日本ブランドの海外展開、「勝てる」分野で戦略的に挑む

5月18日(金)8時0分 Forbes JAPAN

販売不振でアパレルブランドの廃止、百貨店やショッピングモールの閉鎖──なにかと暗いニュースの多いアパレル業界、小売業界。

日本国内は暗雲が立ち込めているが、海外に目を向けてみると、状況はまるで違う。海外市場調査によれば、2020年にはファッションの市場規模は325兆円に成長する見込みだという。とりわけ、中華圏、東南アジアは大きな成長の余地を秘めている。

そんな海外市場に目をつけ、海外進出を図る日本ブランドは多いものの、成功を収めているのは「ユニクロ」など一握りのブランド。どのようにして海外展開を進めれば、成功するのか。

ニューリテールを中心としたこれからの小売業の形について、「earth music&ecology(アース ミュージック&エコロジー)」をはじめ、アパレルや飲食など15ブランドを国内外で展開する、ストライプインターナショナルの石川康晴社長に取材する本連載。

最終回である第5回では、小売業界における日本ブランドの海外展開について話を伺った。

アメリカと中国は「給料」、インドネシアは「投資」が海外展開の障壁に

──日本ブランドが海外展開をするときに「障壁」となる点について教えてください。

障壁となる点は国によって違いますね。例えば、アメリカと中国では「給料」が障壁になっています。どちらの国も、経営人材は年収5000万円以上出さなければ採用できません。

アメリカは想定内ですが、中国の給与水準がここまで上がってきている、というのが重要な視点です。中国の中でも、上海と深圳(しんせん)はIT系企業を中心に給与水準が高騰している。

同じように、インドネシアにも海外展開の障壁があるんですよ。

──インドネシアですか?

インドネシアは「投資」の面で海外展開が難しい。実はインドネシアの企業は、アメリカ、中国などのテック企業から高く評価されていて。例えば、テンセントやアリババなどが多額の投資費用を持っていい企業を探しに来ている。
 

インドネシアの都市部

だから、日本の企業が軽い気持ちで少額の投資費用を持ってどこかの企業を買収しようとしても、まず勝てるわけがありません。

海外展開の機会はベトナムのリテール

アメリカや中国で、テックに造詣が深いCEO人材を採用しようと思うとお金がかかるし、インドネシアでテック企業を買収しようとしても全く太刀打ちできない。

一方で、多くの企業がノーマークだったベトナムは、リテールの海外展開において非常に費用対効果の高い国でした。

──なぜ、ベトナムだったのでしょうか?

ベトナムは、テクノロジーのインフラ環境が悪すぎるんです。データ回線が悪く、Wi-Fiも全然普及していないし、5Gが入る場所もわずかしかない。

それはすなわち小売業界にとって、「Eコマースが当分、浸透しない」ことを意味するんですね。


ベトナムの首都、ハノイ

ただ、Eコマースが浸透しないにしても、ベトナムは人口が1億人を超えていてF1層、20歳から34歳までの女性が多く、小売業界の市場としてはかなり大きい。だから、ベトナムではいま、「アナログのリテール」が市場参入のチャンスだと考えたんです。

そこで僕たちは、2017年11月に、ベトナムのアパレル企業を買収してベトナム市場に参入しました。そのときは、スタートアップ時代──つまり20年前のリテールの運営ノウハウをそのまま、ベトナムに適用させることで高収益を記録しました。

──過去のノウハウをそのまま活かすことができたんですね。

はい。海外展開はそれぞれの会社が持つ強み弱みによって、「勝てる」戦略が変わっていく。僕たちは、東南アジアや東アジアに注目していきたいと考えています。

日本ブランドの海外展開、ローカライズには「順序」がある

──日本ブランドが海外展開をするときは、サイズやカラー展開など、その地域に合わせて「ローカライズ」した方がいいのでしょうか?

ローカライズには順序があると考えています。その地域に進出したばかりのときは、実はローカライズせず、日本で売れていたブランドをそのままの状態でオープンした方が売れるんです。

なぜなら、そのブランド自体にインバウンド(訪日客)のファンがついていて、現地での需要があるから。「変に現地感を出してほしくない」というニーズさえあるくらいです。

──ローカライズしない、というのは意外でした。

ただ、進出してから1年ほどが経過すると、いままで来ていた「ミーハーなファン」たちがあまり来なくなります。

今度はブランドのことを知らない、現地のユーザーを相手にしなくてはいけなくなる。そうすると、ブランドを相当ローカライズしていかなければ、現地で生き残っていけません。

つまり、1年目のユーザーは、ブランドをもともと知っているインバウンドのユーザー。2年目からは、ブランドのことを知らない現地のユーザー。海外展開したあとに、どんどんユーザーの属性が変わっていくんです。

──テクノロジーと同じで、アーリーからマジョリティーに移行する流れを理解する必要がある、ということでしょうか。

その通りです。ユーザーの属性遷移を意識しながら、「どの段階でマーケティング戦略を変えるか」という判断が、ブランドをローカライズさせていく上では非常に重要。それが海外での戦い方ですね。

アメリカと中国にない、日本の「強み」は?

──いまの小売業界は、アメリカと中国が二強だと思います。日本が世界で戦っていく上で、その二カ国にはない「強み」はあるのでしょうか?

スケールはしないかもしれませんが、「ジャパンクオリティ」「匠」「メイドインジャパン」といった言葉で象徴される「クオリティの高さ」は日本の強みですね。この点においては、アメリカからも中国からも一定のリスペクトをもらえている。

日本は、小売業界において、コンテンツやプロダクトで存在感を出していった方がいいと思います。クラウドも含めて、テクノロジーで日本が中国に対抗しようとしても、絶対に負けるのが目に見えている。

アリババクラウドなど、海外の最新テクノロジーをうまく使って、日本の強みを活かしながら戦っていくことが、これからの小売業界では重要ですね。

石川康晴の「新しい小売の形」
第1回第2回第3回第4回

Forbes JAPAN

「海外」をもっと詳しく

「海外」のニュース

トピックス

BIGLOBE
トップへ