OPECプラスの増産で原油下落!? 逆オイルショックの可能性は?
2025年5月11日(日)22時10分 財経新聞
石油輸出国機構(OPEC)とロシアなどの非加盟原油国で構成されるOPECプラスが、増産をさらに加速させることで合意した。
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一部メンバー国の生産割当違反が是正されなければ、10月までに自主減産日量220万バレルも解除するとしている。
4月30日にもロイター通信の報道で、サウジアラビア当局者が「今後さらなる減産で原油市場を支える意向はなく、原油安が長期間続いても対応できる」と話したことで、市場に動揺を与えた。
4月の米トランプ大統領による相互関税発表で、WTI原油先物は1バレル=55.12まで下落したが、一時65ドルまで回復していた。
5月5日に追加増産の合意を受けて、再び56ドル付近まで下落している。
原油価格の低迷により世界経済に影響を与える、“逆オイルショック”はあるのだろうか?
●カギを握るサウジ!逆オイルショックは過去にも
サウジは、他のメディアでロイターの報道を否定したとも伝えられており、真相は分からない。
しかしサウジが、生産枠を守っていない一部の国に不満を募らせていることは確かで、OPECプラス全体の不協和音にも繋がっている。
原油価格が下落する逆オイルショックは過去にも例がある。
直近で先物価格がマイナスを記録したのは、2020年のコロナ禍。それ以前では、2014年には米国のシェール革命による増産での下落、1986年には2度のオイルショックの反動による大幅下落もあった。
●上昇圧力よりも下落リスク
上昇圧力が無くなったわけではない。
イエメンの親イラン武装組織フーシ派が重要な船舶の攻撃をやめることに合意したが、イスラエルへの攻撃は続けると見られ、イスラエルとパレスチナ自治区でのハマスとの戦闘もまだまだ予断を許さない状況は続く。
トランプ大統領は、イラン産原油を購入する国や個人に制裁を科す考えを表明しており、イランへの制裁強化となれば、原油価格の上昇要因でもある。
ロシアとウクライナの停戦が不調となることも、原油価格の上昇要因である。
OPECプラスの増産も、世界経済が良好ならば、影響は小さい。
しかし足元では、トランプ関税により、中国の景気悪化や、各国とも先行きの景気見通しは悲観的な見方が多く、原油は逆オイルショックまでいくかは分からないが、下落傾向が続くだろう。