ブラック企業が悪用"みなし残業"の実例集

5月20日(日)11時15分 プレジデント社

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会社の経理部員や人事部員たちは、何を考え、どこを見ているのか。お金の問題を甘く見ていると、「想定外」の落とし穴に落ちることもある。「プレジデント」(2018年3月19日号)では、11のテーマについて識者にポイントを聞いた。第2回は「知らねば貰えぬ残業代」について——。

■ゴマかされがちな「8つの時間」




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最近、未払い残業代請求の相談が増えている。訴訟のイメージが強いが、今は内容証明から会社との交渉に入ったり、より簡便な労働審判手続きも有効だ。


ただ、残業代請求の相談が増えているのは、残業代の未払いやごまかし横行の証左ともいえる。実際、私が知る範囲でも違法性のある事例が少なくない。


一般に、1日8時間または週40時間を超えて働いた時間に対して支払われるのが残業代だ。原則として基礎時給に1.25倍や1.5倍などの割増率を乗じた額だ。また、役職手当や職務手当などの各種手当は、本来は残業代とは別の俸給である。


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▼ゴマかされがちな「8つの時間」それサービス残業です!

・準備時間:着替えや朝礼・体操の時間など

・後始末時間:着替え、掃除、清身

・休憩時間:休憩中の電話番、来客対応などを依頼された

・仕込み時間:開店前の準備、ランチ・ディナーの仕込み時間

・待機時間:トラックの荷待ちの時間

・仮眠時間:警報や緊急事態に備えた仮眠の時間

・研修:会社からの指示で参加した研修

・自宅の作業:仕事が終わらず自宅に持ち帰って仕事した時間

※QUEST法律事務所HP「ハタラクエスト」より


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最近、問題視されているのが、固定残業代制(みなし残業代制)を悪用するケース。これは月々の決められた時間の残業に対し、定額の残業代を払う制度である。


例えば、1月30時間までの残業について固定額の3万円を払うかたち。この場合、残業が30時間未満でも、3万円が支払われ、30時間を超えた残業については、その分の残業代が加えて支払われることになる。


この制度自体は合法だが、これを悪用して、各種手当を残業手当の趣旨であることを明示せず、残業手当を超える分の残業代を一切払っていない会社が多く見受けられる。すると、いくら残業しても、固定額で済まされてしまうことになりかねない。こうした手口が、最近では業種を問わず横行している。


給与明細に、大量の各種手当をひっくるめて勝手に「残業手当」と記載し、本来の残業代を払ったふりをしているという会社の事案さえあった。



■給与明細の「ヘンな手当」に騙されるな!


就業規則や雇用契約書に「俸給に残業代を含む」旨の記載があったとしても、基本給の額と残業代の額が明確に判別できないのであれば、残業代は支払われていないことになる、というのが最高裁の判断だ。未払い残業代の時効は2年、すなわち過去2年分を請求できるから、金額は小さくない。


残業代の支払いが適正かどうかを知るには、まず自分の基本給と手当の額、就業規則などの残業代の規定を確認し、それに基づいて算出した金額と、実際の支給分に差額があれば、未払い分がある可能性が高い。疑わしければ、無料の法律相談や、着手金無料の法律事務所も多いので、相談してみるといい。


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▼会社が「残業代だ」と主張した「ヘンな手当」実例集

・営業手当(不動産):会社側が営業成績に応じてカットを考えていたフシ→「むしろ営業活動に伴う経費の補充ないし一種のインセンティブとして支給されていたもの」→残業代ではない!




・成果給(ホテル):「時間外手当とは性格が違う」「基本給がほぼ最低賃金に合わせて設定され、よほど長時間残業をしないと成果給を超える残業代が発生しない」etc→残業代ではない!

・職務手当(ホテル):「95時間残業分の金額(会社)」→45時間超分は残業代ではない!「一般的に80時間を超える残業は過労死基準に該当するため、そんな長時間の残業を念頭に置いた残業手当は許さないという趣旨と思われる」(住川氏)

・精勤手当(IT系):「年齢・勤続年数・業績等により変動していた」「精勤手当を超える分の残業代を支払うという合意や取扱いが過去に存在しない」→残業代ではない!

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住川佳祐

弁護士

QUEST法律事務所 代表弁護士。1988年、大阪府生まれ。2013年東京大学法学部卒業、15年中央大学法科大学院修了。16年弁護士登録。17年QUEST法律事務所開設。専門は残業代請求。

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(弁護士 住川 佳祐 構成=高橋盛男 撮影=石橋素幸 写真=AFLO)

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