【入山章栄×佐渡島庸平】未来のエンターテイメントのビジネスモデルを考える <第3回>

5月10日(火)11時0分 ダイヤモンドオンライン

『ぼくらの仮説が世界をつくる』(ダイヤモンド社)を上梓した株式会社コルクの代表取締役・佐渡島庸平氏と、『ビジネススクールでは学べない 世界最先端の経営学』を上梓した早稲田大学大学院経営管理研究科准教授・入山章栄氏が「エンターテイメント産業の未来」「クリエイティブのための組織のあり方」などについて語りあった。今回はその第3回をお届けする。


組織のダイバーシティを効果的に実現するには


入山 新日本プロレスとかも、いまおもしろいですよ。


佐渡島 新日本プロレスの木谷高明氏にも、僕、ビジネスの勉強したいですって言って、会いに行ってるんですよ。


入山 へえ〜、すごいですね。木谷さん、超おもしろいですよね。


佐渡島 超おもしろいです。


入山 ボクは自分が監訳したダイヤモンド社の『ブルー・オーシャン戦略』のなかで、「日本のブルー・オーシャン企業ベスト17」みたいなのを勝手に選ばせてもらったんですよ。そのときに、新日本プロレスは絶対ブルー・オーシャンだからっていってたんです。


佐渡島 プロレスのカードゲームみたいなものを、流行らせて産業つくっちゃったのは木谷さんの力、むっちゃ大きいですよね。


 実はいま、木谷さんに言われて、社員に心理テストを受けさせてるんです。社内のダイバーシティを、どうやって実現するのかというのを、「ストレングス・ファインダー」というものを使って試行しているんです。


入山 「ストレングス・ファインダー」って、どんなものなんですか?


佐渡島 「ストレングス・ファインダー」は、ギャロップ社が出してる心理学のテストです。人間の特徴を34に分けて、個人の特性を上位5つを出すというテスト。それを社員に実施すると、たとえば、うちだと「内省」とか「着想」とか「戦略性」とか、じっくり考えるのが好きな人間ばっかり集まっちゃってることがわかるんです。


 うちの商品をしっかり売っていける「活発性」や、組織力を高める「指令性」がある人間がいないんですよ。社員を採っていくときに、注意しなければいけないのかな、とは思うんですが。


 ただ、コンテンツをつくるのは、ある程度「内省」する力が重要だったりするんですよね、だから難しいんですが。今後は、コンテンツは順調に作っていけるから、それを売って行く人間を入れないとダメだなとかっていうふうにして、組織のダイバーシティを保とうと、考えているんです。


入山 おもしろいですね。組織を推進する多様性を実現するには、バラバラの人間を集めて1個の組織として多様性を持たせるパターンと、1人の人間に複数の能力が持てるように成長させるというパターンがありますよね。


 そういう意味では、内省的な力が強い人に、もっと営業的なことをできるようにさせるという発想と、クリエイティブな組織の中にバリバリの営業経験者を入れるという発想も両方あり得ますよね。


佐渡島 前者の「人を変える」という方向性でいくと、会社としてはよいのかもしれないけれど、個人としてみたらたまったもんじゃないってこともありますよね……。


入山 ハッピーじゃなくなりますからね。


佐渡島 そうなんですよ。上司の意向で、「こいつにはこれが足りないから」って力を伸ばそうとするのは気が引けたりして。やっぱり、足りないところを見るよりも、いいところを伸ばしていく仕組みのほうがいいなと思っているんです。誰のどこが強いかを理解して、チーム同士で補完できるような形にしたほうが、全員ハッピーになるなと思ってるんですよね。


入山 僕もそう思います。人間変わらないですからね、変えたくてもね。


佐渡島 そうなんですよね。


入山 とくに、佐渡島さんの会社なんて、やりたいことを追求する会社だから、みんな何かやりたくて入って来る。それをガラリと変えて、「地道に営業しろ」とか、「1日何軒回れ」とか言っても、浸透しないですよね。


佐渡島 はい、無理ですね。だから、むしろ「本当にやりたいこと」を見つけさせるのが、すごく重要だなと思っているんです。


 僕も、井上雄彦と安野モヨコの担当をしてきて、2人とも大好きな作家さんですが、人気作家の担当を続けているだけじゃダメだなと思ったんですよね。「自分でヒットつくらないとダメだ」みたいなことを、2〜3年目ぐらいから強く思ったんです。それがすごく、自分を変えたなと思っていて。


 コルクでは、注目度の高い作家しかいないんで、個々の社員がいきなりそういった作家を担当できるんですよね。でも、それを担当している限りではダメだと感じているんです。


入山 佐渡島さんはコルクで1人ずっと育ててる作家さんがいるんですよね?


佐渡島 はい、羽賀翔一さんですね。


 編集者の機能って何なのかっていうと、入稿とかそういうふうなことって、結構ささいなテクニックでしかなくて。著者と深くコミュニケーションを取るっていうことだと思うんですよね。だから、コミュニケーション能力が何よりも重要なんです。


 作品は、著者と作品を通じての会話でしかないんで。コミュニケーション能力が高い人間だったら、そこからもきっと、しっかり読み取れるようになってくる。新人の作品のなからコミュニケーション能力を生かして、コンテンツを掴み取れる社員になってほしいですね。


新しい遊びを生み出す


佐渡島 今後は、かなり仕事の量が減っていくと思ってるんですね。それで、減っていく中で、一番難しいのは、「遊びをつくり出すこと」なのではないかなと思っていて。ディズニーランドに行くとか、山へ行くとか、おいしいレストランに行くとか、誰かがつくり出した遊びは、みんなできるんだけれども。


入山 新しい遊びを生み出すということですね。


佐渡島 こんな遊びがあったのかっていうのを気づかせるって、超難しいなと。


 お笑いコンビ・キングコングの西野亮廣さんが、ハロウィンの次の日に、ハロウィンのゴミを片づける「ゴーストバスターズ」っていう遊びを開発したんですよね。渋谷に、朝、5時か6時に集まって、渋谷の街が動き出す前に、ハロウィンのゴミを全員で片づける。それが、「いいことをしてる」というテンションではなくて、「遊び」になっている。だから、大きいゴミを見つけると、「俺、いいゴミ見つけたぜ!」みたいに喜んでいる。さらにそれを、デザイナーズウィークで、いいゴミを展示するみたいなところまでセットでやってるから、ゴミを見つけるのが完全に遊びになってるんですよ。


入山 なるほどね、おもしろいですね。


佐渡島 これ、すごい発想力だなと思って。遊びだから、制限人数もうけたり、参加費もかかりますってことにできるんですよ。


 で、僕らは、作品をもとにたくさんの感情を生み出そうとしているじゃないですか。だから、たとえば、『宇宙兄弟』のグッズを、いまは発注しているんだけれども、料金を払った人しかデザインできないっていうコミュニティをつくることも、十分可能だと思っているんです。


 そして、そのコミュニティ管理するのが日常になると仕事になっちゃう。でも、そこには自由に出入りできるっていうふうにすると、遊びとして考えられる。遊びと仕事の境もそんなふうに考えています。


入山 たとえば、『キン肉マン』で、素人に超人のデザイン募集をしましたよね。


佐渡島 してましたね、昔。


入山 あと、佐渡島さんがいっていることは、ラジオのあり方が近いのかなと思いました。


佐渡島 はい、近いですね! だから、僕は結構、うちの会社にラジオの放送作家の有名な人とかが協力してもらうと機能するなと思ってるんですよ。


入山 なるほど。


佐渡島 ラジオっていうのは結構、一対一のコミュニケーションをすごく丁寧にやってきたメディアですよね。テレビとか雑誌は、多くの人が知ってるもの・興味があるものを教えますよっていう企画だけれど。一方、ラジオはちがう。みんなが興味持つようになるまで、アイデアを練ろうよっていう企画のたてかたですよね。


入山 けっこう理解されにくそうですけどね。


佐渡島 はい、理解されなくて。


入山 こういうの、経営学の世界では、「インスティテューショナル・アントレプレナー」っていうんです。佐渡島さんは、典型的な「インスティテューショナル・アントレプレナー」ですね。


 いままであった常識や制度、仕組みとかビジネスのあり方みたいなのを壊そうとしているんです。スティーブ・ジョブズがそうですけれど、常識であったものを全部壊すときっていうのは、周りのステークホルダーの人たちは、その発想が信じられないんですよね。


 だから、いかにそのステークホルダーを巻き込んで、説得していくかっていうのがすごく大事っていうのは、よくいわれてますね。




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