貧困者をプログラマーに ザッカーバーグの同級生が広める支援の輪

5月13日(日)15時0分 Forbes JAPAN

徐諸凱(Jukay Hsu)(33)は、ジョンズ・ホプキンス大学が優秀な高校生向けに開講する「ナード・キャンプ」に、マーク・ザッカーバーグと一緒に参加し、彼とはハーバード大学でも同級生だった。だが徐は、大学を中退してフェイスブックを創業し億万長者となったザッカーバーグとは全く異なる道を歩んできた。

台湾出身の徐は、4歳のときに家族とニューヨーク市クイーンズ地区に移住。2006年に経済学の学位を取得後は軍に入隊した。歩兵隊将校として4年間過ごした経験は、彼を変えた。1年間はイラクでの任務に就き、小隊を率いて巡回や急襲を行ったり、イラク人起業家らと協力してティクリート近くの小さな町に無線局を作ったりした。「自分とかけ離れた経歴を持つ人々と会った。人材はどこにでも存在するが、機会はそうではない」と徐は語る。

ニューヨークの実家に戻った徐は、ある非営利活動のアイデアを思いつく。クイーンズで、才能はあるが恵まれない労働者を支援し、低賃金の仕事から高給なテック職への転職を支援するものだ。

徐の設立したC4Q(Coalition for Queens/クイーンズのための同盟)は、他のプログラミング講座と同様、アップルやアンドロイドのオペレーティングシステム(OS)向けアプリ構築法や、ウェブ開発に関する集中講座を提供している。だがゼネラル・アセンブリ(General Assembly)などの非営利プログラミング学校とは違い、寄付金を基盤とし、講座は無償だ。

プログラムに参加する条件は、18歳以上で年収が4万ドル(約440万円)以下であること。特に、公営住宅に住んでいる人や、学校で昼食の無償化や割引の措置を受けていたような金銭的に困窮した人たちを重点的に支援している。

大半のプログラミング学校では、講座はたった3カ月だが、C4Qのプログラムは10カ月間続く。また、講座の3分の1は履歴書の書き方やネットワーキング(人脈作り)、お礼のメッセージの書き方、チームワークやプロジェクトマネジメントなど、プログラミング以外のスキルに割かれている。

C4Qは、卒業後も受講者を支援している。徐は複数の会社に、講座の卒業生を雇用するよう強く求めてきた。また、徐はリンクトインに対して、大学の学位を採用要件から外し、C4Q卒業生のために6カ月の見習い期間を設けるよう説得。この見習い期間プログラムは、これまで何千人もの採用につながっている。

C4Qは2013年に設立以降、グーグルの起業家ベンチャー支援部門グーグル・フォー・アントレプレナーズ(Google for Entrepreneurs)やセールスフォースの慈善活動組織セールスフォース・ドット・オーグ(Salesforce.org)、ニューヨーク市の貧困撲滅組織であるロビンフッド財団などから寄付を集めてきた。今年のC4Qの予算は550万ドル(約6億円)で、10カ月の講座に144人が参加予定。うち半分は女性で、60%はアフリカ系・中南米系だ。

徐は昨年、寄付増額とプログラム拡大の試みとして、授業料無料制度から「18─85の就職債権制度」へと切り替えた。徐によると、プログラム受講生の入学前の平均年収は1万8000ドル(約200万円)だが、プログラム終了後の平均年収は8万5000ドル(約930万円)になる。

彼は2017年、社会活動投資会社のインヒアレント・グループ(Inherent Group)やリリー・オーチンクロス財団(Lily Auchincloss Foundation)から、C4Q受講生の授業料に充てられる75万ドル(約8200万円)の資金を就職債権への投資の形で集めた。受講生は年収6万ドル(約654万円)以上の仕事を見つけた場合のみ、債権所有者に給与の12%を3年間払う。徐によると、債権所有者は6.6%の年間利回りを見込める。

同制度は、ゼネラル・アセンブリのようなプログラミング学校が提供する「収入共有契約(ISA)」と似ているが、その目的は利益を得ることではなく、受講者数を増やし、クイーンズ地区以外にもプログラムを拡大することだ。

C4Qは今年、新たな授業料モデルも実験中だ。食材配送サービスを提供するブルー・エプロンと、オフィスサービスを提供するスタートアップのマネジド・バイ・キュー(Managed by Q)の2社は、C4Qに料金を支払い、テック職向け候補者の特定と訓練を委託している。選ばれた2人にはC4Qを卒業後、年収8万5000ドル以上の仕事が与えられることが約束されている。

そのうちの一人は、4歳の息子を持つ29歳のシングルマザーだ。ニュージャージー州にあるブルー・エプロンのキッチンで、食材準備担当者として時給13.25ドル(約1450円)で働いている。彼女は高校卒業後、同州キーン大学エリザベス校で3年半の間、映画と英文学を専攻したが、金銭的な理由で卒業できなかった。

彼女は現在、週30時間ブルー・エプロンで働き、月〜水曜日の午後7〜10時、土日の午前10時〜午後6時に息子の世話を妹に任せ、C4Qの授業に出席してフロントエンドやバックエンドのウェブアプリ構築法を学んでいる。ブルー・エプロンはプログラム終了後、彼女にマンハッタン本社で年収8万5000ドルの開発者の職を保証している。

「全てが信じられないような感じ」と彼女は語る。「大変なのは確かだけど、とても楽しい。新たなことを学んでいるし、これで自分の人生が変わり、息子のためにずっと夢見ていた道が開ける」

Forbes JAPAN

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