【スポーツメンタル】外発的動機は短命?持続的なモチベーションを得る方法

2023年4月21日(金)11時0分 ココカラネクスト

 スポーツ選手やアスリートにおいて、自身のモチベーションはパフォーマンスに大きな影響を与えます。しかし、モチベーションの維持は容易なことではありません。そこで、この記事では外発的動機とモチベーションの関係について解説し、アスリートがより良いパフォーマンスを発揮するためのヒントを提供します。

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外発的動機とは

ここではスポーツ選手やアスリートのモチベーションに大きく影響する外発的動機について解説します。

外発的動機の定義と例
外発的動機とは、外部から与えられる報酬や評価、プレッシャーなどの要因によって、モチベーションを維持しようとする動機です。

例えば、試合での勝利や優勝、スポンサーからの報酬や賞金などが挙げられます。 外発的動機は報酬や罰によって成り立っています。そのため、これらの要因がなくなってしまうと気力を維持することが難しくなると考えることもできるでしょう。

脳科学においては、脳内報酬系である中脳のドーパミン神経系が関与しています。

具体的には、報酬が期待される時には、前頭前野や腹側被蓋野、帯状回などの前頭葉の領域が活性化されます。報酬が与えられた場合には、側坐核や前頭葉背外側部などの領域が活性化されます。

また、欲求不満が解消されると、海馬や扁桃体、帯状回などの領域が関与します。これらの領域は、感情処理や学習、記憶形成に関与しています。このように、外発的動機には複数の脳領域が関与しています。

外発的動機が発生する背景や要因
外発的動機が発生する背景には、競技の性質や社会的環境が関係します。 例えば、競技自体が報酬や賞金を与えることが一般的な場合や、世間からの注目や評価が高い競技である場合、外発的動機が増加する傾向があります。 また、スポンサーのサポートやチームのメンバーからの支援なども、外発的動機を生み出す要因となり得るでしょう。

外発的動機がモチベーションを維持する上で役立つことは否定できません。 ただし、多くの場合では一過性なものであり、長期的なモチベーション維持には向いていないないとも言われます。 このため、外発的動機と自分自身がやりたいと思うこと、自己成長や達成感、興味や好奇心など、内面から生まれる動機である「内発的動機」とのバランスをうまくとることが大切です。

外発的動機とモチベーションの相関について

ここでは、具体的に外発的動機がどのようにモチベーションに関与し影響するのかについて、ウェスタンシドニー大学の行なったある研究Temporal ordering of motivational quality and athlete burnout in elite sport(2011)を基に解説します。

外発的動機がモチベーションや燃え尽き症候群に与える影響
この研究では自分自身で目標を設定し、自己による目標や成果の実現を図るための考え方である自己決定理論を用いて、ニュージーランドのエリートアスリートを対象に、モチベーションと燃え尽き症候群(バーンアウト)の関係を調査しました。

この研究の結果から、低い自己決定の度合いはアスリートの燃え尽き症候群を先行させると共に、外発的動機付けもバーンアウトの先行要因であることが示されました。

外発的動機がモチベーションに与える負の影響
この研究からわかるように外発的動機は、長期的にはモチベーションを低下させることがあります。 外部からの報酬や評価を目的に動機付けされると、その行動に対する内在的な興味ややりがいが減少し、やがては行動自体が苦痛となります。 これは過剰報酬効果と呼ばれます。 また、外発的動機は、自己決定理論において重要な概念としても取り上げられています。

自己決定理論によれば、人は自己決定や自己支配を行うことで、自己実現や満足感を得ることができます。 しかし、外部からの圧力や報酬によって動機付けられると、自己決定力が低下し、自己実現や満足感を得ることができなくなる可能性があります。

外発的動機をモチベーションに変えるには

外発的動機をモチベーションに変える方法を解説します。

外発的動機をモチベーションに変換する方法
外発的動機を内発的動機に変換するには、以下のような方法をとると良いでしょう。 まず、自分自身が興味を持っていることや、自分のスキルや能力を伸ばせるような課題を設定することが大切です。

また、目標設定や計画策定、進捗状況の確認などを通じて、自分自身の進歩を見ていくことで自己成長を感じることができます。 他人の評価や承認を求めることではなく、自分自身が納得し、満足できるような成果を追求することが大切です。

また、脳の仕組みを考えると内発的動機に関わる前頭前野や頭頂葉、側頭葉などの高次脳領域を活性化していく必要があります。

具体的には、自己実現に関連する場合、前頭前野や頭頂葉の特定の領域が活性化されます。興味や関心がある場合、前帯状皮質や背側注意ネットワークなどが活性化されます。また、創造性や洞察力を必要とするタスクに取り組む場合には、側頭葉や後頭葉の領域が活性化されることがわかっています。

まとめ

自己決定理論では行動の自己決定性が重要であり、自己決定的動機への転換を行うことが大切です。 そのためには、達成感を感じられる目標を設定する、フィードバックを得るといった工夫を行うとよいでしょう。

外発的動機はアスリートにとってなかなか活用しにくい要因であると感じてしまうかもしれませんが、まずはモチベーションに変換するための環境づくりから始めてみてはいかがでしょうか。

参考文献・Temporal ordering of motivational quality and athlete burnout in elite sport(2011)

[文:スポーツメンタルコーチ鈴木颯人のメンタルコラム]

※健康、ダイエット、運動等の方法、メソッドに関しては、あくまでも取材対象者の個人的な意見、ノウハウで、必ず効果がある事を保証するものではありません。

一般社団法人日本スポーツメンタルコーチ協会
代表理事 鈴木颯人

1983年、イギリス生まれの東京育ち。7歳から野球を始め、高校は強豪校にスポーツ推薦で入学するも、結果を出せず挫折。大学卒業後の社会人生活では、多忙から心と体のバランスを崩し、休職を経験。
こうした生い立ちをもとに、脳と心の仕組みを学び、勝負所で力を発揮させるメソッド、スポーツメンタルコーチングを提唱。
プロアマ・有名無名を問わず、多くの競技のスポーツ選手のパフォーマンスを劇的にアップさせている。世界チャンピオン9名、全日本チャンピオン13名、ドラフト指名4名など実績多数。
アスリート以外にも、スポーツをがんばる子どもを持つ親御さんや指導者、先生を対象にした『1人で頑張る方を支えるオンラインコミュニティ・Space』を主催、運営。
『弱いメンタルに劇的に効くアスリートの言葉』『モチベーションを劇的に引き出す究極のメンタルコーチ術』など著書8冊累計10万部。

ココカラネクスト

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