【森岡毅×入山章栄対談(7)】森岡流マーケティングで成功するための「たった2つの成功習慣」

2025年5月17日(土)6時55分 ダイヤモンドオンライン

【森岡毅×入山章栄対談(7)】森岡流マーケティングで成功するための「たった2つの成功習慣」

日本を代表するマーケターで、大ヒット中の新刊『確率思考の戦略論 どうすれば売上は増えるのか』を上梓した、森岡毅さん(株式会社刀 代表取締役CEO)と、『世界標準の経営理論』などの著者で経営学者の入山章栄さん(早稲田大学ビジネススクール 教授)が、消費者理解の本質について語り合う対談シリーズ。この第7回では、森岡さんが実践している消費者理解の手法や考え方に近づくための方法を聞いていきます。(構成:書籍オンライン編集部)

森岡毅氏(左)、入山章栄氏(右)

森岡さんに近づく方法とは?

入山章栄さん(以下、入山) この対談シリーズを読んでくださってる皆さんには、ぜひこの赤い最新刊『確率思考の戦略論 どうすれば売り上げは増えるのか』を読んでいただくとして、プラスアルファとして、少しでも森岡さんの消費者理解の手法や考え方に近づける方法があったら教えてもらえますか。

森岡毅さん(以下、森岡) お伝えしたいことが2つあります。1つは、1日に1時間でいいので、「消費者がなぜ自分の商品・サービスを買ってくれるのか」本質的な理由を真剣に考える習慣をつけることだと思います。机に向かってやってもいいし、通勤電車の往復中でもいいですけど、消費者のことを考える習慣をつけることがまず第一歩だと思います。

入山 たしかに、その習慣はすごく大事ですね。

森岡 毅(もりおか・つよし)株式会社刀 代表取締役CEO神戸大学経営学部卒業。96年、P&G入社。日本ヴィダルサスーンのブランドマネージャー、P&G世界本社で北米パンテーンのブランドマネージャー、ウエラジャパン副代表などの要職を歴任。2010年にユー・エス・ジェイ入社。高等数学を用いた独自の戦略理論を構築した「森岡メソッド」を開発。窮地にあったUSJに導入しわずか数年で再建。その使命完了後の17年、株式会社 刀を設立。「マーケティングとエンターテイメントで日本を元気に!」という大義を掲げ、成熟市場である外食産業や製麺パスタ関連業界、金融業界、観光業界など多岐にわたる業界・業種において抜群の実績を上げる。24年、イマーシブ・フォート東京をオープン。新テーマパーク「ジャングリア沖縄」の25年7月のオープンにも取り組む。

森岡 2つ目は、私のように憑依する方法をマネできる人はやってもいいんですが、ちょっと特殊かもしれないので、別の方法をこの本でも紹介しています。チームで集団知を生かしながら、消費者の脳内想起をたどる方法です。

 人は脳の中で、ある対象をどういう記号性でとらえているのか、連想をたどっていって、質的調査の手法を組み合わせていくんですけど、最終的に本能のどこに刺さっているのかにたどりつく方法があります。これはチームで同じものを見て共有しながら取り組める方法なんですね。これをやっていただくと、山に来る人の気持ちを知るために猟師になる必要はないんです。

入山 会社でチームとして取り組む人には最適な方法かもしれませんね。

マーケターが犯しがちなミス

森岡 ただ気を付けるべきなのが、「なぜこの商品を買ったんですか」という質問に対する消費者の方の答えは、聞かれた瞬間に取り繕った理由であって、本質的な理由ではない可能性がある、という点です。

 たとえば「この水をなぜ買ったんですか」という質問にはまだ答えられますよ。でも、マーケターがやりがちなミスとして「なぜ買わなかったんですか」と聞いてしまう。買わなかった理由なんて、あるわけないんですよ。そういう人工的なバイアスがかかった空間で、消費者を理解できた気持ちになったらダメです。インタビュールームの中だけで消費者の本能にたどりつくのは無理だと思います。

入山章栄(いりやま・あきえ)早稲田大学大学院経営管理研究科、早稲田大学ビジネススクール教授慶應義塾大学卒業、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でコンサルティング業務に従事後、2008年米ピッツバーグ大学経営大学院よりPh.D.(博士号)取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より早稲田大学大学院 早稲田大学ビジネススクール准教授。2019年より教授。専門は経営学。国際的な主要経営学術誌に論文を多数発表。メディアでも活発な情報発信を行っている。

入山 いわゆる「オムニバス調査」ですよね。場ができているところで話してもらうから、本質じゃないですよね。

森岡 仮説は立ててもいいんです。でも、出た仮説を本当の消費者が商品を使ったり暮らしたりしている文脈で追跡してみて、その仮説の正しさを検証するなかで本能にたどりつくプロセスがどうしても必要だと思うんです。消費者調査はラボで完結するものじゃない。ラボで仮説は出るかもしれないけど、やはり消費者と行動をともにする、私ほど極端じゃなくていいかもしれないけどマーケターなら何でもやってみる、という姿勢がいずれにしても必要なんだ、とご理解いただきたい。そのうえで、この本でも紹介した方法でやっていただくと、一番オーソドックスな方法が身につくと思います。

入山 なるほど。エクストリーム(極端)すぎなくても、そのプロセスは必要ということですね。ぜひ森岡さんの本と今日のお話を参考に、皆さんもトライしてみてください。森岡さん、本当に楽しかったのでもっといろいろ伺ってみたいんですが、残念ながら時間がきたみたいです。今日はありがとうございました。

森岡 こちらこそ楽しかったです。ありがとうございました。

【——本対談シリーズの過去掲載分はこちら——】・第1回 「テーマパークが好きな人」と「テストステロン」の切っても切れない深い関係とは?・第2回 「結果が出る人」と「うまくいかない人」の“努力の中身”の決定的な違い・第3回 スマホゲームに“限界”まで課金してわかったこと 森岡流の消費者理解・第4回 アニメのファンミーティングに潜り込んでわかったこと 森岡流の消費者理解・第5回 コンプレックスや嫉妬を乗り越える唯一の本能とは?・第6回 希代のマーケター森岡毅さんが経験した指折りの挫折とは?

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