「猫がいないとネズミは遊ぶ」とは? 猫にまつわる英語イディオム (6)
2025年5月12日(月)15時41分 財経新聞
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さて、これはどんな場面で使われるのだろうか。
■意味
日本語でも「鬼の居ぬ間に洗濯」といった表現があるように、監督者の目が届かない隙に自由を謳歌することをユーモラスに表現したイディオムやことわざは、世界中の言語に存在する。
英語にもそのような言い回しがあり、なかでもとりわけ知られているのが 「When the cat’s away, the mice will play」 という表現だ。
子供向けの寓話にでも出てきそうな言い回しだが、日常生活のなかでしばしば見かける状況をうまく切り取った表現と言える。
「猫がいないとネズミは遊ぶ」という直訳のとおり、ふだんは誰かの目を気にしておとなしくしている人たちが、監督者がいなくなったとたんに羽を伸ばす、そんな光景をイメージさせる表現だ。
対象は子供に限らない。職場の部下だったり、生徒だったり、場合によってはもっと大きな集団にまで当てはまる。状況によって意味の幅が広がる使い勝手の良いイディオムと言えるだろう。
■由来とその派生形
一見、「トムとジェリー」のようなユーモラスなイメージを浮かべるこのことわざだが、そのルーツをたどると中世ラテン語の古諺にまでさかのぼる。
「Dum felis dormit, mus gaudet et exsilit eantro(猫が眠れば、ネズミは喜んで穴から飛び出す)」という言い回しが原型と考えられる。
英語には15世紀ごろに輸入されたようだ。たとえば、1599年作と考えられるシェイクスピアの『ヘンリー五世』にも類似の表現が登場している。
ところで、この「猫とネズミ」の組み合わせは、英語に限らず多くの国のことわざや言い回しに登場する。
たとえばスペイン語では「Cuando el gato no está los ratones hacen fiesta(猫がいないとネズミがパーティを開く)」、ドイツ語では「Wenn die Katze aus dem Haus ist, tanzen die Mäuse auf dem Tisch(ネズミがテーブルの上で踊る)」といった具合だ。
なぜこれほどまでに猫とネズミが好んで引き合いに出されるのかと言えば、両者の関係がわかりやすく、しかも世界中どこにでも存在するからだろう。その力関係がシンプルに可視化できる点も、この表現が広く受け入れられている理由の一つかもしれない。
ちなみに、日常会話ではこの表現の前半部分だけを用いることもよくある。「When the cat’s away...」と言うだけで、残りの意味は相手が察してくれるというわけだ。
例文
・As soon as the teacher left the room, the students started chatting and playing. When the cat’s away, the mice will play.
(先生が部屋を出たとたん、生徒たちはおしゃべりを始めて遊び出した。まさに「猫がいないとネズミが遊ぶ」状態だった。)