製薬企業、アメリカ投資急ぐ…生産拠点拡大でトランプ関税の影響抑える
2025年4月27日(日)11時39分 読売新聞
日本を含む世界の製薬企業が米国への投資を拡大している。米国は世界の医薬品売上高の4割強を占める最大の市場だが、トランプ米政権は輸入医薬品に関税を課すことを検討している。各社は影響を最小限に抑えるため、米国での生産拠点を増やすなどの対応を急いでいる。(中山知香)
発動も視野
富士フイルムホールディングスは22日、米製薬大手リジェネロン・ファーマシューティカルズのバイオ医薬品を受託生産する契約を結んだと発表した。総額30億ドル(約4300億円)超で、公開されている米国での受託生産契約で最大規模という。今後稼働する米ノースカロライナ州の拠点で抗体医薬品を生産する。
富士フイルムは2011年にバイオ医薬品の開発・製造受託事業に参入。米国で約40億ドル(約5700億円)の設備投資を行い、今回ノースカロライナで稼働するのが五つ目の生産拠点となる。米国の生産拡大などで、30年度に同事業の売上高を現在の3倍超の7000億円に高める計画だ。
トランプ政権が5日に発動した「相互関税」の対象から、医薬品は除外されているが、関税の発動も視野に、医薬品の輸入状況に関する調査が始まっている。日本製薬工業協会の上野裕明会長(田辺三菱製薬代表取締役)は、「日本から米国への輸出などが影響を受け、製薬企業の収益を圧迫する」と危機感を示す。
欧米勢も
欧米勢も、米国での投資拡大表明が相次いでいる。
スイス製薬大手のロシュは今月、今後5年間で米国に500億ドル(約7兆2000億円)を投資すると発表した。ノバルティスも5年間で230億ドル(約3兆3000億円)を投じ、米国内で研究施設や製造拠点を設立する。
米製薬大手イーライリリーは米国内に新たな生産拠点を建設する。デイビッド・リックス最高経営責任者(CEO)は「米国製医薬品の輸出増につながり、米国に利益をもたらす」とコメントしている。
米国の医薬品市場は、今後も成長が予想され、各社が米国での投資拡大を検討する可能性がある。ただ、巨額の費用や時間が必要となる生産体制の見直しには慎重な意見もある。アステラス製薬の岡村直樹社長は25日の決算記者会見で、「簡単に製造を移管できるような業種ではない。サプライチェーン(供給網)をいじることは、現実的な解決策ではない」と語った。