毎月60億円の手数料削減に成功 英ロンドン発、海外送金サービスの実力

4月19日(木)7時30分 Forbes JAPAN

ペイパルの共同創業者、投資家のピーター・ティール、ヴァージングループ創業者のリチャード・ブランソンなど、米シリコンバレーのVC「アンドリーセン・ホロウィッツ」など、錚々たる個人投資家、VCが投資家として名を連ねる──。

総調達額は3億7000万ドル、評価額は16億ドルを突破。ユニコーン企業(企業価値10億ドル超えの未上場企業)の仲間入りを果たすなど、急成長を遂げているフィンテックスタートアップが「TransferWise(トランスファーワイズ)」だ。

同社は2011年に創業。英ロンドンに拠点を置き、P2P(ピア・ツー・ピア)技術を用いた海外送金サービスを提供している。2018年現在、64か国でビジネスを展開しており、日本では2016年9月にサービスの提供を開始している。

「一般的な銀行を経由して海外送金を行う際、実は隠れたコストが発生している。私たちはそんな既存の仕組みに違和感を覚えたんです」

TransferWiseの共同創業者、クリスト・カーマンは海外送金サービスを始めることにした理由について、こう語る。同氏によれば、一般的な銀行では海外送金の際、手続き手数料だけでなく、売値と買値の差(スプレッド)を手数料として徴収しており、顧客は知らぬ間に高い手数料を支払ってしまっているという。

例えば、その日の為替が1ドル=110円だったする。この110円は外貨→円貨(TTB)レートを使って計算されているが、海外送金する際のレートは円貨→外貨(TTS)で計算される。TTSが115円だった場合は、1ドルにつき5円の為替手数料が課せられることになる。

そんな仕組みをディスラプトするためにTransferWiseは誕生した。

なぜ、こんなにも海外送金の手数料は高いのか?

創業のきっかけは、共同創業者二人の原体験にある。時は遡ること、10年前──。2008年当時、もうひとりの共同創業者、ターベット・ヒンリクスはロンドンに住みながら、エストニアの首都タリンに拠点を構える会社「Skype(スカイプ)」で働いていた。

ロンドンとタリンを行き来する日々。給与はユーロで支払われており、ターベットはタリンからロンドンへ、海外送金を使って給与を送金。

一方のクリストはロンドンで働いていたが、エストニアにユーロで支払う住宅ローンを組んでおり、毎月、海外送金を使って支払いを行っていた。

そんな二人は海外送金に対して、共通の思いを持っていた。

 

「長い時間、銀行の窓口に並ばなければならない上に、着金されるまで時間がかかる。また手数料がすごく高い。仕組みとして、何かが間違っていると思いました」(クリスト)

そこで二人は、ちょっとした実験を始める。毎月、為替レートを確認しながら、そのときのユーロとポンドの適正な為替レートでお互いの口座に、それぞれの国で支払いを実行した。

ターベットはタリンの自分の口座からクリストのタリンの口座に送金し、クリストはロンドンの自分の口座から、ターベットのロンドンの口座へ送金する。資金自体は国境を越えていないため、銀行を経由することで発生する”隠れコスト”を支払うことなく、「タリンからロンドン」への送金を実現させた。

 
TransferWiseのサービスの仕組み

これをさまざまな国の間で実現可能にしたのが、TransferWiseというわけだ。

「お金は自由に取引されるべき。きっと同じ悩みを抱えている人は世界中にいると思いましたし、これをビジネスにしようと思ったんです」(クリスト)

同サービスは世界中に銀行口座を開設。その口座をP2P技術を活用して繋げることで、より早く、より安いコストで海外送金が行えるようにした。例えば、日本からアメリカに海外送金をしたい場合、TransferWiseの日本の口座にお金を振り込むだけでいい。

その後、その時点でロイターやヤフー、グーグルの為替レートを使って両替が実施され、TransferWiseのアメリカの口座から米ドルでアメリカにいる受取人へ支払いが行われる。

実際にかかるコストは海外送金手数料のみ(送金額の0.5〜1%)。手数料は発生せず、一般的な銀行と比較して最大8分の1の手数料で海外送金が実施できる。



また、本人確認プロセス完了以降は数分間の単純な作業のみ。24時間以内に90%以上の海外送金がオンライン上で完結する。

招待プログラムの実施でバイラルを起こす

サービス開始当初、周囲からは「うまくいくはずがない」という声も多かったそうだが、あまり時間が経たないうちに、TransferWiseは軌道に乗り始める。

「多くの人が自分たちと同じ悩みを抱えていたこともそうだが、招待プログラムを実施したことが大きかったと思います。招待プログラムは友人を招待することで、その友人の初回送金時に限り、手数料を割引にしたほか、友人を3人招待し、その3人の送金額が一定額を超えたときは招待者にボーナスを贈呈するというものです。これにより、口コミでどんどんユーザー数が増えていきました」(クリスト)

2018年現在、200万人がTransferWiseを利用しており、毎月2000億円が送金されている。その結果、毎月60億円の手数料削減にTransferWiseは貢献しているという。

新サービス「ボーダレスアカウント」も英国などで始動

招待プログラムなどでユーザーを増やしていくことで、手数料収入を得て、2017年5月には黒字化を達成した。その一方で、新規事業に意欲的に取り組んでいる。

「日本での提供はこれからですが、法人限定にしていたボーダレスアカウントを最近、イギリスとヨーロッパ、アメリカ、オーストラリアで個人にも提供を始めました。このサービスを使うことで、現地通貨の銀行口座を保持することができます。例えば、アメリカに行かずともアメリカの現地銀行口座の番号を取得できるため、イギリスにいながらアメリカの人にモノを売り、請求書を発行する際に口座情報を記載すれば手数料がかかりません。またユーザーは自分の好きなタイミングで両替することも可能です」(クリスト)

ボーダレスアカウントには、デビットマスターカードが付属しているので、現地で決済を行うことも可能となっている。

創業から7年。今後、TransferWiseはボーダレスアカウントの普及に注力していくほか、TransferWiseのユーザー獲得も引き続き、強化していくという。

「2016年9月に日本でもサービスを開始したのですが、まだ私たちは資金移動業者として免許登録が済んでいるだけですので、1回につき100万円の送金しか行うことができない。最近、金融庁で金融規制の見直しなどが検討されているので、今後、上限が100万円のルールも変わっていったらいい。

日本は昨年比でユーザー数が300%増加しており、重要な市場であると認識しているので、規制の見直しに期待したいね(笑)」(クリスト)

自分たちのフラストレーションから始まった会社、事業。目指すのは、海外送金の際の”隠れたコスト”で困る人をひとりでも少なくすることだ。

 

「儲けることは考えていません。コストをカバーできるだけの利益があれば、ビジネスはサスティナブルに続けていける。この考えで、ずっとビジネスをやっていきたいと思っています」(クリスト)

Forbes JAPAN

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