「不審者が入りにくい家」はつくれる…防犯のプロが伝授「自宅の侵入リスクを下げる3つの対策」
2025年4月20日(日)7時16分 プレジデント社
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/AndreyPopov
(前編から続く)
写真=iStock.com/AndreyPopov
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■侵入盗と闇バイト強盗の対策の違い
前編の冒頭でも触れた通り、家に侵入して貴重品を盗む侵入盗の中で、最も多いのは、留守を狙う「空き巣」、次が就寝中に入られる「忍び込み」で、この2つだけで9割以上を占めます。家人に危害を加える闇バイト強盗など侵入強盗の割合は、約1%と実は少ないのです。(警察庁:令和5年の犯罪より)
従来型の侵入盗というのは、捕まるリスクを避けるため、家人がいない時間帯を狙う犯行が多い傾向にあります。近隣や通行者の見守りの目があると、犯行を断念することもあるので、人の目が届きやすい環境をつくることが重要になります。つまり、敷地の前で犯行を阻止する「敷地に入らせない」対策を重点的に講じます。
一方、闇バイト強盗の場合は、指示を受けた素人があえて在宅中、しかも無防備な深夜・早朝を狙い、家人に暴行を加えて金品がある場所を聞き出すという傾向があります。手段を選ばず無理に実行する強盗に対しては、命を守ることを最優先にしなければいけないので、「家に入られた時」の対策を徹底する必要があるのです。
■不審者をブロックする「侵入防止線」
住宅街に限って言うと、他人が自宅の敷地に入らないようにする対策を講じることが重要です。宅配業者が置き配のふりをしたり、水道業者がメーターを見るふりをしたりして、敷地の奥まですっと入っていくことができてしまう環境は、とても危険です。
不審者を簡単に入れない環境をつくるには、敷地に「侵入防止線」をつくることです。それには、次の3つの対策を講じてください。
対策1:建物横通路は「侵入禁止」に
仕切り戸があると入りにくい(画像提供=旭化成ホームズ LONGLIFE研究所)
隣家との間の通路に園芸用のフェンスや鍵付の仕切り戸を立てる、自転車を置き、チェーンロックで止める、などして、敷地に入っている人がいたら怪しいと近隣の人や通行人に思わせる状況をつくります。
家の前にオープンの駐車スペースがある場合、犯行グループがそこに車を止めて、一人が見張り、車の陰で残りの侵入犯がバールで玄関や窓をこじ開け、中へ入るという手口があります。
犯行を阻止するために道路と駐車スペースの間にゲートやチェーンポールを立てるといいでしょう。こうすれば犯人は車で陰を作ることができません。簡易的に複数のプランターを置く対策ならば、工事をせずに多少の抑止効果が期待できます。
■ライトの向きが逆になっていないか
対策2:道路外からの見通し確保
道路から玄関や窓付近の様子をよく見通せるようにすると、通行人や近隣の人が不審者に気づき、110番通報につながります。草木が生い茂って敷地内が外から全く見えない状態にならないよう、こまめに植栽剪定することも大切です。
対策3:人感照明を設置
夜でも見通せるようにするには人感照明を設置します。照明は道路側を照らすように設置してしまいがちですが、これだと不審者が見えないので、設置する向きに注意してください。侵入者への威嚇ではなく、周囲の人に気づいてもらうために付けるので、道路側から敷地内に向かってを照らすようにライトを設置します。
画像提供=旭化成ホームズ LONGLIFE研究所
玄関先に威嚇のために設置するフラッシュライトは、指示に従って躊躇なく犯行に及ぶ闇バイト強盗の場合、あまり効果は期待できません。ただ、広範囲に照らすため、窓を割って侵入しようとしている不審者に近隣の人や通行人が気づく可能性があります。
ダミーで安価なセンサー付き照明や防犯カメラもありますが、見た目からしてダミーと分からないようなものであれば、多少の効果はあるかもしれません。事前に下見をする犯行グループに「防犯を意識している家」だと示すこともできます。
■防犯カメラが付いている家は嫌がられる?
侵入盗の犯人あるいは犯行グループは実行前に、ガスや水道メーターの点検を装うなどして標的となる家の下見をしていると報道されています。その際に顔を撮影されるのを嫌がるので、録画機能付きの防犯カメラやTVインターホンを付けると、ある程度抑止効果が期待できると推測されます。
あくまでも一連の事件の報道映像から推測した段階ですが、闇バイト強盗犯は防犯カメラのあるところを狙わない可能性があります。被害に遭った家の報道映像で、防犯カメラが確認できたケースは2件だけでした。
防犯カメラは、万が一被害に遭った場合、捜査にも役立ちます。必要な機能は、動いているものを撮影できる「動体検知モーションキャプチャー」と「スマホ連動機能」、暗い映像でもしっかり見える画像性能のものをおすすめします。声を出せる機能付きのものだと、声で犯人を威嚇できるのでより効果的です。
■高齢者世帯はスマホに慣れる練習を
窓ガラスを割る音などに気づいた場合は、素早く寝室等にこもり、鍵をかけ、警察に通報します。犯人との接触を避け、身を潜めて隠れることです。
通報を受けた警察は、地域にもよりますが、統計上平均8分台で現場に到着するので、それまで息を潜めて犯人に気づかれないようにします。
写真=iStock.com/kuremo
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/kuremo
警備会社の防犯システムに加入するのもおすすめです。万が一の時は警報音が出て自動通報し、一番近くにいる警備員が駆け付けるサービスを利用するのは、いざという時に命を守る対策となります。警報音が聞こえたら、素早く寝室に鍵をかけて隠れ、念のため警察にも通報します。
闇バイト強盗事件では、高齢者や女性だけの家が被害に遭う傾向が見られました。素早く危険を察知して、とっさの行動やスマートフォンによる通報ができるように普段から意識しておくことが重要です。
■荷物を受け取るときにも警戒すべき
集合住宅の場合、侵入可能な場所が、中間階は廊下側のみ、1階と最上階は廊下側とベランダ側と限られているので、防犯対策としてはすべての鍵をかけておくことが基本になります。
自己所有でもベランダと廊下は共用部分(自己所有外)になるので、防犯対策は規約等を確認のうえ、可能であれば行ってください。賃貸の場合は、必ず管理会社や大家さんの承認を得たうえで、玄関や窓の強化、鍵やサッシの設置などを行ってください。
写真=iStock.com/Kunihito Ikeda
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オートロックがある物件は、共用玄関から住民と一緒に中に入る「共連れ」に注意します。後ろを振り返り不審者がいないかどうか、確認することです。
女性の一人暮らしの場合は、1人しか住んでいないと気づかれないように洗濯物の干し方を工夫する、郵便物を溜めない、出勤・帰宅時間など生活サイクルを知られないようにするなどに注意しましょう。
戸建てと集合住宅の防犯で共通していることなのですが、ドアを開けて宅配の荷物を受け取らないことです。家の中を覗かれたり、押し入られたりする可能性があるので、インターホン越しに玄関前に置いておくよう頼んでください。
留守中の置き配はしないほうがいいですね。住所と名前を確認され、留守と分かり不用心です。宅配ボックスがあれば利用するか、コンビニ受け取りにするなど工夫しましょう。
■日常的に近所付き合いをしておく効果
従来型の侵入盗は「入らせないための対策」①〜③を、加えて闇バイトなどの強盗は「入られてしまった後の対策」④を徹底してください。
住宅地で起きる侵入盗の対策で最もコストがかからず効果的なのが、近所付き合いです。地域の自治会やコミュニティで清掃活動や挨拶する関係性があると、自分の家だけでなく地域全体の防犯性が高まり、犯罪の起きにくい街になります。
①狙われない
・訪問販売業者(不用品買取、リフォーム、ガス・水道)は家に入れず、金品、貴金属などの情報は出さない。
・玄関口にTVインターホンを設置して、不審な訪問者や犯行グループの下見の様子を録音・録画できる状態にしておく。
・シャッター、窓、ドアの戸締り習慣を忘れない。
・周囲の人に通報してもらえるように、近所付き合いを大切にする。
②敷地に入らせない
・自転車やフェンスなどを置いて、敷地の奥に近づけないように、入ったら怪しいとみられる状態をつくる。
・植栽を手入れして、窓や玄関を外から見通しできるようにする。
・夜の犯行でも近隣が気づくよう、人感照明を設置する。
③家に入らせない
・シャッターは必ず閉める。
・シャッターのない窓は防犯部品、防犯ガラス、防犯フィルムを活用する。
・補助錠やサブロック機能を活用し、2ロックにする。
→犯行遂行するまで2倍の時間を稼ぎ、不審な動きを近隣に知らせる、または犯行を諦めさせる。
・物置や室外機は窓の下に設置しない。
④自分で気づき、通報する
・大音量の出るセンサーを活用する。
・不審な物音あるいはアラーム音に気づき、部屋に鍵をかけて犯人との接触を避け、110番通報する。
・警備会社のアラーム音に気づき、部屋にカギをかけて警備会社の警備員が駆け付けるまで隠れる。その間、110番通報する。
最後に、防犯対策は絶対に確実というものがありません。リスクを減らすのであれば、何でも取り入れて自分や家族の身を守りましょう。
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山田 恭司(やまだ・きょうじ)
旭化成ホームズ株式会社 LONGLIFE総合研究所主任研究員
一級建築士、防犯設備士の資格を保持している。
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(旭化成ホームズ株式会社 LONGLIFE総合研究所主任研究員 山田 恭司 聞き手・構成=ライター・中沢弘子)