アフリカと京都を繋ぎ「三方良し」の商いを志す株式会社AFURIKA DOGS、京都工芸繊維大学美術工芸資料館や染色の職人たちと協力開発したアフリカンプリントのストーリー

2024年5月16日(木)10時0分 PR TIMES STORY

資料提供:京都工芸繊維大学美術工芸資料館

株式会社AFURIKA DOGS(アフリカドッグス)は「みんなが笑って過ごせる世界をつくる」という企業理念のもと、アフリカ布の輸入販売、アフリカ・トーゴ共和国での小口融資や創業支援、現代アフリカ文化と日本企業とのビジネスマッチング事業などを展開しています。金融機関出身の代表・中須俊治が学生時代に訪れたアフリカ大陸と地元の京都を繋ぎながら「三方良し」の商いを志して2018年に起業しました。画一的なイメージが先行しがちな「アフリカ」のイメージを上書きできるような商品・サービスを企画すること、数字には表れない見落とされがちな職人の価値を届けることをめざして奮闘してきました。

このストーリーでは、半世紀以上も前に、物理的にも心理的にも遠い「アフリカ」のナイジェリアで、日本企業が経済/技術協力して生産していたアフリカンプリントを、京都工芸繊維大学美術工芸資料館の方々や京都の染色の職人たちと協力して開発した裏側をご紹介します。

豊かな色づかいでクリエイターの心を掴むアフリカンプリント、トーゴ共和国から直輸入

当社はアフリカ布が豊かに根づく西アフリカのトーゴ共和国からアフリカ布を輸入、販売しています。また、現地の布と代表・中須の地元である京都の文化を掛け合わせた商品開発、アフリカ地域出身のアーティストと地元企業とのコラボレーションなどを仕掛けてきました。

京都信用金庫膳所支店、京表具の伝統工芸士とコラボしたアフリカンプリントのアートパネルを内装に

中村藤吉平等院店、宇治の風景をティンガティンガ(タンザニアのポップアート)に

アフリカ布やアートを通して垣間見る「アフリカ」は、アフリカ大陸のフレーミングされたネガティブなイメージを上書きし、その豊かな色づかいで多くのクリエイターの心を掴んでいます。現地の生活に彩りを与えるアフリカンプリントですが、実は日本でも生産していたことがあります。さらに言えば、日本企業が出資してアフリカ地域で生産していたこともあります。

半世紀以上前、日本企業がナイジェリアでアフリカンプリントを生産していた

今から60年ほど前、西アフリカ地域のナイジェリア連邦共和国で日本の技術/経済協力によってアフリカンプリントが生産されていました。日本のODA(政府開発援助)の先駆けで、日本の紡績会社が共同でアフリカに工場をもち、技術を提供して現地生産をおこなっていたという画期的な事業でした。

アレワ紡績株式会社(以下、アレワ紡績)は、1963年に工場建設が始まり、1965年にナイジェリアで生産を開始しました。1960年にイギリスから独立したナイジェリアは大規模な経済政策を講じたものの、手持ちの外貨が不足したことから、輸入超過となっていた日本に経済協力を要請したことが背景にあります。日本はナイジェリアに調査団を派遣し、合弁紡績工場の建設に協力することになりました。アレワ紡績は日本の十大紡(大日本紡績、東洋紡績、敷島紡績、大和紡績、倉敷紡績、呉羽紡績(のちに東洋紡績と合併)、鐘渕紡績、冨士紡績、日清紡績、日東紡績)が60%(ナイジェリアが40%)を共同出資してナイジェリア北部州カドナに設立した繊維生産工場で、1970年代から1980年代にかけては従業員4,000人が勤務する企業に成長し、ナイジェリア経済の発展に貢献したと言われています。

アレワ紡績の製品は市場で手頃な中級品として消費されていました。ナイジェリア産の綿花が使用されていたこともあり、現地ではナイジェリアの会社だと思われていたといいます。1970年代頃は、イギリス、中国、インドなどの資本と競い合いながら健闘していました。

日本のアフリカ地域への繊維輸出は、第二次世界大戦後の経済復興の足がかりとして、1948年から本格的に開始されました。日本ではすでに、明治時代に機械捺染技術を西洋から導入し、大正時代に黄金期を迎えていたこともあり、大量に生産して廉価なアフリカンプリントを輸出できる土壌がありました。日本でのアフリカンプリントは1960年代が最盛期で、大同染工(京都)、昭南工業(和歌山)、東洋紡守口工場(大阪)、高瀬染工(大阪)、山陽染工(広島)など国内大手の捺染工場で生産され、伊藤忠や丸紅、西澤など、大阪の商社を通して神戸港から輸出されました。

アレワ紡績のような合弁会社はオランダやフランス、アメリカ資本などでもおこなわれ、アフリカ現地での生産が軌道にのると、日本からの輸出は1970年代に急速に減退しました。1988年、ナイジェリア経済が悪化したことを受けて、日本企業はアレワ紡績の株式をナイジェリア政府に譲渡し、現地から撤退しました。(『アフリカ×日本 アレワ紡の時代ーナイジェリアと日本の繊維生産 1963-2005』第3章「アレワ紡の歴史と関連資料」を要約)

きっかけは展覧会での出会いから、時空を超えて現代の京都に復活

2023年1月、京都工芸繊維大学の美術工芸資料館で、アレワ紡績に関する資料の展覧会がありました。そのことをお店の常連のお客さまや大学の先生から情報提供があり、ビビッときた代表・中須はすぐに訪問するスケジュールを組みました。

アレワ紡績のアフリカンプリントを見ると、柄や発色はシンプルながらも、バランスがとれていて、洋服にしても、小物にしても、時空を超えて現代の日本でも馴染む印象を受けました。また、こういう歴史のあるもの、背景のあるものを喜んでくれるはずの人がきっといるはずだと、弊社で復活させることはできないかと思い至りました。

展覧会の会場となっていた美術工芸資料館の館長の方や展示をキュレーションされていた方と打ち合わせの機会を得て、まず議題にあがったのが、知財関係のことでした。生産していたのは半世紀ほど前、日本企業が撤退したのは三十年以上も前のことなので、権利関係は失効しているはずだという見立てでしたが、アフリカでチャレンジすることの難しさを多少なりとも想像できる今、最大限のリスペクトと感謝の気持ちを込めて、当時、進出していた何社かに確認の電話をしてみました。

問い合わせた電話越しに「そんなに前のことを言われましても・・・」と困惑した様子でしたが、関係のありそうな部署に確認をとってもらいました。そして「すべての権利関係は失効しています」と返事をいただいたあとに「そんなことがあったなんて知らなかったです。見てみたいので絶対に形にしてください」と励ましの言葉を頂戴しました。

当時のアフリカンプリントを京都工芸繊維大学美術工芸資料館の方々からお借りし、開発に着手しました。当時の大量生産する機械捺染ではなく、必要量を生産する手捺染での復元をめざしました。工程としては、①生地の選定、②手捺染の型おこし、③色合わせ、④サンプル製作、⑤再度、色合わせ(配色の確定)です。染色業界で半世紀以上にわたって活躍をつづける西田清さんに相談し、幾多の生地から織り方や手触りなど現物に風合いが近いものを選定しました。並行して、友禅型の職人と連携を図ってもらい、現物をトレースしてバティック(インドネシア・ジャワ更紗から発祥したといわれている臈纈染め)の独特な割れ模様など忠実に再現して型をおこしました。

染色家・西田さんに生地を選定いただく

新卒で染色家に弟子入りしたアフリカ帰りの若者が手掛ける

一色につき一枚の型が必要なので、5色前後の色が使われていることの多い当時のアフリカンプリントを3柄、全部で15枚ほどの型をおこして、色の配合に取り掛かりました。「色まど」と呼ばれる染色工房にある色の見本と照らし合わせて、どの色をどの割合で配合するかを計算してもらいました。この工程からメインで担当したのは、染色家の西田さんに新卒で弟子入りした越本大達さん。なんと彼は、アフリカ・トーゴ共和国への出張に同行してくれたことがあります。滞在期間中、就職活動に悩む彼と、仕事の話、ひいては人生の濃密な対話を重ねました。西田さんの手仕事の美しさを熱弁し、その仕事に興味をもってくれた彼と、帰国後、西田さんの染色工房を訪問しました。就職支援サイトには載っていない工房の景色に一目惚れした彼は、学生時代から弟子入りし、卒業後、その工房に就職したという稀有な経歴の持ち主です。おそらく、アフリカ渡航経験のある染色の職人は、現代の京都では恐らく彼しかいないでしょう。そういう意味で、今回のプロジェクトに、彼以上の適任者はいません。

弟子入りして5年目を迎える彼は、工房によっては専門職を配置している色合わせも、見事に現物に近い色を出してくれました。染め上がったサンプルを見て、濃度を変えて明るくしたり、配合の割合を変えてみたり、いくつかパターンをとって、色を確定させました。

染料の配合を計算して100分の1グラム単位で調整する弟子入りした越本さん

サンプル製作、合計で15枚ほどの型をおこした

手捺染で染め上げる風合いは機械にはない温もりと奥行きを感じられる

そうして、京都工芸繊維大学と染色職人と協力して、半世紀以上もまえのナイジェリアで日本企業が生産していたアフリカンプリントを生地から染色、加工方法、それに携わる職人たちにこだわって復元しました。復元したアレワ紡績のアフリカンプリントはアフリカドッグスのオンラインストアに出品しています。ご興味ある方は是非、覗いてみてください。

https://africanprint.stores.jp/


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