福利厚生に「退職代行モームリ」Xで注目 モームリは歓迎、今後同様の企業「出てくる可能性」も
2025年5月2日(金)15時22分 J-CASTニュース
「当社では、従業員の就業環境のさらなる改善および心理的安全性の向上を目的として、『退職代行モームリ』を福利厚生の一環として導入する運びとなりました」
本来退職を阻止したいはずの企業が、退職の意思を従業員に代わり会社へ伝える「退職代行」サービスの利用費を負担すると発表し、Xで注目を集めた。「退職代行モームリ」を運営するアルバトロスによると、福利厚生として導入する例はほかに把握していないが、今後同様に取り入れる企業が出てくる可能性はあるという。企業側からの需要について話を聞いた。
「目から鱗の取り組み」Xでは称賛の声
注目を集めたのは、自動車整備士の転職支援事業を展開するDilecta(ディレクタ)代表取締役の「いけぺろ社長」こと池田陽花氏のX投稿だ。5月1日から、試用期間満了後の正社員、契約社員が退職する際、「退職代行モームリ」の費用を会社が全額負担するという。導入の背景として、「自動車業界の雇用改革を目指している会社として、『円満な退職』や『安心してキャリア選択ができる環境』の整備も重要であると考え」たためと説明した。
この発表にXでは、「目から鱗の取り組み」「いつでも辞められるという安心感があれば仕事上のストレスも軽減されそうですし」「プラスイメージに繋がる、素敵な施策だと思いました...!!」といった声が寄せられた。
アルバトロスの執行役員・大山真司さんは1日、ディレクタの「退職代行モームリ」導入について事前に相談を受けていたわけではなく、「弊社もXのポストで初めて知りました」とJ-CASTニュースの取材に明かした。その後、ディレクタ側と話をし、福利厚生として導入した事実確認が取れた。なお、契約などを交わしたわけではないという。
ディレクタの「退職代行モームリ」導入について大山さんは、「ありがたいと考えています」と明かす。
アルバトロスは退職代行業を行っているものの、大山さんは「退職代行が当たり前に使われる社会は異質」だと考えているという。退職代行を使う人の多くは、引き止めやハラスメントなどによって自身での退職が難しい状況にあるといい、アルバトロスは「将来的には退職代行が必要なくなる世の中を目指している」とした。ディレクタの今回の取り組みについて大山さんは、
「退職についての世間の考え方に一石を投じたのではないかと思います。離職率低下のための正しい方向での企業努力の必要性と、退職のハードルを下げ、人材の流動を活性化させることが、働きやすい社会になると考えています」
と考えを述べた。
企業からの意外な需要で新サービスも
ディレクタ以外にも、福利厚生として導入している企業はあるのだろうか。大山さんは、「他には把握しておりません」としつつも、「今後同様に制度として取り入れられる企業も出てくる可能性はございます」とみる。
実は、「退職代行モームリ」は「退職連絡時に本当の退職理由を確認できる点」で企業側にも需要があるのだという。自身で退職する場合は建前の退職理由を会社に告げることもあるが、モームリには「本当の理由」が明かされる。退職代行の連絡の際に「改善のため」として退職理由を尋ねる企業は、「全体の半数ほど」あると大山さんは明かす。
大山さんは、企業が本当の退職理由を把握しなければ「必要な改善行動には繋がらない」と考えているという。また、企業側からも「なぜ退職したのか?の本当の理由を聞きたい」との声が寄せられるといい、これを受けてアルバトロスは1月に離職率低下のためのサービス「MOMURI+」を開始した。「退職代行モームリ」で蓄積されたデータをもとに、労働者に向けては企業の退職代行利用実績を開示、企業に向けてはコンサルティングを行う。
大山さんは、「MOMURI+」のサービス開始以来、「講演会依頼は後を絶たず、コンサルティング依頼については現在契約に向けて打合せ中の段階」という状況だと伝える。具体的には、企業向け情報開示依頼が3社、コンサルティングは2社商談中、講演会や対談の依頼が18団体という。
労働者向け情報開示依頼も50件超あり、入社前の企業の確認のほか、退職前に「本当に退職するべきなのか」の確認のため利用する人もいたという。