悲観的な見通し!? 今後の原油価格の行方
2025年4月22日(火)9時37分 財経新聞
WTI原油先物は、トランプ大統領が相互関税を発表(その後90日間の猶予)し、全世界同時株安の“ブラックマンデー”と言われた4月7日に、1バレル=60ドルを割り込み、その後も60ドル前半の冴えない動きが続いている。
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国際エネルギー機関(IEA)は15日に発表した月報で、米中貿易摩擦を理由に今年の世界の原油需要見通しを大幅に下方修正。石油輸出国機構(OPEC)も、14日の月報で同じく大幅に下方修正している。
トランプ関税と中国による報復関税による米中貿易摩擦で、原油価格も下落傾向が続くのだろうか?
●気になるイランとの核協議
21日には米国とイランの核協議が進展したことで供給懸念が和らぎ、原油先物が1%超下落した。
米国とイラン両政府は19日に、オマーンの仲介によりイタリア・ローマで2回目の協議を行った。26日にもオマーンで協議が行われる予定で、イランによる核兵器保有阻止と米国の制裁解除に向けて、早期解決が期待される。
米政権高官も協議で「非常に良い進展」があったと手応えを明らかにしており、米国とイランによる融和がさらなる原油価格の下落に繋がる可能性もある。
しかし、米国側の提案にはイラン保守強硬派が猛反発しており、交渉が決裂しイスラエル主導のイラン核施設攻撃の懸念が高まるなどの動きがあれば、急上昇することも考えられる。
●悲観的な予想も?気になるロシアの動き
ゴールドマン・サックスは、2026年末に原油価格が1バレル=55ドルに落ち込むと予想している。
ロシア経済省は北海ブレント原油の2025年度の平均見通し価格を約17%下方修正し、ロシアの代表的な油種ウラル原油価格も約20%下方修正している。
EUと米国との貿易交渉で、今後米国産LNG(液化天然ガス)が議題に上がることになる見通しだが、交渉次第ではEUが輸入量を増やすか、もしくは交渉次第で止められることもリスクである。
そうなれば、ロシア産のエネルギーに頼らざるを得なくなり、EUが掲げる2027年までのロシアからのエネルギー輸入停止を、大幅に転換せざるを得なくなることもあり得る。
ロシア側からしても、原油価格の下落は経済減速に繋がり、ウクライナとの交渉に大きな影響を及ぼさざるを得ない。
トランプ関税による原油価格下落は、地政学さえも大きく動かすかもしれない。