エンジン車との決別を宣言!ホンダ新社長に投げかけた2つの質問

4月26日(月)6時0分 JBpress

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 ホンダは2021年4月23日、三部敏宏(みべ・としひろ)氏の社長就任会見を行った。その中で、三部新社長は「2040年にEV(電気自動車)とFCV(燃料電池車)の販売比率をグローバルで100%」とする目標を発表した。

 達成年を明確に示して全モデルをEVまたFCVとする見通しを公表したのは、日系メーカーではホンダが初めてだ。


日本市場は特殊

 ホンダは2040年に向けて段階的に電動化率を上げていく。2030年には先進国全体でのEV、FCVの販売比率を40%に、2035年には一気に倍増して80%まで引き上げるという。

 2040年を達成目標においた理由については、「ホンダが関わる全ての製品と企業活動を通じて2050年にカーボンニュートラルを目指すためには、市場における新車の普及を考慮すると、2050年の10年前である2040年には達成する必要がある」と説明した。

 2030年と2035年の達成目標比率については、パリ協定で用いられているサイエンス・ベースド・ターゲット(科学と整合した目標設定)からホンダ独自に算出したという。

 ホンダによるEV/FCV化を地域別で見ると、北米では、GM(ゼネラルモーターズ)主導で共同開発するEVプラットフォーム「アルティウム」を使った大型EVを、ホンダブランドとアキュラブランドで2024年に発売する。加えて、ホンダ独自開発のEVプラットフォーム「e:アーキテクチャー」を採用した中小型EVを2020年代後半から順次北米市場に投入する。

 世界最大の自動車市場である中国では、「e:アーキテクチャー」採用の中小型EVを5年以内にホンダブランドとして10車種投入。バッテリーの供給では現地調達を増やし、中国の電池大手のCATLとの連携を強化する。

 一方、日本では2030年時点で、EVとFCVの比率はアメリカや中国と比べて半分の20%にとどまる。それを2035年までに4倍の80%まで引き上げる。

 オンラインで行われた会見で三部社長は「日本は(世界の中で)突出してハイブリッド車の比率が高い。電動化は(国や地域の)電力事情にも影響されることもあり、日本では当面、ハイブリッド車によるCO2削減効果を見込む」と日本市場の特殊性を強調した。

 そのほか、エネルギー事業と電動車事業を連携する「eMaaS(イーマース)」事業を、「小型交換式バッテリー『モバイルパワーパック』の活用拡大」「車載の大型電池の活用」、そして「燃料電池システムの応用と展開」をトータルパッケージとして捉えて、事業化を目指す。


ホンダの課題はなにか?

 では、ホンダがEV/FCV化を推進する上で課題はどこにあるのか?

 三部社長は「課題はまだまだ多く、超えなければならないハードルは高い」と前置きした上で、「開発ではやはりバッテリーが大きな課題だ」と語った。「既存のリチウムイオン2次電池は燃えやすいという特性があり、一度燃えると大きな(社会)問題となるため、取り扱いに最新の注意を払っている」という。

 また、バッテリーのコストについては、バッテリーパックに搭載された状態で電池容量1kWhあたり米100ドル(約1万800円)を切るかどうかが今のところ限界だという見解を示した。

 その上で、バッテリーの課題解決のためには、「全固体電池」がブレイクスルーになり得るという。電解質が固体の全固体電池は、エネルギー密度が高い。事業性の改善に向けて、現在、自社で全固体電池の研究開発を進めているところだという。

 また今後EVやFCVの専用工場を稼働させるかどうかについては、「現行の生産体制を使った生産の効率化を検討していく。どこかのタイミングでEV専用工場が必要になると考えているが、まだ検討段階だ」と説明した。

 さらに、電動化率の向上に伴い、販売体制についても大幅な見直しを視野に入れていることを明らかにした。「オンライン販売など、EVでは売り方もキーポイントになる」という。おそらくテスラを念頭に置いた販売体制に移行していくのだろう。

 そのほか、記者発表の前日に日本政府が公表した「2030年に温室効果ガスを2013年比で46%減」という目標については、「極めて妥当。課題は多いが明確な数字を出したという意味で(達成に向けた意欲を示す点で)、ホンダも政府も同じだと思う」との肯定的な受け止め方を示した。


三部社長に投げかけた2つの質問

 今回のオンライン会見に参加した筆者は、三部社長に2つの質問をした。

 1点目は、将来の生産・販売台数をどう考えるか、だ。

 極論、または理想論かもしれないが、自動車業界がカーボンニュートラルに貢献できる施策として最も効果が大きいのは、クルマの数の適正化であろう。だが、ただ台数を抑制しては、企業経営が成り立たない。そうなると、新たな収益構造を考えなければならない。なかでも期待されるのが、自動車産業の新しい潮流「CASE」に沿った新サービスである。CASEとは、Connected(コネクテッド)、Autonomous/Automated(自動化)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)を意味する。ホンダではその対応として、ホンダモビリティソルーションズという新会社が昨年立ち上がっている。

 ホンダとしては、カーボンニュートラルに向けた、社会におけるクルマの数の適正化についてどんな方針を立てているのか? 「生産台数の抑制」と「新サービスの拡充」という、2つの方向性のバランスについてどう考えているのか、尋ねてみた。

 これに対して三部社長は次のように答えた。

「難しい質問だ。現在、パーソナルカーに関する我々の事業は、研究開発、生産、販売店を通じての販売だが、今後は、本日説明した(GM関連のベンチャー企業と協業で実証を行う)自動運転レベル4のロボットタクシー、またはクルマの公共化などが、スマートシティ構想などのなかで進むと考えている。(そうなると)いまのパーソナルカーを主体とした台数がどのように変化するのか、シミュレーションはしているが適正台数を見出す段階に至っていない。

 ただ、ビジネスがパーソナルカーの売り切り型から必ず変化するという認識はしている。今後、新しい事業を通じて(適正な)台数を考えていく。(現状では)未来のビジネスが見えないので、目標台数の設定が困難な状況にある」

 2点目は、国内メーカーとのアライアンスについてだ。

 ホンダは直近では、災害時用の移動式発電システムの開発でトヨタと協業している。それにとどまらず、今後、日本自動車工業会として推奨する「e-Fuel」(CO2と水素による合成燃料)、モバイルパワーパックの燃料電池バージョンなど、新たな自動車社会のインフラを整えていくにあたって、関連企業同士が協業する機会は増えていくことだろう。ホンダとしてはトヨタや日系メーカー各社とのアライアンスの可能性をどう考えているのか、聞いた。

 それに対する三部社長の答えは次のとおりだった。

「アライアンスを組む相手が海外メーカーだけとは思っていない。資本関係は考えていないが、(連携を)組むことによってウイン・ウインの関係が成立するのであれば、アライアンスの可能性は否定しない。今後も可能性は十分にある。または、新たな市場が早期に形成できる可能性があれば、アライアンスを組むこともある。例えば、今日説明したモバイルパワーパックでは2輪メーカー4社で交換バッテリーステーションなど(市場創生ための)ベースを作り(規格の)標準化を進めた。4輪でも(そうした市場創出の向けたのアライアンスの)可能性は十分にあると思う」

 ホンダは今後、売上高の増減に左右されず、6年間で総額5兆円程度の研究開発費を投入するという。ホンダのこれからの動きを注視していきたい。

筆者:桃田 健史

JBpress

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