世界の自動車メーカーが心配する中国のちゃぶ台返し

5月8日(水)12時0分 JBpress

上海モーターショーにトヨタが出展した「C-HR」の電気自動車(筆者撮影:以下同)

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(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 中国政府は2019年初めから、NEV(新エネルギー車)規制を本格導入している。一定数以上の販売台数がある大手や中堅の自動車メーカーに対して、EVやプラグインハイブリッド車など電動車の販売台数を個々に義務化するものだ。

 こうした法規制を導入したのは、アメリカのカリフォルニア州が最初だ。同州の環境局が1990年から施行しているZEV(ゼロ・エミッション・ヴィークル)規制法である。現在、アメリカでは同州以外に9州がZEV規制を採用しているが、あくまでも州政府の独自判断によるものであり、中央政府(連邦政府)は直接関与していない。連邦環境局としては今後、全米規模でのZEV規制の在り方についてカリフォルニア州との協議を進めたい考えだ。

 その他、英国、フランス、インド、さらには日本を含めた各国政府から、ガソリン車・ディーゼル車の販売抑制と電動車の普及に関するロードマップが提案されている。だが、現時点ではまだ法律として明文化されていない。

 つまり、中国のNEV規制が、現時点で唯一の全国規模での電動車販売台数規制なのだ。

 NEV規制では、初年度となる2019年に全販売の10%が電動車となるよう自動車メーカーに義務付けた。そして来年2020年には12%と義務化台数を徐々に増やすとしている。そのため、メーカー各社はNEV規制を睨んで中国でのEV生産・販売を強化する動きが加速している。


「NEV法がいつまで続くのかは不明」

 こうした中で4月18〜25日に中国・上海で上海モーターショーが一般公開された。各メーカーのブースには最新のEVがズラリと並んだ。

 日系メーカーでは、トヨタが「C-HR」のEV、そしてホンダが「VE-1」を世界初公開した。また、日系メーカーの中で最もEV戦略に積極的な日産は、昨年(2018年)から小型セダンのシルフィEVを発売している。その販売動向について、東風日産の幹部に話を聞いたが「まだ、発売して間もない状況なので・・・」と明確な台数については明らかにしなかった。

 メーカー各社はNEV規制に対応するためにどのような戦略を立てているのだろうか。

 日系メーカーに限らず、欧米、また中国地場を含めた自動車メーカー各社からは、「NEV規制への対応は重要だが、NEV法がいつまで続くのかは不明だ」という本音が漏れる。

 背景にあるのは、中国の過去のEV政策の失敗だ。中国政府は2000年代後半から、公共交通や官公庁向けを主体としたEV普及政策『十城千両』を始めたが、計画数に未達の都市が続出するなどして、当初計画より早く政策を中止している。

 今回のNEV規制ついても「(過去の事例のように)中国では、どのような事態も起こり得る。そのためEVは、NEV規制で求められる必要な数をこなすことが当面の目標」(自動車メーカー幹部)という方針が主流だ。

 EVなどの電動車の販売補助金制度について今年初めに見直し案が出されているが、その実効性についても、上海モーターショー時点では「不明瞭」という声が多かった。


先行き不透明感は払拭できず

 NEV規制の先行きについて不透明感が強い中国だが、ここへきて自動車販売全体が足踏み状態に入った。

 2018年の全販売台数は2808万台となり、28年ぶりに前年比マイナスとなった。2019年1〜3月期も前期比マイナスである。

 米中貿易摩擦による景気悪化が主な理由とされているが、上海モーターショー開催時点では、「下期から市場は持ち直すのでは?」という希望的観測を口にする業界関係者もいた。だがその裏付けについて説明できる人とは出会えなかった。

 日本の約6倍、アメリカの約2倍の市場規模を誇る自動車大国、中国。NEV規制を含め、中国政府の今後の施策が世界の自動車産業界の行方を大きく左右する。上海モーターショーの現場で改めて中国の存在感と影響力を強く感じた。

筆者:桃田 健史

JBpress

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