Amazon、店頭受取で10ドル還元 返品に手数料徴収も

2023年5月11日(木)16時0分 JBpress

 米アマゾン・ドット・コムは、ネット注文した商品を自宅への配送ではなく店頭で受け取る顧客に対し、10ドル(約1350円)を還元する。ロイター通信が5月8日に報じた。消費者需要が低迷する中、配送と返品にかかるコストを削減する狙いだという。


高騰する輸送費を削減

 アマゾンは数日前から有料プログラム「Prime(プライム)」の米国会員に対し案内の電子メールを送った。1回の注文が25ドル(約3400円)以上の場合、商品を店頭で受け取ると10ドルを支払うと伝えた。対象の店舗は、同社傘下のスーパー、米Whole Foods Market(ホールフーズ・マーケット)や、直営の食品スーパー「Amazon Fresh」、提携する米百貨店大手Kohl’s(コールズ)などだ。

 ニューヨーク州北部に拠点を置く物流コンサルタントのディーン・マシューバ氏もこの案内を受け取った顧客の1人だという。

 マシューバ氏は「店頭受け取りの利用が増えることで、高騰する輸送費を抑えることができ、アマゾンにとってコスト削減の大きなチャンスになる」と述べている。

 一方、返品の際は一部の顧客に対し1ドルを徴収するようになった。自宅近くにアマゾンの商品受取/返品拠点がある場合、宅配業者を利用して返品を行うとこの手数料がかかる。


EC需要一服で軌道修正

 アマゾンは顧客基盤を拡大するため、これまで何年にもわたり、無料の配送・返品サービスを利用するよう促してきた。だが、新型コロナ下のEC需要が一服すると成長が鈍化し、軌道修正を余儀なくされた。それ以来さまざまな施策を講じている。

 例えば米国ではPrimeの年会費を20ドル上げて139ドル(約1万9000円)にした。会員向け食料品宅配では、送料が無料になる最低注文金額を35ドルから150ドル(約2万円)に引き上げた。これに達しない場合は3.95〜9.95ドル(約530〜1350円)の送料を求める。

 アマゾンは2019年からPrime会員向けに「Amazon Day」と呼ぶ“ゆっくり配達”のオプションを設けている。ロイターによると最近同社はこれを積極的に利用するよう顧客に呼びかけている。これによって、顧客は複数回にわたって注文したさまざまな商品を特定の曜日にまとめて受け取ることになる。例えば、顧客が自分の「Amazon Day(アマゾン曜日)」を金曜日に設定すると、その2日前の水曜日までに注文した商品が金曜日に届く。

 米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、Amazon Dayでは1回の注文あたり最大1.50ドル(約200円)のポイントが付与される。


戦略分野に経営資源集中、米で即配拡大中

 現在アマゾンはコスト削減を徹底している状況だが、戦略分野には経営資源を集中させている。例えば即日配達の拡大を図っている。「セイムデーサイト(即日拠点)」と呼ぶ倉庫のネットワークを設け、各施設で約10万点の商品を常時置いている。これにより一部の商品を注文から数時間で配達できる体制を築いた。ただし、1回の注文が25ドル(約3400円)未満の場合は有料(2.99ドル、約400円)になる。

 物流費用の自社負担を抑えながらも、迅速配達を求める顧客には有料サービスを用意し、多様な要望に応えたい考えだ。カナダのサプライチェーン・物流コンサルティング会社、MWPVLインターナショナルによれば、アマゾンは19年にこの即日拠点を開設した。今では約45施設が稼働している。今後数年でその数を少なくとも150施設に増やす可能性があると、MWPVLインターナショナルは分析している。

 ロイターの別の記事によると、アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)は23年2月、「我々は会社全体でコスト削減を進めているが、配達スピードはその犠牲になることはない」と述べていた。

 アマゾンの広報担当者も、「我々は常にお客様に新しい水準の利便性と、最適な配達オプションを提供する方法を模索している。即日配達は当社の最新イノベーションの1つ」と述べ、このサービスを初めて体験する顧客が月に150万人以上いると説明した。

筆者:小久保 重信

JBpress

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