「第50回フローレンス・ナイチンゲール記章」受章者発表

2025年5月13日(火)10時17分 PR TIMES

〜日本からは、3名の看護師が受章〜

赤十字国際委員会(スイス・ジュネーブ)のフローレンス・ナイチンゲール記章選考委員会より、5月12日に「第50回フローレンス・ナイチンゲール記章」の受章者の発表がありました。

今回は、17の国と地域から35名が受章し、日本からは、春山 典子(はるやま つねこ)さん、紙屋 克子(かみや かつこ)さん、河野 順子(こうの じゅんこ)さんの計3名の方が受章されました。

春山さんは航空機墜落事故現場での活動やその教訓の普及活動における功績が認められました。また、紙屋さんは意識障害患者に対する看護実践やそこで得られた知識・技術の普及活動における功績が、河野さんは地域が連携して退院後の患者を支える体制整備に向けた功績が認められました。

なお、1920年の第1回授与からの受章者総数は1615名となり、そのうち、日本からの受章者は118名と、世界最多となっています。

授与式は年内に執り行われる予定であり、例年、日本赤十字社名誉総裁である皇后陛下より記章が授与されています。
日程につきましては、詳細が決まりましたら改めてお知らせいたします。

[表1: https://prtimes.jp/data/corp/33257/table/206_1_b8eeb6082167568bdb1153f951fcbc62.jpg ]
[画像1: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/33257/206/33257-206-556c2832ce314a9e5ffd553c1f1cd33b-2108x2634.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]春山 典子(はるやま つねこ)
春山 典子(はるやま つねこ)

■朝鮮生まれ(81歳)
■群馬県在住
■退職時の職位:日本赤十字社群馬県支部 参事
■主な功績:
1985年8月12日に群馬県御巣鷹山で発生した航空機墜落事故において、春山氏は生存者2名への救命措置に加え、遺体の捜索・検案活動では、看護の責任者として延べ1000名にのぼる看護師の先頭に立って1か月半の活動を指揮・統率し、看護師の士気を保ち、鼓舞し支え続けた。
現場での看護師の活動は、激しく損壊した遺体の検視・縫合介助、洗浄、身元確認や遺体引渡し時の家族への対応であり、通常では看護師が携わることのない活動にまで及んだ。日赤の災害時の救助は、国と締結した協定により、医療、助産、死体の処理とされ、身元確認や遺体の家族引渡しは法令上の定めがないことから、日頃の訓練を遥かに超えた過酷な活動となった。
氏ら看護師は、遺体を少しでも生前に近い状態で家族に引渡せるように黙々と遺体の検案と整復を行った。後に「整体」のケアと呼ばれるこの活動は、故人の体形を家族から聞き取り、その場にある資材を利用して、破損のひどい遺体を生前の姿に似せて整復し家族に引渡す方法である。遺体を整えることで、故人への敬意を表するとともに、安らかな死を願う家族へのグリーフケアとして、手探りで生み出され実践された。
現場は深い悲しみが渦巻く中にあったが、氏は、看護師が遺された家族を支えられるよう活動体制を整えた。看護師は遺体に対面する家族の心痛に思いを馳せ、家族の傍に寄り添い、話を傾聴した。この活動は、想像を絶する環境下にあっても、死者とその家族の尊厳を護るために実践された看護であった。
氏ら看護師の多くは、活動終了後数年経っても当時の光景や感情が蘇り、体験を語ることに困難を感じていた。氏も夏になると心身が不調となったが、「亡くなられた方の『忘れないで』というメッセージ」と受け止め、事故を風化させないため、今も講演、報道機関への出演、取材協力など様々な活動を行い、事故の教訓やケアの根底に流れる人道の原則が引継がれるよう広く一般市民に伝え続けている。

[表2: https://prtimes.jp/data/corp/33257/table/206_2_e5a87cbeaf6d31f5b8bfde1b2be77f1a.jpg ]
[画像2: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/33257/206/33257-206-106a9ca4ee6efc39b5bed7eb166350bb-2160x2700.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]紙屋 克子(かみや かつこ)
紙屋 克子(かみや かつこ)

■北海道生まれ(78歳)
■北海道在住
■現  職:日本ヒューマン・ナーシング研究学会 理事長
■主な功績:
紙屋氏は遷延性意識障害患者(いわゆる植物状態の患者)の回復を促進するため、患者の意識並びに身体機能の改善・回復を目的に、患者の身体・認知面に応じて目標を設定し、評価しながら支援する看護方法を確立した看護実践の第一人者である。
また、その過程において、自ら開発した体位変換等に関する技術は、解剖学や生理学、病態学、運動力学、発達理論などに基づいた生活支援技術であるが、臨床現場のみならず、身体的な機能が低下している者に対しても広く活用されている。
氏は意識障害患者を「植物状態の患者」としてではなく、「脳の機能が障害され、全介助を必要とする患者」であると看護的に捉え直した。意識障害患者は表現する方法が奪われている患者である、との認識に立ち、患者の日常生活習慣を健康時と同じように支え直す看護により、意志の表出、ADLの拡大、そして行動の自立等が可能となり、意識の回復も促進されることを臨床的に実証した。意識障害患者は、看護の介入なしには生活行動を再獲得することは不可能であり、この看護の実践のためには、看護師による長期にわたる根気強い働きかけと厳密な計画・観察が必要である。氏は看護師があきらめなければ患者が持つ力を引き出すことが可能だという強い信念に基づき、多くの意識障害患者やその家族との出会いの中から理論を実践し積み上げてきた。氏の「あきらめない看護」は、常に患者のそばにあり、意思の表出が困難な患者の尊厳を守り、社会へ包摂させる最後の砦である。さらに、家族による毎日の援助が欠かせない患者については、看護師が家族にその看護技術を指導することにより家族の負担を軽減させるとともに、患者を取り巻く問題にも寄り添う機会となり、家族を支える一助となっている。
氏は実践者として自らの五感で患者の反応をとらえ、その人として「生き直していく瞬間」の実現に向け、今も挑戦を続けている。

[表3: https://prtimes.jp/data/corp/33257/table/206_3_178f9603f0321106fba2f1f0d532d947.jpg ]
[画像3: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/33257/206/33257-206-43ade8955cbb27f671eae4d90bd441fd-640x800.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]河野 順子(こうの じゅんこ) 
河野 順子(こうの じゅんこ)  

■栃木県生まれ(81歳)
■栃木県在住
■現  職:一般社団法人栃木県訪問看護ステーション協議会 会長
■主な功績:
河野氏は、病院を退院した後も住み慣れた地域で必要な医療が受けられ、最期まで尊厳のある一人の人間として自分らしく生活できるように、現在の地域包括ケアにつながる「退院計画」のための多職種・地域連携、在宅医療推進に向けた地域の受入れ体制の構築に取り組んだ。
2000年から導入される介護保険制度を見据え、退院後の患者・家族の生活やライフサイクルを想定した看護ケアの計画立案・実施・評価という患者個別の側面と退院後の療養を担う保健・医療・福祉といった地域資源の活用による近隣社会のネットワーク化という側面を推進するため、氏は大田原赤十字病院(現:那須赤十字病院)と国際医療福祉大学の共同研究事業により、地方にある中核都市の特徴を踏まえた「退院計画」の構築に率先して取り組み、退院後の患者の「医療の質」を確保するための多職種連携・地域連携を強化した。
氏は同院を退院した後の生活や住環境などに着目し患者の援助のために立案する「退院計画」を看護師が主導しながら多職種によるチームアプローチで作成し、その効率的・継続的運用に努めた。さらに患者を受け入れる地域の連携体制づくりのため、地域の保健医療福祉の専門職との連携を強化するとともに、地域住民が参加する学習会・講習会を開催して、在宅療養のための知識・技術の普及に努めた。退院後の患者がその人らしい生活を取り戻せるようにと、氏が強い信念を持って取り組んだことにより、地域関係者の間に「地域が一体となり患者のための支援体制を構築する」という信頼感・連帯感の意識が高まり、退院した患者が社会の中で一人の人間として普通に生活できるWell-being(ウェルビーイング)の実現にもつながった。
氏が実践した退院計画への取り組みは、環境が類似する多くの地域において有益となるものであり、各地での講演等を通じて、全国へのさらなる普及や後進の育成に努めた。

[表4: https://prtimes.jp/data/corp/33257/table/206_4_7003b271ca7a23011f49cc64c666c946.jpg ]
[画像4: https://prcdn.freetls.fastly.net/release_image/33257/206/33257-206-f592bcf816cda0a4330afff0a242a9d7-593x680.jpg?width=536&quality=85%2C75&format=jpeg&auto=webp&fit=bounds&bg-color=fff ]フローレンス・ナイチンゲール記章
同記章は、紛争下において敵味方の区別なく負傷者を保護する役割を担う赤十字が、1907年および1912年の赤十字国際会議において、顕著な功績のある世界各国の看護師を顕彰し、授与することを決定したものです。
フローレンス・ナイチンゲール氏の生誕100周年を記念して、1920(大正9)年に第1回の授与が行われ、それ以来、隔年でフローレンス・ナイチンゲール氏の生誕の日にあたる5月12日に赤十字国際委員会(ICRC)から受章者が発表されています。
また、同記章は、鍍銀製アーモンド型メダルで、表面は燭(ともしび)を手にしたフローレンス・ナイチンゲール氏の像と「1820〜1910年フローレンス・ナイチンゲール氏記念」の文字があり、裏面には受章者名と、ラテン語で「博愛の功徳を顕揚し、これを永遠に世界に伝える」と刻まれています。

【フローレンス・ナイチンゲール記章の受章資格】
現在、医療機関や看護教育施設等の業務に従事しているか、または過去に従事した経験のある保健師、助産師、看護師、もしくは篤志看護補助者のうち、以下の条件のいずれかを満たしている者であることが受章資格とされています。
(1)平時もしくは戦時において、次のような事項に関して顕著な働きをした者。
 ア 傷病者や障がい者、または紛争や災害による犠牲者に対して、果敢に献身的な看護活動に従事した者。
 イ 公衆衛生や看護教育の分野で、模範となるような活動に従事した者。またはこれらの分野で創造的かつ先駆的な精神のもとに活動した者。
(2)国内災害救護、国際活動等の事業において、果敢かつ献身的に活動し、推薦に値すると判断される者。
(3)献血思想の普及啓発、老人看護及び障がい者への理解促進を含む保健衛生活動、看護教育活動、救急法等講習普及事業等においても、献身的に永年その業務に携わり、その実績から高い評価を得られると判断される者。

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