「なぜ日本車ばかり売れるんだ?」突然絡んできた米国人が思わず感嘆…医師・和田秀樹の"絶妙な切り返し"【2025年3月BEST5】

2025年4月20日(日)18時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/MicroStockHub


2025年3月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト5をお送りします。仕事術・スキル部門の第4位は——。


▼第1位 「わかりました」を"I understood."と言ったらブチギレられた…通訳者が教える「中学英語」の意外な落とし穴
▼第2位 これほど「壁打ち」に最適な場所はなかった…「喫煙ルームと飲み会」が消滅した日本の企業で起きていること
▼第3位 「コミュ力が高い人」はサラッと使っている…「たしかに」でも「なるほど」でもない"最強の相槌フレーズ"
▼第4位 「なぜ日本車ばかり売れるんだ?」突然絡んできた米国人が思わず感嘆…医師・和田秀樹の"絶妙な切り返し"
▼第5位 寝る前に布団の中で「1分間」考えるだけ…脳科学者が教える「本当に頭のいい人」が毎晩やっていること


日本人は世界からどのように評価されているのか。医師の和田秀樹さんは「『即断即決できない交渉下手』といわれることもあるが、それは誤解だ。マイナス面ばかり強調されがちなのは、外国人が商談で自分が有利になるように仕向けるための戦略ではないか」という——。

※本稿は、和田秀樹『60歳からの仕事の壁 10年後も食える人、1年後すら危ない人』(青春新書インテリジェンス)の一部を再編集したものです。


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■成否は「アナログ脳」の差で決まる


全国の小学校で定着した「調べ学習」。自分がわからない言葉や事柄に対して、ネットで検索して正解を見つけるのではなく、図書館に行ったり、辞書や百科事典を引いたりして調べる学習法です。


アナログな方法だと思う人もいるでしょう。しかし、パソコンなどのデジタルツールをあえて使わないメリットがあります。ひと手間かけて答えを探すことで、調べることが単に正解さえわかればいいという単純作業ではなくなるからです。


あるいは、紙媒体の辞書のページをめくることで、調べたい目的以外の単語や図版も目に入ります。新たに興味や好奇心が生まれ、さらに知識を広げてくれる効果があるのです。


また、このようなアナログ式勉強法で自分自身の知識量を増やしてから、デジタルツールを使ったほうが飛躍的な力を発揮できます。


たとえば、知らない単語を電子辞書で引く場合、英単語を1万語知っている人だと類似語や例文まで覚えやすく、実用的に身につきます。しかし、500語程度しか知らない人は、目的の単語の意味を知るだけで、そこから知識が広がりにくいのです。


とはいえ、いまどき、パソコンもスマホも一切使わない“アナログ派”は少数でしょう。


とくにビジネスはデジタルなしで成立しません。しかし、デジタルツールは、脳をアナログにしてうまく使いこなすのがお勧めです。


どれだけデジタルツールの精度が進化しても、ビジネスは一筋縄でいかないものです。たとえば、アナログの最たるもの、“人間”を相手にしたとき、成否はアナログ脳の差で決まるといっても過言ではありません。


■ネットは「考えるネタ」を見つけるところ


仮に、私と仕事をしたいと思う人がいたとしましょう。「実際に会ったときのフィーリングがすべてだ」と、事前情報がゼロに近い状態で来るのは論外です。私もそんな人につきあっているほどヒマではありません。多少は「和田秀樹」を下調べをしてきてほしい。


そこで一面的な情報だけを見て、私という人間を知った気になるのはデジタル脳です。私に批判的な意見はネット上に数多くあります。その1つ、2つの情報を読んで、「学歴論者」と決めつけるのは、デジタルツールをデジタル脳でしか使えていない。


ほめた情報、クサした情報の両方を取って、多少は「和田秀樹」という人間の全体像がつかめてくるでしょう。たとえウィキペディアでも、他人から見た情報を、ある範囲でまとめたものに過ぎないのです。


ですから、私のように本を出している相手なら、著書を読むのが理想的ですね。本人の書く物だから、著者の人間性の一端がにじみ出ているものです。


それでも、まだ相手をわかった気になるのは早い。実際に会ってみないとわからない、という余地は残しておくのがアナログ脳です。直接の対話というアナログのコミュニケーションを通して、相手の雰囲気とか、波長が合う部分が見えてきます。


このようにデジタルツールは、正解を知るためではなく、考える材料を集める目的で使うのです。アナログ脳でデジタル情報を有効に活かせれば、相手の人間性・周辺データを知る時間を短縮でき、ビジネスの交渉プランを練りやすくなります。


■最低でも2つの軸で考えたほうがいい


コンピュータのプログラムは0と1の羅列でできています。だから、私の考えるデジタル脳は、0か1という単純思考を指します。


逆にアナログ脳は、その0から1までの間をどれだけの“点”で埋めているかで決まります。当然アナログだから個人差がある。


たとえば、0.1、0.6、0.9ぐらいしかない人。0.11、0.12、0.13……とさらに細かく刻む人もいるでしょう。アナログ脳を鍛えるとは、なるべく多くの点で埋められるようになることを意味します。


具体的には「○○は××である」と決めつけるデジタル脳よりも、いろんな可能性を想定できる人が優秀なアナログ脳です。


では、実際にアナログ脳を鍛える方法を教えましょう。それは、人や物事を分析する時に、最低でも2つの軸で考えるトレーニングをすることです。


たとえば、取引先に自分を嫌っている担当者がいたとします。そのとき、1つの軸だけで考えてはいけません。敵か味方かという2分割思考ではデジタル脳です。


画像=iStock.com/CoreDesignKEY
※画像はイメージです - 画像=iStock.com/CoreDesignKEY

■結論を急ぐ必要はない


それ以外に、自分に対して有益な人間か、有害な人間かの軸でも考えてみる。有益な相手なら、ムカツク人間であってもつきあう選択肢は当然出てきます。結論を急ぐ必要はありません。


アメリカの精神医学では患者を5軸で分析してきました。①精神疾患②パーソナリティや知能レベル③身体疾患④その患者を取り巻く社会環境の問題点⑤全体的(社会的)な機能の評定の5軸です。


やはり、人間相手の分析はそこまで緻密にやる必要があります。その意味では、たとえば大事件を起こした犯人に対して日本のメディアが、犯人を取り巻く社会環境やパーソナリティだけで分析しているのは、一面的だと思いませんか。


ビジネスシーンでも最低「敵か、味方か?」「有益か、有害か?」の2軸で考えてみてください。敵でも有益な人間もいるという発想です。


とはいえ、「味方で有益な人物」と分析しても、1割ぐらいはあなたのことを嫌ってるかも、という余地は残すべきです。100%味方、100%有益と決めつけないことで、良好な人間関係を築けるでしょう。


■海外では、意外な人たちが評価されている


海外から評価の高い“人材”を知っていますか?


それはニッポンの“労働者”です。会社員、エンジニア、サービス業に関わる職業、料理人に野球選手やサッカー選手……例を挙げ切れないほどです。


日本の会社員は相手をだますような契約をしません。エンジニアは手を抜かず、改善をくり返して、高品質の商品を作ります。


マジメに練習に取り組み、チームへの協調性を発揮する日本のプロスポーツ選手も評価が高いでしょう。


では、逆に評価が低い日本人を挙げましょう。


それは、政治家、大学教授、経営者です。


日本は、海外からの評価と、国内の評価が逆転している変な国なのです。偉そうな日本の経営者や政治家に教えを請うために「ウチに来てほしい」と外国から呼ばれた話を聞いたことはないでしょう。


国内でこそ社会的地位が高い大学教授ですが、海外の教育機関が日本の高校までの教育システムを参考にした例は多くても、大学に関してはサッパリです。


写真=iStock.com/baona
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■「日本人は交渉下手」は誤解である


反面、野球やサッカーなどのプロスポーツ選手は言うに及ばず、エンジニアは海外から引く手あまたです。日本の熟練の技術者が高給で迎えられる話はめずらしくありません。


グローバル・スタンダード化にひるむ必要はないのです。


よく言われる「日本人は即断即決できない交渉下手」というのも、じつは誤解です。というより、マイナス面ばかり強調されがちなのは、外国人が、商談で自分が有利になるように仕向けるための戦略です。


むしろ、日本人は優秀でスキがないと思っているので、じっくり取り組まれると困るのでしょう。


たとえ、海外との商談で「優柔不断だ。その場で決断できない」と非難されても問題ありません。毅然として「なぜ1日ぐらい待てないのですか」と返せばいい。


その場で結論を迫るのは、相手を思考停止させる典型的なやり口です。振り込め詐欺と同じなので気をつけてください。


■話せることより、話す内容が重要


あるいは、自分の英語は下手で、外国人からバカにされるんじゃないかと不安になる人が多いですよね。でも、それも思い過ごしです。


向こうでは、日本人は頭がいいと思っているから、英語をしゃべれるだけで頭が良く見え、バカにはしないのです。


じつは、私自身、英語は得意ではありません。しかし、シカゴのバーでこんな経験をしています。


「なぜアメリカの車が売れないで、日本車が売れているんだ?」


若いアメリカ人男性からそう質問され、私は昔のマツダの例で説明しました。


「会社が潰れかけたとき、アメリカなら従業員を解雇するだろうけどマツダはしなかった。その代わり、工場で働いている社員もセールスに回して頑張った。


すると、お客の苦情やマツダ車に求めているニーズをつかむことができ、その経験を工場で反映したから立ち直ることができたんだ。


でも、アメリカでは車のディーラーは1社の系列ではなく、複数のメーカーの車を扱う。だから、客のニーズがつかみにくい」


そう一生懸命に話したら、彼は自分の彼女に言いました。


「この日本人は英語は下手だけど、めちゃくちゃクレバーだ」


■日本人はもっと自信を持ったほうがいい


だから、英語力を鍛えるより、海外の人が知らない話や理屈が合う話をするほうが賢いと思われ、仕事はやりやすくなるはずです。もっと自信を持ちましょう。たとえば、


「あなたの長所と短所を挙げてください」


そう問われると、ほとんどの日本人は長所よりも短所をたくさん書きます。


でも、心理学的には、人は「相手の長所」を意識しやすいものです。だから賢い人は、自分の長所をうまく見せようとします。いい面を見せることが、ビジネスでも、国のイメージを売るにしても、成功のためのポイントと言えるでしょう。



和田秀樹『60歳からの仕事の壁 10年後も食える人、1年後すら危ない人』(青春新書インテリジェンス)

とはいえ、取ってつけたような長所は魅力になりません。


たとえば、日本に観光客を増やしたくても「東京スカイツリーを見に来て」では弱い。長所はもっと普遍的な部分に隠れています。


「日本の飲食店は各国料理がバラエティに富んでいて美味しい」
「夜中に路上を1人で歩いていても全然平気だ」


などといったことです。


せっかくのニッポンの良いところを活用すれば、いろんなビジネスシーンで大きなチャンスがあります。


(初公開日:2025年3月25日)


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和田 秀樹(わだ・ひでき)
精神科医
1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。
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(精神科医 和田 秀樹)

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