MUFGがネット銀行設立へ…「金利のある世界」再来、若年層の囲い込み強化
2025年5月7日(水)5時0分 読売新聞
三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、インターネット専業の新銀行を設立する方針を固めた。2026年度中の設立を目指す。米IT大手グーグルと連携して利便性を高める。「金利のある世界」の再来で預金量の重要性が高まる中、若年層など個人顧客の獲得を強化する。
MUFGが100%出資する方向で調整しており、月内にも発表する。利便性が高い楽天銀行やソニー銀行など、存在感を高めつつある既存のネット銀に流れがちな若年層の取り込みを図る。メガバンクによる新たなネット銀の設立で、預金の獲得競争がさらに激化するとみられる。
新銀行は店舗を持たず、決済や預金などのサービスがスマートフォンで完結できる見通し。コストを低減できる分、預金金利を高くしたり、振込手数料などを引き下げたりすることが容易となり、顧客満足度を高めることにつなげる。
顧客データをAI(人工知能)が分析し、結婚や出産、住宅購入といった人生の節目ごとに最適な金融商品を提案するサービスを導入する方針だ。三菱UFJ銀行傘下で資産運用サービスを手がける「ウェルスナビ」と共同開発し、既存ネット銀との差別化を図る。
進学や就職などを機に口座を開設してもらい、金利優遇やAIによる提案でお得さと利便性を感じてもらい、長期の取引関係を維持できる姿を描く。預金争奪戦が激しくなる中、安定的に預けてもらえる顧客を早期に囲い込みたい考えだ。
グーグルと連携し、新銀行のシステムに同社のクラウド基盤を活用する。ネット上でデータの管理・運用が容易になり、速やかにアプリのデザインや機能に改善を加えられる。開発費用などとして数百億円を投資する方向だ。
ネット銀の新設を巡っては、21年に営業を始めたふくおかFG傘下の「みんなの銀行」などがある。ただ、若年層は預金額が少ないことなどから、赤字が続いている。MUFGの新銀行も同じ課題が想定され、高い知名度とブランド力を生かし、傘下の幅広いサービスとの連携をいかに進められるかが、中長期的な収益化の成否を分けそうだ。