働き方改革の軸は「目指す人材像と働き方像」

5月17日(水)6時0分 JBpress

組織の目指す姿を実現するために必要なのはどんな人材なのか?(写真はイメージ)

写真を拡大

 働き方改革では、残業時間の削減や、家庭と仕事の両立支援、柔軟な働き方の環境整備などの施策が実施される。しかし、そのような施策を実施する際は、そもそも組織として何を目指すのか、その実現のためにどのような人材が必要で、その人材がどのような働き方が求められるかを明確にしておかないと、考え方にブレが出てきてしまう。

 社員の働き方は、職種やワークスタイル、社員の置かれている環境などによって変わってくる。社員一人ひとりの状況を踏まえつつ、組織や働き方の目指す姿に向かうベクトルの中で施策を考えることによって、軸を持った働き方改革が推進できる。

 今回は、働き方改革を進めていく際の軸となる「目指す組織・人材像」および「目指す働き方像」について考えていく。

◎連載「働き方改革を進めるポイント」(バックナンバー)
(第1回)会社が働き方を変える前に必ずやっておくべきこと
(第2回)なぜ社員は帰れないのか?要因ごとに残業を削減する
(第3回)同時に実現すべき女性活躍と働き方改革


【1】 目指す組織・人材像の明確化

 目指す人材像を考える前に、まずは組織の目指す姿を確認する。

 例えば、総務部門でテレワークの導入を検討する場合、テレワークを導入することによって移動時間が短くなるので時間効率は良くなる。一方、フェイス・トゥ・フェイスできめ細かな社員対応ができなくなることにより、社員へのサービスレベルが低下することも考えられる。

 もちろん他の観点からの検討点もあるが、テレワークを導入すべきかどうかを判断するには、総務部門がどのような組織(サービス提供部門)を目指すのかが関係してくる。

 最近でも宅配便を提供する運輸会社における一部の時間指定サービスの廃止は、組織としてのサービスのあり方、目指す姿を改めて考える一例である。

 次に、組織の目指す姿を実現するために必要な人材像を考える。具体的には経営・事業戦略を実現するために必要な人材ポートフォリオを描く。例えば、下の図は開発職の人材ポートフォリオ例である。各人材は事業推進にそれぞれ必要であり、求められる働き方もそれぞれ変わってくる。

 ここでは、ビジネス・オリエンテッド(事業起点)で発想する。働き方改革やダイバーシティの推進は経営・事業戦略の実現に沿って行わなければ、それ自体が目的になってしまう。働き方改革も生産性向上を意識しながら、事業起点で発想することが求められる。そのため経営・事業環境の変化には留意しておく必要がある。

 目指す組織や人材像の明確化は事業そのものの検討でもあるので、議論を突き詰めると時間がかかる。最低限、組織として何を目指すのか、何を大事にするのかという考え、価値観は組織メンバー間でしっかりと確認、共有しておきたい。


【2】 目指す働き方像の明確化

 目指す組織・人材像を確認し終えたら、その実現に向けてどのような働き方が良いかを考える。その際には、第1回(「会社が働き方を変える前に必ずやっておくべきこと」)で示した全体像の以下の観点から目指す働き方を検討する。

(1)制度・ルール
「現在の仕事における最適な労働時間管理はどのようなものか?」「現在の働き方における成果や行動が納得性あるように評価されるにはどのような評価制度がいいか?」など、労働時間、勤務形態、人事制度について考える。

(2)業務・マネジメント
「生産性の高い業務のやり方はどのようなものか?(インプットとアウトプットの状態)」「ありたい働き方においてどのようなマネジメントが最適か?」など業務のあり方とマネジメントスタイルについて考える。

(3)環境・ツール
「自部署のワークスタイルに合った仕事がしやすい環境とは?」「コミュニケーションしやすいオフィスのレイアウトやICTツールはどのようなものか?」など仕事環境や整備ツールについて検討する。

(4)意識・風土
「働きやすい職場の雰囲気とは?」「お互いの働き方を認め合い、相互尊重できるような風土とは?」など社員の意識や組織風土について確認する。

 ここでは制約を設けず、目指す組織・人材像を見据えて、どのような働き方が良いかを発想する。当然、目指す働き方像を実現するためには、いろいろな制約を考慮して見直し施策を検討する。しかし、この段階で制約を設けると働きたいと思うようなアイデアが出てきにくい。現状にとらわれず発想する。

 またここでは、社員の「ウェルビーイング」にも目を向けたい。ウェルビーイングとは、幸福、福利、健康という意味である。目指したい働き方は、その人の価値感に影響を受ける。最近のワークライフバランスの進展やエイジフリー化(生涯現役化)の流れにより、仕事や組織というワークの領域だけでなく、家庭や健康、趣味等を含めたライフの領域も検討領域として捉えないと、目指す働き方像はカバーしきれなくなっている。ライフの領域でも施策を検討できる領域とそうでない領域がある。そこを見極めながら、ありたい働き方を発想する。

 働き方の目指す姿が明確になった後には、働き方改革の「目標値」を設定したい。働き方改革では残業時間削減などを目標値として掲げることがある。組織によって重点は異なるが、目指すところは投入時間の削減だけでなく付加価値の増大も含めた生産性の向上である。組織の目指す姿に応じた自組織に合った生産性向上の指標を設定する。

筆者:村上 剛

JBpress

働き方をもっと詳しく

BIGLOBE
トップへ