに、体重のコントロールが必要不可欠だと自覚した私は、人気のあるダイエット法で、しかも短期間で体重を落とせるという噂の「糖質制限ダイエット」に挑戦することにしたのです。
「糖質制限ダイエット」のセオリーに従って炭水化物の摂取をやめ、代わりにタンパク質を摂るようにしました。ラーメンやパンは比較的ラクにやめることができましたが、もともと白米が好きだった私にとって、お米を一切食べないというのはかなりの苦痛でした。
■健康的な痩せ方ではなかった
ストレスを感じながらも頑張った結果、3カ月で10キログラム以上やせることができました。しかし、いま振り返ってみるとよくわかるのですが、「糖質制限ダイエット」をしたときのやせ方は、どう考えても健康的なやせ方ではなかったと思います。
まず、筋肉がすごく落ちました。肩幅が狭くなり、胸囲も10センチメートルほど少なくなりました。がっしり感がなくなり、ヒョロヒョロの体型になりました。それから、顔にシワが増えました。
家族や友人たちからもそう言われたし、いまでは笑い話ですが、外来で診察中に患者さんから「先生はがんになったから、やせたのでは?」と心配されるほどでした。さらに、とても疲れやすく、気持ちも落ち着きませんでした。その結果、仕事のパフォーマンスが落ちていたことを、はっきりと自覚しています。
そして糖質制限をやめると、あっという間にリバウンドしてしまいました。もしかしたら読者のみなさんのなかにも、このような経験をした方は多いのではないでしょうか?
私は、取り組むことによって現状よりも心身ともに健康になるのがダイエットの本来あるべき姿だと思っています。そうでなければ、取り組む意味がありません。あまつさえ、取り組むことによって心身に害を与える危険があるダイエット法には、決して手をつけるべきではないと考えます。
このような自身の経験から、私は、「糖質制限ダイエット」は健康的なダイエット法ではないのではないかと考え、改めてダイエットや建康に関する本を読みあさりました。世界中で発表されている医学論文も多数読み、いくつかのダイエット法については自身の身体を実験台にして試みることもしました。
■「お米を食べるダイエット」に辿り着く
その結果、私がたどり着いた健康的なダイエット法が、「お米を食べるダイエット」です。
歴史的にその国の人々が何を食べてきたかを視る「食歴」の視点からも、日本人にとても合っているダイエット法だと確信しています。和食の一汁三菜とごはんを基本の食事にするこのダイエット法は、大きなストレスを感じることなく、ゆっくりとやせていきます。
私自身「お米を食べるダイエット」で健康的に、特にストレスを感じることなく、1年で12キログラムやせることに成功しました。1カ月に1キログラムずつ体重が減っていった計算です。痛風や尿管結石も完治し、現在に至るまで健康状態はすこぶる良好です。リバウンドも、疲れやすさもイライラもなく、心身ともに健康で充実した日々を過ごしています。
ダイエットに即効性を求める人は多いと思います。その気持ちはよくわかりますが、ダイエットは「急がば回れ」です。1カ月に4キログラムも5キログラムも体重が減るのは、単に身体から水分が減っているだけです。だから、簡単にリバウンドしてしまいます。即効性よりも、「ダイエットに取り組むことが、本人の健康レベルの向上につながっている」ことが大切です。
■「お米を食べると太る」は間違い
「お米を食べるダイエット」こそが“正しいダイエット”を実現してくれる方法です。いまだにお米を食べると太ると思っている人が多いのですが、いい加減、この間違った考え方は改めましょう。お米のように安全で、栄養学的にも優れた炭水化物食品はほかにない、と言っても過言ではありません。たとえばパンには、身体に悪いさまざまな添加物が含まれている商品が多いのですが、お米には添加物はゼロです。
お米は、良質のタンパク質や微量栄養素が多く含まれた食品です。精製した白米を「精白米」あるいは「うるち米」と呼びますが、そこにはビタミB1、B2、B6、ナイアシン、葉酸、パントテン酸、ビオチン、マグネシウム、カルシウム、ナトリウム、カリウム、リン、セレン、モリブデン、亜鉛、銅、マンガン、鉄、脂質、タンパク質、食物繊維などが含まれています。
アミノ酸も豊富で、玄米の段階では体内でつくることができない必須アミノ酸9種類(バリン、ロイシン、イソロイシン、スレオニン、フェルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン、メチオニン)のすべてを含んでいます。
■実は良質なタンパク源
食品にどのくらいの種類の必須アミノ酸が、どの程度含まれているのかを示す指標のことを「アミノ酸スコア」と言い、100までの数字で表されます。このスコアが高い食品ほど、身体が必要とするアミノ酸を漏れなく、豊富に含んでおり、良質なタンパク源とされるのです。
出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)
精白米(うるち米)は、このアミノ酸スコアが93です。精製前の玄米では最高値の100です。小麦を調理したパンで51、乾燥パスタで49、うどんで51、コーンフレークが22などと見ていくと、主食として食べられる食品のなかでは、お米が非常に優秀なタンパク源であることがわかっていただけるでしょう。
ちなみにジャガイモが83、ソバが84で、海外では主食とされることもあるこの2つの食品は、アミノ酸スコアで白米に近いものがあります。ただし、日本の食習慣で主食として毎日食べる、というのはなかなか難しいでしょう。
また、白米のアミノ酸スコアが100ではないのは、玄米からの精米の過程で必須アミノ酸のリジンがなくなってしまうためですが、リジンが豊富な納豆などの大豆製品や、付け合せの鶏肉などと一緒に食べることで、必須アミノ酸のすべてを一度に摂れるようになります。
■お米を食べないのはもったいない
このほか、白米には脂質も含まれますが、その量は100gあたりわずか0.9グラムです。100グラムあたりのエネルギー量も、156キロカロリー(炊飯後)とさほど多くありません(炊く前は342キロカロリー)。
出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)
ごはんはパンなどほかの炭水化物食品に比べて消化が遅いので、腹持ちがよく、食事の満足感を得やすいという特性もあります。
過去、私が「糖質制限ダイエット」をしていたときには、食事をしてもなかなか満足感が得られず、疲れの回復が遅く、気持ちも落ち着きませんでした。白米のごはんであれば、カロリーはさほど多くないのに、食事をしたあとの満足感はしっかり得られます。
お米は栄養学的にも優秀な食品であり、太りやすい食べ物でもありません。食べないのは、もったいなさすぎるでしょう。
〈ここがポイント〉
お米は栄養バランスも非常によいため、食べない選択は非合理的。腹持ちもよいので、効率的に満足感を得られる
※調査の公表年度によって白米の栄養成分は上下しますが、おおよその傾向は変わらないでしょう。
■「お米を食べるダイエット」の基本ルール
先述したとおり、当初は「糖質制限ダイエット」を試みてうまくいかなかった私が、試行錯誤の末にたどり着いた正しいダイエット法こそが「お米を食べるダイエット」です。医者の立場からも、自信を持っておすすめできる内容です。
ここでは私自身が身も心も健やかなまま合計12キログラムの減量に成功した具体的な方法、特にその食事法についてみなさんにお伝えしたいと思います。
■朝食・昼食・夕食の割合を3:3:4にする
一般的に、朝昼晩のそれぞれの食事量の配分は、1:3:6など夕食の配分が大きくなっているケースが多いでしょう。朝食を抜いている人では、0:3:7など極端な配分になっているかもしれません。
しかし、時間栄養学の見地からすると、こうした夕食偏重の配分は太りやすく、体調も崩しやすい食事スタイルだと言えます。朝に食べるよりも夜に食べるほうが、摂取した栄養素が体内で脂肪に変わりやすいため、ダイエットによくないのは当然の帰結です。夕食にたくさん食べるのをやめて、朝食と昼食の割合を増やしましょう。
©富永三紗子[出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)]
あまり神経質にならなくても大丈夫ですが、ざっくり朝食3:昼食3:夕食4の割合にするのがおすすめです。
■1週間単位で食べる量を調整してもいい
もしこの配分にできなかった日があれば、1週間単位で考えて調整してください。これが、「お米を食べるダイエット」の第2ルールとなります。
梅岡比俊『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)
仕事の都合などでどうしても夕食を遅い時間にしか摂れないため、1日3食ではタイミングが合わない、という人もいるでしょう。そういう場合には、たとえば夕方におにぎりなどで一度、主食を食べておいて、家に帰ってから野菜中心のおかずなどを食べる、という形でも大丈夫でしょう。このように夕食を分けて食べ、朝食3:昼食3:夕食2:夕食2くらいの割合で「分食」すると、胃もたれもしにくく、太ることもありません。
もし、夕方に食べる時間がまったくなく、分食も難しいときには、家に帰ってからできるだけ消化のいいものを食べるようにします。炭水化物ならおかゆや雑炊、それ以外では豆腐や果物などが、胃腸に負担がかからないのでおすすめです。
〈ここがポイント〉
時間栄養学的に、夕食多めの食事スタイルは太りやすい。朝食を増やして夕食を減らすことで、バランスがよくなる。夕食は「分食」してもいい。
■和食の一汁三菜+ごはん1膳が基本
2013年に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されました。登録された理由は、四季のある日本ならではの独特な料理技術、伝統、文化的な意義、健康に対する配慮など多岐にわたります。
健康的で安心して食べられる食事として、和食はいまや世界中で大人気です。私も和食が大好きで、ふだんの食事は和食中心です。私が12キログラムやせた際の食事のメニューも、たいていの場合、主食のごはん1膳(白米約150グラム)に、おかず3品と汁物が加わるいわゆる「一汁三菜」でした。
この伝統的な食事スタイルを、「お米を食べるダイエット」でも基本メニューとすることが最適だと思います。
一汁三菜は、具体的には次のような構成の食事です。
©富永三紗子[出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)]
(一汁)
汁物 1椀 みそ汁、お吸い物などのスープ類
(三菜)
主菜 1皿 魚料理、肉料理など、タンパク質がメインのおかず
副菜 2皿 ほうれん草のおひたし、ひじき、切り干し大根、卯の花、煮物、サラダ、酢の物など、野菜や海藻のおかず。主菜に足りない栄養素を補う
■お茶碗1膳程度のごはんを加える
これにさらに、主食のごはん1膳(お茶碗1膳程度、約150グラム。図表3参照)を加えることで、5大栄養素(タンパク質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラル)がバランスよく含まれた、栄養学的にも優れた献立をつくりやすい構成になっています。
©富永三紗子[出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)]
仕事が忙しく、毎食のおかずをいくつも用意するのが難しい場合は、必ずしもおかずを三菜(3品)にしなくても大丈夫です。その場合、たとえばおかずは1品で、具だくさんのおみそ汁にするとか、具だくさんの炊き込みごはんにするとかでもいいでしょう。
■日本ならではのスーパーフードも取り入れる
なお、ごはん1膳が食べ切れないときや、加齢・体調などで量が多く感じるときは少なめに盛ったり(100グラム程度)、逆に足りないのであれば多めに盛る(200グラム程度)などして、量の調整をすることも問題ありません。
©富永三紗子[出所=『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)]
ただしあまり多く食べすぎると、さすがに栄養過多で太りやすくなったり、糖尿病になりやすくなったりする危険があります。適量を意識するようにしましょう。
このほか、和食には日本ならではの「スーパーフード」と言える食材もたくさんあるので、それらも積極的に食事に取り入れていきましょう。
〈ここがポイント〉
難しく考えなくても、和食の一汁三菜をごはんと食べれば、必要な栄養素をバランスよく摂取できる。スーパーフードも上手に取り入れたい。
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梅岡 比俊(うめおか・ひとし)
医師
医療法人社団梅華会 理事長。予防未病健康医師協会 代表理事。耳鼻咽喉科専門医。奈良県立医科大学医学部卒業。阪神地区に耳鼻科4院・小児科2院・心療内科1院、東京都内に消化器内科2院の計9院を展開。年間患者来院数は約17万人にのぼり、地域に密着した医療を提供している。2024年10月に新規開院した心療内科には、マインドフルネスセンターを併設。現代のニーズに合った医療を提供し、医療の幅を広げている。健康寿命の延伸を目指す全国の医師・歯科医師で構成された予防未病健康医師協会の代表理事も務め、この協会を通じ、連携による包括的な予防医学の概念を広める活動を全国で展開し、自院でもそのサービスを提供している。趣味は読書とトライアスロンで、世界の過酷なレースに参加するアスリートでもある。また、野菜ソムリエやファスティングマイスターの資格を所有し、真の意味での健康を追求し続けている。著書に『医者が教える最高のやせ方』(すばる舎)、編著書に『臨床経験豊富な100人の専門医が教える! 健康医学』(フローラル出版)があるほか、クリニック運営関連の著書も多数。
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(医師 梅岡 比俊)