帝国ホテル社長が白シャツしか着ない理由

5月15日(火)11時15分 プレジデント社

帝国ホテル社長 定保英弥氏

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世界各国の要人をはじめとして、多くの熱烈なファンを持つ帝国ホテル。戦後最年少の51歳で社長に就任した定保英弥氏は、一流のお客様たちに愛され続けるための努力を惜しみません。そのひとつは「ワイシャツは白、ネクタイは赤」というこだわり。なぜなのでしょうか。「プレジデント」(2018年6月4日号)の特集「1年365日『マナー』大全」より、記事の一部をお届けします——。

■さすが帝国ホテルと、言っていただくために


私はホテルの営業畑を中心に歩んできましたが、20代のころから、5分でも10分でもお客様とフェース・トゥ・フェースでお会いする機会をつくり、少しでも知り合いになれるよう心掛けてきました。それも単に仕事をいただくことだけが目的ではなく、少しでも自分という人間を知ってもらうよう努めてきました。今はメールで用件を済ませることができますが、フェース・トゥ・フェースであれば、互いの共通点を見つけたり、意外な情報を得たりすることができます。




帝国ホテル社長 定保英弥氏

そのとき注意しなければならないのは、「聞く」と「話す」の比率です。私の場合は6対4くらい。ときには聞き役に徹することもあります。


そして、信頼関係を築いた後で大切にしなければならないことは、必ずフォローアップをすることです。仕事をいただいたら、感謝の気持ちをお伝えするために、先方を訪問して必ずフォローする。アクションを起こさなければ、関係性は継続できません。


職場も同様です。お互い忙しい場合は電話やメールで済ませても、大切な話は、やはり会って、顔を見て、目を見て話すようにしています。とくに経営者になると現場との距離がどうしても開いてしまいます。しかしだからこそ、自分でコミュニケーションをとりに行くことが大事になってくるわけです。自分から現場に行けば、少なくともスタッフの様子や雰囲気がわかります。私の仕事の大半はコミュニケーションをとることです。


ただ、最初から自分の意見や考えを伝えることはしません。やはりスタッフの話をまず聞いて、どんな状況で、どのような考えを持っているのか。そこをきちんと聞いてから、自分なりに解釈したうえで、最終的に自分の意見を言うようにしています。


他方、職場でお客様と接する際も、やはり一生懸命お話を聞くようにしています。どうすればお客様がハッピーになっていただけるのか。そのヒントを得るために、その方の家族構成や好きなもの、嫌いなもの、食べものの好みや趣味などをなるべく聞くようにしています。気分を害したお客様がいる場合も、なるべくお客様のところに通ってお時間をいただき、お詫びしながら、まず話を聞く。その時間を惜しんではならないのです。


我々は今、「さすが帝国ホテル推進活動」というサービス向上運動を進めています。これは外資系ホテルが進出し競争が激化する中で、我々の強みを見直すために始めました。


この活動には9つの実行テーマがあります。最初の3つが「挨拶」「清潔」「身だしなみ」です。これは社会人の基本で、元気よく挨拶して、常に清潔を心掛け、身だしなみに気をつけることです。次の3つが「感謝」「気配り」「謙虚」です。これはホテルスタッフにとって大事なことでしょう。そして最後の3つが、「知識」「創意」「挑戦」です。これは蓄積された知識を思う存分に活かして、いろいろな創意工夫をしながら挑戦していこうという、帝国ホテルスタッフの基本姿勢です。



■社長就任時にいただいた、意外な祝辞


とくに一流と言われる方々は、この「謙虚さ」を大事にしていると感じます。各国の一流ホテルの経営者たちが集まる会合に出席したとき、ドイツの五つ星ホテルのオーナーから、社長就任の祝辞を受けたのですが、その際、「社長になっても謙虚さを忘れてはなりませんよ」とアドバイスをいただきました。一流ホテルの華やかな場にいる人が、そのようなことを言ったのには驚きましたが、国内外問わず、一流と言われる方は、偉ぶらない謙虚な姿勢を基本とされています。




全社員が常に携帯しているカード。1999年にスタートした「さすが帝国ホテル推進活動」という、サービス向上運動の柱となっている行動基準と9つの実行テーマが書かれている。

我々のホテルにいらっしゃる企業トップの皆さんも、ドアマンをはじめ現場スタッフへの気配りを欠かしませんし、帰るときには必ず車の窓ガラスを開けて、我々に手を振ってくださる。大会社のトップになればなるほど、謙虚な方が多いのです。


ビジネスの世界は、様々なネットワークがつながっていく中で、人間関係が構築され、それが最終的に商売につながっていくものです。そうした世界を生き抜くには、相手の立場や状況をしっかり配慮したうえで行動できる人でなければならないのでしょう。


ファッションについても、相手の状況や立場に配慮することは、人間関係を構築するうえで欠かせないことです。ワイシャツは必ず白地にするようにしていますが、これは冠婚葬祭など、どんな状況の方にも対応できるからです。反対にネクタイは、明るいイメージでお迎えしたいので、赤系統のものをよくつけています。また、国を代表する方がいらっしゃる場合には、その国の国旗の色に合わせた明るい色を選んでいます。スーツはグレー、濃紺系が中心でポケットチーフもつけるようにしています。足元も大事なので靴は必ず磨いておきます。


手土産についても、相手の家族構成を考えて決めています。奥様がいらっしゃる場合は、当ホテルのブルーベリーパイなどの焼き菓子を持参し、単身赴任の男性の方には、手軽に食事をとれるよう、カレーやスープなどの当社オリジナルのレトルト食品をお渡ししています。


このように相手の立場を配慮する習慣を身につけることが、結果として、自分に味方してくれる方を増やすことにつながっていくのではないでしょうか。


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▼定保社長のマナー5

1:会話で「聞く」と「話す」の比率は?

6対4

2:社内・社外の会食の頻度は?

社内 週1回・社外 週2〜3回(会食・パーティ)

3:定番にしている手土産は?

当ホテルの焼き菓子やレトルト食品

4:ビジネスファッションのこだわりは?

ワイシャツは白、ネクタイは赤系統

5:会食のお礼は「メール」「手紙」「電話」のどれか?

手紙


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雑誌「プレジデント」(2018年6月4号)の特集「1年365日『マナー』大全」では、本稿のほか、「語彙力レッスン」「一流ビジネスマンの自分演出法」「御礼メール、御礼状の満点テンプレート」「季節の手土産 名品ガイド」など、マナーの基礎から応用まで幅広く取り上げました。ぜひ誌面もご覧ください。


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定保英弥(さだやす・ひでや)

帝国ホテル社長

1984年、学習院大学経済学部卒業後、帝国ホテルに入社。営業部長、ホテル事業統括部長、東京副総支配人、第12代東京総支配人などを歴任し、2013年から現職。

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(帝国ホテル社長 定保 英弥 構成=國貞文隆 撮影=村上庄吾)

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