「もしかして1000円カット?」バレる髪型には特徴がある…カット後の確認で「こめかみ付近」をチェックすべき理由

2025年4月26日(土)18時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dzmitry Skazau

「1000円カット」を利用する際はどんなことに気をつければいいのか。美容師の操作イトウさんは「1000円カットのクオリティは、担当する理美容師によってバラツキがある。失敗しないためには『カット後のチェック』で注意すべきポイントがある」という——。
写真=iStock.com/Dzmitry Skazau
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Dzmitry Skazau

■「1000円カット」で本当に大丈夫なのか


理美容業界の中で例外的な低価格を実現している、1000円カット。ほとんどの店舗が駅近・駅ナカや利便性の高い立地に出店されていて、利用したことがある方も多いはずです。


しかし利用したことがない方は「値段相応でしょ?」と、あまり良い印象を持っていないのではないでしょうか。以前も「1000円カットを利用したらひどい髪型になった」という岡崎体育さんのXでの投稿が話題になりました。


せっかく便利で安いのに、一目で1000円カットだとバレてしまうようでは、利用するのも及び腰になってしまいます。では同業者である筆者から見て、「プロが見たら一目で1000円カットだとバレる髪型」はあるのか、「実際の1000円カットの実力は?」「こんな注文は困る」「どう利用すれば効果的なのか」について解説します。


■じつは腕のいい美容師も多く所属している


1000円カット(最大手QBハウスのカット料金は、2025年4月時点で1400円)は、理美容師の負担になる一切の無駄を省くことで、「カットの安売り」を可能にしています。


「10分でカットを終える」「シャンプーをしない」「ヘアカラーやパーマはしない」「切った髪の毛は掃除機で吸う」など、通常の理美容室での工程を省き「カット専門店」として全国に波及しています。


ですが、安価だからといって一概に「下手な人しかいない」ということはありません。また1000円カットだからといって、一律に「1000円カットだとバレる髪型」になることもありません。


というのも、現場で働く理美容師の多くは中途採用で、すでに切るスキルを持っている方です。それどころか、過去に実績のある方も1000円カットに所属しています。「業界でも名の知れた美容師が所属している」といった話を聞くこともありますし、上手な方の所属する店舗が有名店になる例もあるそうです。


とはいえ1000円カットでは「指名」や「予約」ができないこともあり、誰が担当するのかは運次第。そのためカットのクオリティは、「担当する理美容師によりけり」といったところです。


そもそも、なぜそれほど腕のいい理美容師が1000円カットに所属しているのでしょうか? ビジネスパーソンなら「腕があるなら、高単価でやればいいじゃないか」と考えるところですが、その理由は「雇用条件」にあります。


■背景に「美容業界の雇用条件」


一般の方々にはピンとこないかもしれませんが、彼らはライフスタイルに応じた雇用条件に納得して働いています。


手厚い雇用条件は大企業の強みですが、そもそも理美容業界にとっては稀な例です。


というのも、理美容業界は小規模経営が大半を占めるため、「雇用条件が改善されない」という問題が長年にわたって常態化しています。


例えば皆さんも、「美容室が夜遅くまで煌々と照らされている」といった現場を見たことがあると思います。営業後は若手が練習していることがほとんどですが、この若手理美容師たち(アシスタント)は一人前になるまでの数年間、低賃金を余儀なくされます。そのため、「彼らの手取りを少しでも増やすために」という名目で、社会保険の加入をしない会社が少なくないのです。


そして、アシスタントの練習時間に指導をするのは先輩・上司です。この営業後の両者に対して「残業手当」をあてている理美容室は、ほとんどありません。


大きく展開する理美容室は厚生労働省から指摘を受けているため、適正な対処をしています。ですが小規模の理美容室では、『営業時間外の練習は「自主練」であって「残業」ではない』という名目でグレーゾーンを貫き、今も見過ごされています。


「朝から晩まで働いて、営業後は後輩の指導」というスタイルで、理美容業界は連綿と技術を継承してきました。それによって現在の地位があるのも事実ですが、それは働く側に寄り添った業務内容ではありません。


これ以外にも、理美容業界には他業種からは考えつかないような「しがらみ」が多くあります。こうした旧来的な環境で働き続けることをストレスに感じる理美容師は、腕を磨いた場を離れ、より良い労働環境を求めて転職しているのです。大手1000円カットの中には雇用条件で優れた企業も多く、転職先の選択肢のひとつになっています。


写真=iStock.com/fortton
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/fortton

■1000円カットの技術を見分ける方法


では「担当によりけり」な理美容師の腕は、どこで判断すればいいのでしょうか?


多くの1000円カットでは「10分で仕上げる」というのがルール。当然、どんな理美容師でも時間をかけたほうが上手にカットできるため、「早く仕上げる」ことは技量が反映されやすくなります。


プロから見た質の違いとしてあるのは「刈り上げのグラデーション」ではないかと考えます。


1000円カットで最も多いオーダーは、「刈り上げがベースのショートカット」かと思います。1000円カットでは、この「刈り上げ」を電動バリカンですばやく仕上げます。


■電動バリカンでも「グラデーション」に差がつく


通常「刈り上げ」は、一番短く切った襟足から上に向かってなめらかに長くなり、キレイにつながる角度で切ります。その際の見た目も、濃淡が段々と濃く見えることが美しいとされます。つまり美しい刈り上げは、シルエットと見た目がグラデーションしている状態です。


ですが、皆さんの頭は想像以上に凸凹している上、生えグセなど個人差もさまざまです。


電動バリカンで同じミリ数に揃えると、例えば凹んでいる部分は濃くなるので、濃淡がなじむように調節しています。


これをお客さまそれぞれに対応しつつ、スピード感を重視するとなると、グラデーションは簡単ではなくなります。


イラスト=操作イトウ

とはいえ、さすがに「刈り上げがガタガタ」ということは少ないはずです。


僕が1000円カットの店に行った際にも、「刈り上げは何ミリが好み?」といった写真付きの案内がありました。このようにミリ数を決めれば、一定のクオリティを担保できます。


また、後頭部をご自身で判別するのは難しいかもしれません。そこで一つ、鏡越しに見た時でも判別できる部分があります。


それは「正面から見た左右の高さが一致しているか」です。刈り上げやツーブロックをする際、長さの関係で刈り上げから刈り上げではなくなる「点」ができます。理美容師も常に気を付けている基本のポイントですが、この点はカットするごとにズレやすいため、判別する一つの指標にするとよいでしょう。


イラスト=操作イトウ

■こんな注文の仕方は美容師を困らせる…


忙しくお客さまを切り続ける1000円カット。仮に「絵に描いたような失敗」をされてしまった場合、それは理美容師の技量だけではなく、あなたのオーダーの仕方にも原因があるかもしれません。


そこで、「こんな注文の仕方は、1000円カット理美容師を困らせる」3つの例をご紹介します。


①こだわりの強いスタイルを注文する

1000円カットはオーソドックスなスタイルを得意としていますが、反対に独自性の強いスタイルには対応しにくいです。


担当する理美容師の技量にもよりますが、加えて1000円カットの現場では、「できることが限られている」という側面もあります。


「カラーやパーマをしない」など、通常の理美容室で用いる材料を用意しないことから、同様にワックスなどのスタイリング剤も“よく使うもの”だけを選定しているはずです。コテやアイロンの用意があるとも限りません。すると、理美容師からすれば「今、施術できる提案」も限定されるのです。


ですので、こだわりの強いスタイルを注文することは避けましょう。


写真=iStock.com/YakobchukOlena
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/YakobchukOlena
②「おまかせ」は、おまかせにはならない

反対に、こだわりがないから「おまかせ」という方も多いはずです。しかし、丸投げのオーダーも理美容師を困らせることになります。


なぜなら「おまかせ」は、完全に「おまかせ」ではないことの方が多いからです。


例えば「あなたに絶対似合うから、モヒカンにしますね」と言ったら、「NO!」となるはずです。理美容師からすると、「おまかせ」されたとしても、そのお客さまの許容範囲を探る必要があるのです。


そして当然、オーダーが決まらないとカットは始められませんが、この時間も10分のうちに含まれています。つまり、注文の聞き取りが長引くほど、カットにあてる時間が削られていくのです。


ですので、丸投げの「おまかせ」ではなく、部分的なニュアンスに対して「おまかせ」するのがよいでしょう。「伸びた分を切ってほしい」といった言い方でもいいので、ある程度ヘアスタイルを提示した上で「おまかせ」するほうが、お互いにとってスムーズに進みます。


③「いつもの」は通用しない

同じ店舗に何度も来店しているからといって、「いつもの」というオーダーは避けましょう。


通常の理美容室とは比べ物にならない数のお客さまを応対するのが、1000円カット。すべてのお客さまのことを覚えるのは難しく、施術内容をカルテに書き記すこともありません。そのため、来店が2回目以降でも場当たり的な対応になります。


仮に、理美容師側から「いつものですか?」と聞かれた際には認識していますが、同じ内容が同僚の理美容師に共有されている訳でもありません。


ですから、あらかじめ伝わりやすいオーダーを意識すると良いでしょう。


■美容師が勧める「効果的な利用法」とは


せっかく便利な1000円カットですから、おすすめの利用法についても触れておきましょう。


筆者のおすすめは、「刈り上げだけ」やってもらうことです。多くのビジネスパーソンにとって「髪が伸びたな」と感じやすいのは、耳周りと襟足です。ここは伸びると不潔に見えやすい部分。ですから仕事に追われて理美容室に行く暇がなくても、ここだけ整えば清潔感を保つことができます。


同様に、「前髪だけ」のカットも有効です。


特に女性にとっては、「1000円カットには入りにくい」と感じる方も多いでしょうが、駅近や駅ナカに構えているため、利用すれば手軽にストレス軽減できます。コテやアイロンで巻き直してもらうことはできないかもしれませんが、これらのポイント使いは現場の理美容師にとっても「10分の時間配分」が変わるので、丁寧な対応が可能になります。


このようにして、普段はこだわりの理美容室に通う方も、足を運べばQOLが高まるかもしれません。


メリット・デメリットを理解した上で、上手に利用できるといいですね。


----------
操作イトウ(そうさいとう)
美容師
東京・二子玉川と自由が丘を拠点にする30代美容師。「ヘアスタイルはロジックで美しく、カッコよくなる」「ステキな美容師さんに出会ってほしい」をメインテーマにしたブログをnoteにて執筆している。
----------


(美容師 操作イトウ)

プレジデント社

「カット」をもっと詳しく

「カット」のニュース

「カット」のニュース

トピックス

x
BIGLOBE
トップへ