気合と根性で乗り切れる時代は終わった…"日本一の営業マン"が電話1件に費やした時間に徹底してこだわる理由

2024年5月14日(火)10時15分 プレジデント社

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Ivan-balvan

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どうすれば営業で効率よく成果を出せるのか。営業支援を行う営業ハック代表の笹田裕嗣氏は「自分が1件のアポにどのくらい時間を費やしたか、把握していない人は多い。時間あたりの成果を最大化する意識を常に持っておく必要がある」という——。

※本稿は、笹田裕嗣『営業がしんどい 売れなくて悩む営業が今日からできること』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。


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■人間は1日に3万5000回の決断を繰り返している


人の脳は常に大量の情報・データをもとに判断をくり返しています。ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン氏の研究では、1日に3万5000回の決断をしているという結果もあります。


3万5000回すべての判断を、自分の意思で決断できるでしょうか? 不可能ですよね。人間は、経験則や先入観によって自分なりの解を導き出す意思決定の仕組みを持っています。つまり、3万5000回の決断すべてが吟味した答えというわけではなく、自分の直感や感覚で決められたものが多数混ざっているということです。


営業活動も決断の連続です。営業には必ず相手が存在し、そして電話や対面・オンラインでの商談時のコミュニケーションでは、即座に返答・回答しなければいけない場面があります。


だからこそ、営業で成果を出すためには、圧倒的に「習慣」が大事だと私は考えています。今自分がどんな習慣を持っているか、回答やコミュニケーションの癖を持っているかが成果に大きく影響します。


■営業の成果は一朝一夕で出るものではない


営業の成果は一朝一夕では変わりません。私が経験してきた人材営業では、初めてのテレアポから1年後に初受注、2年後に取引開始というケースもありました。現在行なっている営業代行では、「10年前からブログを見ていました」とお問い合わせをいただき、今の取引がスタートしたというケースもあります。今日の頑張りが未来の受注・成果につながる、つまり日々どれだけ良質な積み重ねができるかで、未来の成果が決まります。


時間への意識を最大限高めるには良質なルーティンを持つことが正義である。この意識を持った上で、今自分が何をすべきかを考えることが大事ということです。


■朝から晩までテレアポをしていられた時代は終わった


昔の営業はもっと考えることがシンプルでした。


売れれば正義。売れなければ悪。


私が中途で入った会社では、新卒入社の社員が夜の10時までテレアポをしているのは決して珍しい光景ではありませんでした。退勤時間に「お先に失礼します」と声をかけると「お疲れ様でした!」と元気な声が帰ってきて、その10秒後には「お世話になっております」「夜分遅くに失礼いたします」という声が飛び交うのです。さらに朝8時前に出勤すると「おはようございます」ではなくテレアポの声が聞こえてきます。


写真=iStock.com/BernardaSv
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なぜそんな時間からテレアポの声が聞こえるのか。今週、今月のアポイント目標に届いていないからです。目標を達成できていなければとにかくやるしかないという時代があった(会社によっては今なお存在する)のです。


しかし、働き方改革や法改正が進み、営業の働き方も変わりました。会社としてこういった働き方や管理ができなくなっています。


成果が出るまでいくらでも時間をかけられた時代とは違い、今は限られた時間の中で成果を出さなければいけません。改めて現代の営業は時間への意識が強く求められるということです。


■アポ獲得にどれだけ時間を費やしたか把握しているか


この時間への意識を最近では「タイパ」と表現します。タイパ=タイムパフォーマンスです。1つの成果に対して、どれだけの時間を費やしたのかという発想です。


しかし、自分がアポイント獲得や準備、商談にどれくらいの時間を費やしているのかを把握していない営業がほとんどです。「もっと時間を効率的に使いたい」「もっと時間を有効活用したい」とほとんどのビジネスパーソンはこのような考えを持ちながら、日々の時間の使い方に無頓着ということが少なくありません。


私が経営する営業ハックでは、「時間生産性」という言葉を使い、時間意識を持って営業をしてもらっています。


例えば、メンバーは、コールドリストと呼ばれる接点がまだない相手へのアプローチでは、まずは4時間で1アポという目標を追いかけています。


また誰かに時間をもらうにあたっても、この意識は常に話しています。例えば、同僚にテレアポのロープレをお願いするということは、その間営業はできなくなります。4時間で1アポを目指しているにもかかわらず、仮にロープレで1時間奪われたとしたら、その分どこかで3時間に1件、2.5時間に1件のアポイントを目指さなければいけなくなります。相手の時間を使っているという意識を持たなければ、時間という有限な資産を食い散らかしてしまうということです。


■メリハリのないリモートワークは時間が溶けがち


今までの日本は、とにかく成果を出すために働き続けること、残業が多いことが正義とされがちでしたが、今は少ない時間で大きな成果を出す意識が不可欠です。


「時は金なり」と言いますが本当にその通りで、「時間を掛ける=コストが掛かる」という意識を常に持つべきです。営業ハックはフルリモートの会社で、全員が在宅勤務です。営業=出社して競い合うという前提を外した会社ですが、リモートワークは出社というメリハリがない分、時間への意識が強く求められる働き方です。


よくスタートアップでは資金調達したお金があっという間になくなってしまうことを「溶ける」と表現しますが、リモートワーカーは「時間が溶ける」ということが起こりがちです。「気づいたらもうこんな時間」「あれ、もう午前中終わり?」という体験はまさに時間が溶けた最たる例です。


■掛けた分の時間=コストを回収するのが営業の役割


営業をしていると前々から入っていたアポイント、定例で入っている会議、部門で決まっているテレアポコアタイムなど、自分だけで決めた時間よりも周囲との兼ね合いや元々存在していたルールによって、予定が決まるということは少なくありません。


しかし、その決定事項・時間の使い方に「〜〜を達成するために」「〜〜を実現するために」という目的・意図がなければ、本当にただ時間を溶かしてしまうだけになります。


「ルールだから」「決定事項だから」で自分の時間の使い方を決めていては、時間というコストの浪費です。あくまで営業は時間・コストを投資しなければいけません。


投資は回収しなければいけません。掛けた分の時間・コストを成果に変えることが、営業に求められている役割です。


営業は社長以外に会社にお金=キャッシュをもたらすことができる唯一の職種です。コストセンターではなく、プロフィットセンターであり、もっとシンプルに表現すると売上センターです。コスト意識=コストを減らす意識ももちろん重要ですが、掛けた時間で成果に還元する意識、最大化する意識が営業には不可欠です。


■時間の有限性は気合と根性では乗り切れない


営業活動とは時間の投資だという意識を持つべきです。


あなたはその1件のアポイントをいただくために、何時間費やしましたか? アポ率1%の営業は、100件電話をかけて初めて1件の商談を確保できます。100件の電話を5時間かけて行なったのであれば、1件の商談を得るのに掛けた時間は5時間です。そのリストを準備するために使った時間やコストはいくらでしょう?


商談を1件実施するのに、1時間準備を行ない、1時間御礼のメールや提案書、見積書を作ったりしていれば、費やす時間はどんどん増えていきます。


当然、失注するリスクもあります。営業は多くの失敗やうまくいかなかったことの上に成約・成果があります。成約率10%であれば、10商談を費やして9つの失敗と1つの受注があるということです。


自分の時間生産性を考えなければ、あっという間に成果を得られないまま1週間が終わってしまいます。気合いと根性では乗り切れない、乗り越えられない世界が営業には必ずあります。それは1日24時間、1週間は7日間、1年は365日しかないからです。


限られた時間で最大の成果を出す。当たり前のことですが、時間意識とは「時間を無駄にしない意識」です。時間を無駄にしないとは、成果につながらない時間を作らないということです。


■自分の感情に流されてアクションを決めてはならない


営業の仕事は、コミュニケーションを取る仕事です。そして、求められるシンプルな成果は、売上を作ることです。


つまり、日々コミュニケーションを積み重ねて売上に変える、これが営業という仕事の本質です。では今日の自分のコミュニケーションは売上につながるやり取りだったでしょうか?


・アポイントがもらえるからニーズはないけど会いに行く
・仲が良いから、呼ばれたからとりあえず訪問する
・架電数を積まなきゃいけないから、不通の番号だけど架電だけする
・オンラインや電話で要件を済ませられるのに、社外に出たいからと訪問アポにする
・出社した方が効率が良いのに、リモートで乗り切ろうとする


これらはすべて、成果から最短ルートを歩むためのアクションではなく、自分の感情を優先したアクションです。営業・ビジネスにおいて、売上・利益はすべて数字です。そこには必ず理屈・ロジックを立てることができます。理屈を考えない、根拠がない判断は、感情に流された意思決定であり、成果を出すための行動ではありません。


営業はこういった「感情判断」が起こりやすい仕事であるといえます。


■「コミュニケーションはコスト」の意識を持つ


・泣いてお願いされたから、値引きに応じた
・友人だからと無理な納期を承諾してしまった
・いつもお世話になっているからと特別に無料にしてあげた



笹田裕嗣『営業がしんどい 売れなくて悩む営業が今日からできること』(日本実業出版社)

こういう営業は「良い人」と言われると思います。しかし、営業をビジネス的な観点で見れば、その場その時は良くても、利益を削り、未来の自分やほかの誰かが負担を強いられる行為であるということを忘れてはいけません。


営業はコミュニケーションを重ねることで、会社に売上・利益、キャッシュをもたらさなければいけません。最小のコストで最大の利益を出すことが理想です。つまり、できるだけ少ない工数・コミュニケーションで成果を出すことができれば、営業として評価されるべき人材ということです。


さらに、コミュニケーションが少ないということは、相手からいただく時間も最小にすることができます。自分がたくさん話す、会話をする、やり取りをするということは、その分誰かの時間を奪っているという意識を持たなければいけないのです。


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笹田 裕嗣(ささだ・ひろし)
営業ハック代表取締役社長
20歳の頃から営業のキャリアをスタート。新卒で大手人材会社に入社し、入社半年で営業成績トップになる。メガベンチャーに転職した後、営業フリーランスとして独立。営業代行事業・コンサルティング事業も行う。2018年、営業ハックを創立。2022年には日本最大級の営業の大会第6回「S1グランプリ」にて最終決戦で満票を獲得し優勝者となる。
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(営業ハック代表取締役社長 笹田 裕嗣)

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